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Google ページランクにだまされるな

japan.internet.com 併載コラム

ページランクとは

Google ページランク(PageRank, PR)という指標を耳にされたことはあるだろうか。一般的には検索エンジンGoogle の検索結果が決まるときの重要な数値、ということになっている。

この数値は、できるだけ簡単に言うと「良いページからリンクされたページも良いページ」という原則に従って、Web 上の大量のページ間の関係から計算で求められるものだ。0から10で表され、10が最も高い。

PageRank 0 は、Google の検索エンジンに登録されていないときや、以前は登録されていたが何らかのペナルティで未登録の状態に戻されたときにつく値で、つい最近ドイツの BMW や サイバーエージェントなどの企業サイトが不正な SEO と判定され、Google の検索結果に表示されなくなるニュースがあったが、そのときも PR は0となっていた。

たとえば、高いページランクを持つ日本語の Web サイトとして以下などがある(*1)

ページランク 企業/団体
10 慶応義塾大学
9 グーグル
8 ヤフージャパン
8 goo
8 外務省
8 文部科学省
8 首相官邸
8 リアルネットワークス
8 マクロメディア
8 CNET ジャパン
8 アップルジャパン
8 アドビ
7 ニフティ
7 楽天市場
7 総務省
7 アサヒコム

自分のサイトについてページランクを調べるには

自分のサイトのページランク(ページランクはページごとに付与されるので正確には自分のページのページランク)を調べるには、いくつか方法がある。 Google に認められている正規の方法は、Google Toolbar という Google の提供するツールバーをインストールすることだ。

Windows の Internet Explorer の場合はこちらで、ブラウザが Firefox の場合は、Windows、Mac OS X、Red Hat Linux など用のツールバーが、Google 自身により提供されている。

このツールバーをダウンロードしてインストールすると、現在訪問中のページについて、そのページランクがいくつなのかが、白地に緑色の棒グラフで表示される。

ページランクは、Google ツールバーをインストールすることでもチェックできるが、外部のプログラムをわざわざインストールしたくないとか、会社のポリシーで勝手なものを入れられないという人には、ブラウザ上で確認できるサービスが多数提供されている。

http://pagerank.bookstudio.com/

http://www.gssm.musashi.ac.jp/~ono/grank/

http://tools.the-search.info/pagerank/

http://pr.blogflux.com/

http://www.sitening.com/tools/page-rank/

http://www.freelance-help.com/google-ranking-report/google.php

http://www.1st-submit.com/google-pagerank/

ただし、これらのサービスは Google と無関係に運営されており、無くなったり止まったりすることも多い。

ページランクが高ければすべて良し?

たしかに、Google が最初に出てきた頃は、検索結果の上位に出てくるのはページランクの高いページばかりだった。

そのことから「ページランクを上げることが SEO である」という誤解が定着してしまった。これも目的と手段の取り違えである。

しかし、最近では、ページランクの数字が実際にどれほど検索順位に影響するのか、ということに疑問が持たれはじめている。

実例でみるページランクの問題点

DarkSEO チームという、グレーゾーンの SEO を研究しているフランスのグループがある。

彼らが公開している次のページのページランクを、前述のテストサイトやグーグルツールバーで調べてみてほしい。

http://pr10.darkseoteam.com/

なんと、このページはページランクが10のページなのだ。

さらに、ページの下部には、“PR9 – PR8 – ……”とリンクがある。以前は5から10までのページランクのページがきれいに揃っていたが、Google 側もそれなりに監視しているようで、見るタイミングによってはもっと低い、本当の PageRank が出ることもある。現時点(*2)では PR10 のみが成功しているようだ。

念のため付け加えると、この darkseoteam.com は、決してコンテンツの優秀さで多くのリンクをもらってページランク10を達成しているわけではない。ページランクの高い他所のページ(google.com など)から不正な手段でページランク10を「拝借」しているに過ぎない。

では、どうして Google はこのページランク10 のサイトを厳しく取り締まらないのか?

