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あなたの企業、URL で損していませんか (3) ページ名の統一

japan.internet.com 併載コラム

前回前々回のコラムで、ネットに露出している URL で www の有無を揃えることの重要性を述べてきた。

今回は、ドメイン名以外の URL の不統一に関して説明する。

Web サイトを自分で作成されたことのある方は、index.html などの、サーバーに置いたファイル名がアクセスする際の URL の一部として現れることをご存知だろう。

企業の代表 URL が、こういった index.html などのファイル名を含むかどうか、というのも、前回説明した SEO や口コミサービスに影響してくる要因である。

例をあげてみよう。(*1)(*2)

Google で “http://panasonic.jp/” を検索(890件)

Google で “http://panasonic.jp/index.html” を検索(77件)

おそらく、http://panasonic.jp/ が Panasonic ブランドの代表 URL として設計されているのだろう。しかし、Web 上を探してみれば、http://panasonic.jp/index.html でリンクや言及をしているところが少なからず存在する。

そもそも、ほとんどの Web サーバーには、「ファイル名が指定されていなければ、○○というファイル名(もっとも一般的には index.html)を探す」という機能があり、この機能のおかげで、http://example.co.jp/ という URL でも実際の http://example.co.jp/index.html の内容が表示されるようになっている。

結果として、index.html のついた URL とついてない URL が二つ、内容はまったく同じものなのに Web 上で流通してしまうことがよく起こっている。

このようなことが起こるには、いくつかの異なる原因が考えられる。

(1)自社サイト内のリンク管理ができていない

自社サイト内のページからページへのリンクが、二つの方法でばらばらに張られている。たとえば、ファイル名を見せない URL を代表 URL にしておきながら、ページ内や子ページからは

<a href=”/index.html”>トップへ戻る</a>

とリンクを張ったりすると、不整合が発生する。トップページに訪れたユーザーは、

a) http://example.co.jp/

b) http://example.co.jp/sub/subpage.html

c) http://example.co.jp/index.html

とサイト内を移動し、a) ではなく c) の、index.html つきの URL にリンクしたり、ブックマークしたりするかもしれないからだ。

a)を開いているときに URL を取ったユーザーと、c)を開いているときに URL を取ったユーザーで、指している URL が別ものになってしまうということだ。

その結果、a)と c)の二つの URL で企業サイトの人気指標が分断されてしまうことがある。

これは Web サイトの製作時に製作者が気を配ることで防ぐことができるポイントだ。

(2)他社サイトや雑誌等に URL を載せてもらう際のリンク管理ができていない

企業の URL を社外に紹介するケースとして、以下のようなものがあるだろう。

  • 検索エンジンへの登録
  • プレスリリース
  • 雑誌等からの取材
  • メールの署名
  • 名刺上での表記

こういった場所で URL を外部に紹介する際に、

  • うっかり代表でない方の URL を紹介したり、
  • 会社として代表 URL をどちらかに統一せずにその場その場で適当に紹介したり

していると、URL の不統一は発生してしまう。

検索エンジンの Yahoo!と Google に登録申請する際に、一方は index.html 無し、一方は index.html 有り、などと申請すれば、これはもう最悪だ。ネット上での代表 URL が、まさに二分して伝播していくこととなる。

こちらは、マーケティングや IR の担当者が留意すべきポイントとなる。

(3)ユーザーが勝手に探してリンクやブックマークをする

実際には一方しかリンクが張られないように注意していても、URL を直打ちして望まないほうの URL でリンクされてしまうことも、少数だが無いわけではない。

このケースまでケアすることができれば完璧だが、実際には(1),(2) ができていれば問題になるほどのことはないだろう。

どうしても完璧にしたければ、二つの URL が並存することが無いように設定をすることになる。

’/’ のほうに手入力で直接アクセスしても、 ’/index.html’ のほうに転送してしまう、といったように。たとえば、JACCS のサイトでは index.html を外してアクセスしても、必ず index.html つきの URL になるようだ。逆に、’/index.html’ をつけてアクセスしても、’/’ に転送するという手もある。

以上のように、URL 一つ伝えるにしても、気をつけるべき点を知らないと思わぬところで損や取りこぼしをすることがある。

逆に言えば、自社のページから協業他社等へリンクを張る場合にも、相手側がそういった点まで気を配っている会社だとすれば、その気配りを無駄にするような勝手な改変が失礼に当たることもあるだろう。

