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ネットの事件

Drupalコミュニティが中心人物の一人をSM趣味を理由?に追放

Drupalコミュニティから広がって今議論となっている事件について、日本語の情報ではわかりにくいところがあったので調べてみました。 要点 PHP製のオープンソースCMS として人気のある Drupal のコミュニティが、 […]

Drupalコミュニティから広がって今議論となっている事件について、日本語の情報ではわかりにくいところがあったので調べてみました。

要点

PHP製のオープンソースCMS として人気のある Drupal のコミュニティが、長年のコントリビューター ラリー・ガーフィールド氏(Larry Garfield)をコミュニティから追放。背景に男尊女卑SF小説のファンコミュニティやSM愛好コミュニティへの参加があるということ。

個人の無関係な性嗜好でコミュニティから排除することに反発の声が上がっている。

登場人物・用語

ドリス・バイタルト氏(Dries Buytaert)

Drupalの設立者。

2016秋来日時の記事

個人ブログ

ラリー・ガーフィールド氏

ハンドル名Crell

バイタルト氏も突出した(prominent)と認めるDrupalコントリビューター。コミュニティ歴12年

Drupal 7のDBアーキテクト、Drupal 8 のwebサービスリーダー

Twitter @Crell

クラウス・プーラー氏 (Klaus Purer)

Drupalコミュニティメンバー。ガーフィールド氏が黒幕と見ている。

反地球シリーズ (Gorシリーズ)

ジョン・ノーマン氏による1966年から現在まで続くSF小説シリーズ。

エドガー・ライス・バローズの「火星シリーズ」に影響を受けた宇宙SFだが、特徴の一つとして男尊女卑的な価値観の強さが挙げられるということ。

今でこそ、SFやファンタジイやホラーの中で、かなり過激なセックス描写がある、なんてのも、それほど珍しくはなくなったけれども、このシリーズが出た当時は、「SFではなくSMだ」とか、かなーり本国アメリカで物議をかもしたそうだ。

手当たり次第の本棚

日本語への翻訳はシリーズの途中で止まっている。

ファンコミュニティでは、小説に影響を受けて「片手で拍手する」「”be well”という文で会話を切り上げる」などの奇癖があり、ガーフィールド氏もそれらを実践している。

Gorシリーズ公式サイト

1987年公開の映画 Gor – IMDb

時系列

2016/10頃 要登録のコミュニティ(登録者500万人)でガーフィールド氏が7年前に主人(D/)仲間の結婚式に寄せたコメントのスクリーンショットを誰かが外で流し始めた(ガーフィールド氏による推定)。

2016/10-11 複数のDrupalコミュニティメンバーから、Drupalのコミュニティ・ワーキング・グループ(CWG)にこの件での問い合わせが送られる。議題に上がるもCWG「問題なし」との結論。CWGはバイタルト氏へ報告。

11/24-27 プーラー氏、チェコのプラハで開催されたDrupalイベントIronCampでガーフィールド氏とこの件について(非好意的に)話す。

プーラー氏、前期のBDSMコミュニティサイトや同種の出会い系サイトに登録し、ガーフィールド氏の過去の投稿を探して記録し始める(ガーフィールド氏の推測)

1月 プーラー氏とガーフィールド氏、Google Hangoutで(非好意的な)会談。プーラー氏はDrupalコミュニティでの役職やリーダー的役割から降りることを要求。

2/24 バイタルト氏がガーフィールド氏に電話し、「プロジェクトの価値に反するところがある」という理由でDrupalプロジェクトを去るよう通告。(ガーフィールド氏は2/27のDrupalConに出ないことを期待してのことと推測)

2/27 メーガン・サニッキ氏(Megan Sanicki)から、「バイタルト氏との会話の結果、」DrupalCon イベントのスピーカーから外したとガーフィールド氏に伝える。

3/22 ガーフィールド氏がブログ記事「情報が多すぎる(TMI About me)」で公開反論。コミュニティが私生活の情報を基に自分を排除しようとしていると述べる。同時にSM愛好(主従関係の恋愛, hierarchical relationships)の趣味があり、BDSMのコミュニティとGor愛好家(Gorean)のコミュニティに所属し、特に規模の小さな後者で活発に活動していることも。