DarkSEO チーム側が取り締まりに対抗し続けているからということもあるだろう。しかし、それ以前に、ページランクが10であってもこの darkseoteam.com がいろんな検索語で1位に出てくるわけではないことに注目してほしい。darkseoteam.com 上にあるキーワードを並べて検索しても、darkseoteam.com のページはまったく上位に出てこない。

また、ページランクについて問い合わせた結果、グーグル自身から「ツールバーで表示されるページランクは楽しむためだけにお使いください」(*3)という回答を受けたという人の話もある。

これらの現象(検索順位がたいしたことがない、Google が厳しく取り締まらない)から考えると、ツールバーに表示されるページランクはたいして信用のおけるものではなく、ちょっとした手法で好きな値にすることさえできてしまう、ということなのだ。

まとめ

現在では、ページランクに関する SEO 研究者達の見解は以下のようになっている。

1. 人気サイト → ページランクの高いサイト

これはおおむね成り立ってはいるが、値の反映は数か月遅れだったり、けっこう変動したりする。

また、ページランクは実際に検索されるキーワードと無関係な「総合的な人気度」を反映するが、実際には「来てほしいキーワード」でページが上位に出なければページランクがいくら高くても意味はないため、ページランクの数値は集客に直結しない参考値でしかない。

2. ページランクの高いサイト → 人気サイト

こちらは、前述したようなインチキもできるので必ずしも成り立たない。

ページランク対策を強調する SEO 業者に会ったら

「我が社のページランクの高いページからリンクを張って差し上げます」というような SEO 業者が存在する。

しかし、上で述べたことから、SEO 業者の成果はあくまで(最終的にユーザがあなたのサイトを検索するときと同じ)検索結果、検索順位で測るべきで、ページランクの数字で評価すべきものではない、ということがおわかりいただけたかと思う。

ネット広告の出稿先の判定なども同様で、ページランクの高いサイトだからといって自動的に「人気サイト、影響力の高いサイト」などという風には考えないほうがいいだろう。

(*1) 2006/3/31現在。網羅しているわけではないので、他にもページランクの高い日本語のページはある。また、ページランクはサイトではなくページごとにつくので、正確にはこれらの企業のトップページのページランクを指していることが多い。

(*2) 2006/3/31現在

(*3) http://forums.searchenginewatch.com/showthread.php?t=3054

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SEO の目的は何? 目的と手段を混同しない

japan.internet.com 併載コラム

SEO の最終的な目標は、検索エンジンで上位表示させることではない。検索エンジンのユーザーを自社のページに引っ張ってきて結果(売り上げとか申し込み)につなげることだ。

必ずしも絶対的な順位が必要なわけではなく、ライバルに勝てれば目的は達成される場合も多い。

1位~3位が同じ言葉でも自社の商売と無関係なサイトや個人の日記で、4位が競合他社の Web サイトだったとしたら、4位に取って代わることは重要だが、1位になることはそれほど重要ではない。

たとえば、自転車を売るサイトを運営しているとして、「自転車」での検索結果が

1. 自転車旅行の Blog(個人のページ)
2. 自転車の修理の仕方(個人のページ)
3. 自転車レースの結果(大会運営者のページ)
4. 自転車のオンライン販売(自社のサイト)
5. 自転車のオンライン販売(競合他社のサイト)
6. 自転車のオンライン販売(競合他社のサイト)

のようになっていたとしたら、キーワード「自転車」についてはこれはこれで OK だろう。自転車を買おうとしている検索ユーザーは、買い物と無関係なサイトは無視してくれるからだ。

もちろん5位や6位の競合サイトに抜かれないように継続して注意する必要はあるが、無理に1位にするために不自然な手段、SEO 対策としてすぐに無効になりそうなグレーゾーンの手法などを使ったりはしないほうがいい。

1位になるにこしたことはないけれど、なんのために SEO 対策をかけてるのかを忘れて単純な順位に一喜一憂してもしかたがない。

(SEO とは無関係だが、この例の場合1~3位のサイトに広告を置けるならそれはそれで別の集客手段としての意味があるかもしれない)

もう一つよくある間違いは、業者の言うままのキーワードで対策させること。

「こんどの SEO 対策では『東京のおいしいレストラン』でいきましょう」などと、長い日本語のフレーズで提案を受けたとしたら注意したほうがいい。

Yahoo!や Google で、文章の一部を切り出したような検索をすると、まず検索結果の数が非常に少なくなるし、まったく同じ言い回しを持ったページが簡単に1位になったりする。

このような長文で検索結果の順位が良かったとしても、ちょっと文章を変えて、

-『東京でおいしいレストラン』
-『東京 レストラン おいしい』
-『東京でうまいレストラン』

などで検索されるともう駄目だ。簡単に圏外の順位に落ちてしまう。検索キーワードが長くなれば長くなるほど、そのキーワードでの検索件数が減り、ライバルも減るから、順位が上がるのは当たり前。

もちろん、「東京」で1ページ目とか、「レストラン」で1ページ目にしろ、というような注文はかなり無茶なものだが、あまりにも対象を絞りすぎる対策では効果も小さい。

こういう業者の提案には、思い切って重要なキーワードだけを取り出して、「『東京 レストラン』では対策できないの?」と訊いてみるとよい。

対策の結果を出すために目標を引き下げてしまっては意味がないのだ。

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SEO(検索エンジン最適化)の本質を理解する

japan.internet.com 併載コラム

「社長、御社のホームページ、検索エンジンでもっと上位に表示させたくないですか?