相手が指定してきた URL に、勝手に index.html をつけたり消したりして使ってしまうことで、相手の URL が最大の効果でネットに広まるのを妨害しているかもしれない。

実社会でたとえてみれば、「株式会社」が前につくか後ろにつくかを確かめずに共同プレスリリースに書いてしまう、といった程度の間違いと言えるかもしれない。致命的な間違いということは無いが、やらずに済めば越したことはないとも言えるだろう。

注1: 記事中の検索結果数やブックマーク数は、2005/12/12 時点のもの

注2: Google では、被リンクを調べる link: ではこの両者を区別しないように工夫されているので、単なるテキストとしての出現を比べた。Google に関しては今記事で示したような index.html の有無によるぶれが問題にならないような処理がされている可能性はある。

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あなたの企業、URL で損していませんか (2) www を揃える理由

japan.internet.com 併載コラム

前回のコラムでは、“www.”のつく URL、つかない URL の実例を挙げて、“www.”があってもなくても Web サイトに辿り着けるようにすることの重要性を書いた。

今回は、“www.”の有無に関わらず企業サイトにアクセスできるようにする方法の比較と、その効用について説明しよう。

前回あげた4つのタイプの企業 URL から、“www.”があってもなくてもアクセスできる大手サイトの例として、(3)、(4)を再掲する。

(3)どちらでも接続できる Web サイト

Yahoo! Japan http://www.yahoo.co.jp/ http://yahoo.co.jp/
ライブドア http://www.livedoor.com/ http://livedoor.com/

(4)どちらでも接続でき、どちらか一方に転送される Web サイト

楽天 http://www.rakuten.co.jp/
Mixi http://mixi.jp/

ブラウザから入力して、その企業サイト/サービスに行くことができる、という意味では、(3)と(4)にはまったく違いがない。しかし、(3)のタイプの設定をしている URL では、潜在的な顧客を取りこぼしている可能性があるのだ。

SEO(検索エンジン最適化)に関する逸失利益
検索エンジンで上位に表示されるための要素の一つに、被リンクの数や質がある。非常に簡略化して言うと、人気投票的に「たくさんの人(他のサイト)からリンクが張られているサイトは良いサイト」というものだ。

この場合に、上記の(3)のケースが思わぬ差を産む。あるサイトからは http://www.example.co.jp/(www.つき)に、他のサイトからは http://example.co.jp/(www.なし)にリンクされていたとすると、検索エンジンによってはこの二つを別々に集計してしまうことがあるのだ。

あるドメインへリンクしているページを検索する方法があるので、この二つの差を見てみよう。

Google で調べた www.yahoo.co.jp へのリンク 59万3,000件

Google で調べた yahoo.co.jp へのリンク 1,770件

この通り、見つかったページ数から、Google の場合は“www.”ありとなしが別々にカウントされていることがわかる。検索エンジンによっては、このように“www.”つきとなしの二つを別のサイトとして認識してしまうことがある。

この例では“www.”なしの件数は非常に小さいが、この数が伯仲しているようなケースがあれば、せっかく張られた100のリンクの SEO 効果が、たとえば60程度に落ちてしまっている、つまり、検索結果の順位を損している可能性が高い。

ネット上のクチコミサービスに関する逸失利益
はてなブックマーク という共有ブックマークサービス(ソーシャルブックマークサービス)がある。ここでは、ブラウザのお気に入りとは違い、より多くの人が登録したサイトが「人気サイト」や「注目サイト」として目立つような仕組みがあり、その結果を参考に、ある企業サイトの評判や企業の知名度を判断する人もいる。

このはてなブックマークで、http://www.yahoo.co.jp/ をブックマークしている人 は288人なのに対して、http://yahoo.co.jp/ をブックマークしている人 は20人である。

http://www.rakuten.co.jp/ をブックマークしている人 は55人なのに対して、http://rakuten.co.jp/ をブックマークしている人 はいない。

つまり、タイプ(4)の URL を持つ楽天は、注目してくれた55人全員を一つのブックマークに集めることができているのに対して、タイプ(3)の Yahoo!Japan のほうは、本当は308人が注目しているのに、20人分の注目度が別にそれてしまっているということだ。

この二つでは、ブックマークしている人の数自体に差があるが、もし興味を持っている人の数が同じ、たとえば100名だったとして、100個のブックマーク一つがついている企業サイトと、30個のブックマークがついている(あと70個は URL の違いで存在に気づかない)企業サイト、ユーザはどちらが人気のある企業だと判断するだろうか?