3/23 バイタルト氏がブログ記事を公開。「ガーフィールド氏の私生活を尊重して非公開で解決しようとしたが、本人が公開し議論もされているので」と。ガーフィールド氏がブログで述べた件が追放の原因ではない、決断のための証拠を広く公開することはないが、とも。

3/23 Drupalがコミュニティとしても声明を発表。こちらも「ガーフィールド氏の私生活や個人的な信条でカンファレンスから降ろしたわけではない」と述べています。
しかし判断の基となった秘密情報については、関係者を害するかもしれないので公開しない、と。

reddit の/drupalでの議論(400+コメント)

reddit の/phpでの議論(200+コメント)

3/23 Drupalコントリビューターの一人Mikkel Høgh氏(mikl)、Drupal Association への不信任をブログで表明

3/27 「Drupalイベントに昔『奴隷』を連れて来ていた」というreddit上での指摘にガーフィールド氏本人が回答しています。この自閉症の女性とは合意の上で主従関係にあり、家に住ませていた時期もあると。プログラミングに興味を示し、Drupalのパッチ書きも手伝ってくれたが内向的で自分ではコミットしなかった、とか、シカゴ周辺のカンファレンスにいくつか連れて行った、とか

また、ガーフィールド氏自身にもCWGがDrupalのボードメンバーに渡した「証拠」は共有されていて、そこにはバイタルト氏らがほのめかすような秘密の証拠は含まれていなかった、と。それら「証拠」とされる過去のネット上での書き込み等でも、実在の人物を傷つけたりするような行為はまったくない、と反論しています。

[追記 4/14]

4/9 バイタルト氏のブログ記事「Drupalコミュニティへの謝罪」。「BDSMなどのコミュニティに属する人が攻撃されたと感じていたら申し訳ない」と語り、今回の件はガーフィールド氏個人についてのことでしかない、と。

ガーフィールド氏の事件については特に新しい情報はありません。

4/10 同ブログの次の記事Drupalのガバナンスを進化させるための次の一歩で、1. バイタルト氏一人によって何かが決定されないようにすること、2. 「行動規範(Code of Conduct)」をもっと明瞭なものに直すこと、が宣言されました。このためにオンラインおよびオフラインでのミーティングを開催するとのことです。
ガーフィールド氏の事件については特に新しい情報はありません。

4/13 100人を超えるDrupalに関係する起業家・役員・コアコミッター、オープンソース開発者らが、サイト DrupalConfessions.org(Drupalの告白) を公開。バイタルト氏に対しての意見を述べています。寛容と非差別を求め、ガーフィールド氏の内心を問題とし、違法に収集した証拠を基に追放したことへの抗議集です。「前の二つのバイタルト氏のブログ記事で書かれた対策で問題が解決するとは感じられない」とも語っています。「バイタルト氏が協力しないならば、この中の相当数はDrupalコミュニティを永久に去ると考えてもらっていい」との言葉も。

[追記 2018-03-30]

7/19 に、ガーフィールド氏は彼の視点から見た事件の時系列の動きと、抗議が受け入れられなかった事、Drupalコミュニティ(というかバイタルト氏とサニッキ氏)の取った行動のおかしな点、Drupal Associationから脱退したことを報告するブログ記事を公開しています。

(続報があれば追記します)

考察

バイタルト氏は、「ガーフィールド氏がブログで自己弁護したところではない何か他の問題を起こしている」ように書いていますね。しかし、証拠は被害者に迷惑が掛かるので一般公開できない、と。

しかし、一般公開しなくても第三者に検証などしてもらわないことには、何の証拠もなくガーフィールド氏を貶めようとしているだけと言われても仕方がないところもあります。

また、バイタルト氏は、Drupal コミュニティの方針としてGorの小説内の価値観を受け入れられない、などと述べているところもあり、フィクションの嗜好で他人を罰するという問題に陥っているようにも見えます。いろいろな趣味嗜好を持つ人もいるであろうプログラマー界隈でこれに反発する声が上がるのも仕方がないのではとも思います。

via Slashdot

「Drupalコミュニティが中心人物の一人をSM趣味を理由?に追放」への11件の返信

“3/27 「Drupalイベントに昔『奴隷』を連れて来ていた」というreddit上での指摘にガーフィールド氏本人が回答しています。この自閉症の女性とは合意の上で主従関係にあり、家に住ませていた時期もある” すごい
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