検索エンジン最適化(SEO)とは、検索エンジンでWeb サイトを上位に表示させるような対策を取ることを言う。

検索結果の一ページ目、それも上位に表示されないと、検索経由で顧客がやってくるチャンスは低くなってしまうため、ネットで商品やサービスを販売している企業にとっては重要なキーワードだ。

書籍などを参考に自社で対策することもあるが、SEO 対策を専業で請け負う、いわゆる SEO 会社というのも多数存在する。Web サイト製作のついでに SEO もやります、という会社から、SEO 対策を専門的に行う会社までさまざまだ。

Yahoo!や Google などの検索エンジンでは、機械的に言葉(キーワード)とページの関連度を集計処理して、入力されたキーワードに対する関連度の高いものを順に表示する。
その集計処理の詳細なルールは公開されていない。これは次のような理由からだ。

1. より役に立つ結果を出して他の検索エンジンと差別化するため
2. SEO 業者による実勢に沿わない順位操作を防ぐため

SEO 業者にとっても条件は同じで、Yahoo!や Google から「順位はこうやってきまるから、こうすれば上がるよ」と教わっているわけでは、もちろんない。毎日毎日 Web サイトをどう変更したらどう順位が変わるかを実験し、その実験結果から検索エンジン側の動作の仕組みを推測しているだけだ。

検索エンジンを提供している Yahoo!や Google の社員でもないかぎり、本当はどんな基準で順位が決まっているか、など知るはずもないということになる。

SEO の解説本を複数読んでみたことがあれば、ある本がある手法を「使うべき」と言っているのに、他の本では「使うべきではない」と書かれていて混乱したこともあるのではないか。

SEO をさらにわかりにくくしているのは、去年通用した手法が今年は通用しないかもしれない、というところだ。

1. ひとたびある方法が順位に「効く」とわかると、個人や業者がわれもわれもとその方法を適用する。

2. そうすると、その効く方法を採用したサイトが、コンテンツがそれほど優れていなくても、採用してないサイトより上位に上がっていく。

3. 検索エンジン各社は、コンテンツの関連度を正しく反映した順位がでるように、1.の「効く」対策が無効になるようにプログラムを調整する。

4. 結果、「効く」対策が効かなくなったり、目につく場合は逆にペナルティとして順位が下げられたりする。

検索エンジン各社は、特殊な対策が効かないように知恵を尽くし、SEO 業者はまた次の特殊な対策を発見しようと工夫を凝らす。この(ある意味不毛な)繰り返しとなる。

そのため、少し前の指南本などにある SEO 対策を適用したり、少し前の知識で止まっている SEO 業者に頼んだりすると、検索順位が上がるどころか下がってしまうわけだ。

古いノウハウが変化して役に立たなくなっていくことが、SEO の本質といえる。

最良の結果を得るためには常に最新の情報に追従して研究しなければならない、という点で、SEO を専門の業者に頼むことには一理ある。

しかし、何を発注するときでもそうだが、発注した成果を評価する能力は、発注者側が持たなければならない。SEO 対策をお金を払って頼んだとしたら、その対策が効いたかどうかは自社で判断できなければだめだろう。(ものすごく予算があれば、効果を測定するコンサルタントを別に雇うこともできるだろうが)

次のような話を実際に聞いたことがある。

SEO 業者に対策を依頼し、期間終了後の成果報告書で「御社の Web サイトを Yahoo!で8位から3位にしました」と誇らしく書いてあるが、その業者に頼む前に本当に8位だったのか証拠が残っておらず、改善が成ったのかどうかわからない、というものだ。

検索順位を改善するのが SEO 対策なのだから、対策の効果が出ているかどうかは、当然、順位でもってはからなければならない。

検索エンジンは便利なので、何でも調べられるように思いこみがちだが、検索エンジンの結果は常に「現在の Web」に関しての結果で、過去のある時点での順位を調べることはできない。また、それを保存しておいてくれるような第三者のサービスも今のところ見当たらない。

SEO 業者のパフォーマンスをチェックするには、仕事を頼む前に、依頼するキーワードのすべてで、対策対象の検索エンジンでの順位を調べ、保存しておく必要があるということだ。