結論として、「“www.”があってもなくてもユーザーが辿り着けるようにする」、という前回の工夫に加えて、「“www.”があってもなくても結果的に同じ URL となるように誘導する」ことが、よりよい Web サイト集客のために重要である。

「同じ内容を返す URL は常に一つ」という概念のことを“Permalink”といい、今回例にあげた SEO や共有ブックマークに限らず、Web における重要な概念の一つとなっている。“Permalink”関連で注意すべき他の事例については次回に説明させていただく。

注:記事中の検索結果数やブックマーク数は、2005/11/30時点のもの

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あなたの企業、URL で損していませんか(1)www を再チェックしてみる

japan.internet.com 併載コラム

“http://”ではじまる URL = Web サイトのアドレス、が一般にも理解されるようになってしばらく経つ。ネット上で商売/広報を行う企業にとっては、URL こそが企業やサービスの存在を指し示すネット上の住所といえる。

実世界で会社の本社所在地が二種類あったり、二つの事務所が本社を名乗ったりしたらどのような混乱が起こるだろうか? 会社の Web サイトのトップはここですよ、という会社の代表 URL だが、意外にもこの URL がおろそかにされているケースが多い。

あなたが、ある潜在的な取引先から口頭で URL を聞いたとしよう。「株式会社イグザンプルで、後ろは co ドット jp です」

帰社してから言われたことを思い出し、ブラウザに URL を入力する。

http://example.co.jp/

しかし、なぜか企業サイトには接続できず、エラーとなってしまった。

ここで少しネットに詳しい人なら、先頭に“www.”をつけて

http://www.example.co.jp/

で無事企業サイトを閲覧できるかもしれない。しかし、万人にそれを求めるのは難しいだろう。会社の綴りを間違えて聞いたか、などと思いあきらめてしまうかもしれない。

歴史的に、ドメイン名の前に“www”がある場合とない場合のどちらでも同じようにつながるようにしよう、という設定をしている組織は多い。が、それは必ずしもルール化されているわけではないため、どちらか一方でしかつながらないサイトも多い。

実際の企業で調べてみよう。

(1) “www”が無いと接続できない Web サイト

朝日新聞 http://www.asahi.com/
トヨタ http://www.toyota.co.jp/
ソフトバンク http://www.softbank.co.jp/

(2) “www”があると接続できない Web サイト

del.icio.us http://del.icio.us/

(3) どちらでも接続できる Web サイト

Yahoo!Japan http://www.yahoo.co.jp/, http://yahoo.co.jp/
ライブドア http://www.livedoor.com/, http://livedoor.com/

(4) どちらでも接続でき、どちらか一方に転送される Web サイト

楽天 http://www.rakuten.co.jp/
Mixi http://mixi.jp/

(5) まったく別々の内容が出てくる Web サイト

大手サイトではこのケースは見つからず。“www.”をつけたときとつけないときで出てくるコンテンツが異なるという設定だが、混乱の元なのでこういった設定はおすすめしない。


(1)や(2)のタイプの設定がされている Web サイトでは、“www”があるか無いかを、訪問者が正確に覚えたり、打ち込んだりすることを要求していることになる。この時点で、どちらでも接続できる(3)や(4)のタイプの設定をしている企業サイトに比べて、訪問者を取りこぼしている可能性があることになる。

今現在(1)や(2)で運営している有名企業サイトは、いまさらネット経由のユーザーを取りこぼすことに対してはあまり気にしていないのかもしれない。すでに有名な企業であれば、Web サイトがあることは疑いがないし、検索エンジン経由で辿り着いてもらえるだろう。しかし、あなたの会社がそれほど有名でないとしたら、こういった URL について改善することで何も損はしないはずだ。

(3)と(4)の違いによって企業サイトの集客にどのような差がつく可能性があるか、については次回述べることにしたい。