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The Waiting Game – 入国収容所の難民を追体験できるブラウザゲーム

ProPublicaニューヨーク公共ラジオ(WNYC)の制作によるブラウザゲーム The Waiting Game は、アメリカに入国して難民申請を出している人たちの体験をできるゲームです。

まずはプレイヤー選択。選べるのは5人。

  • エルサルバドルで、家庭内暴力(DV)から逃げてきた母子
  • バングラデシュで、信仰の異なる相手と結婚していた人
  • コンゴ民主共和国で、抗議活動に参加した学生
  • ネパールで差別に遭ったチベット人
  • 国籍のせいでエチオピアからエリトリアに追放された人

ゲームの選択肢は基本的に「続けるか」(Keep going)、「諦めるか」(Give up)の2択しかありません。自国を脱出するまでは匿われている場所でじっと潜伏していなければいけない日々だし、拘置所や米国に移ってからの収容所では、毎日毎日なんの変化もないまま、刑務官らに人扱いされなかったりまずい食事を出されたりがひたすら続きます。

今回選んだ「デモで政府から目をつけられた学生活動家」の場合は、一度拘禁されて拷問を受けた後、親戚の手配でなんとか釈放されるものの、そのあとさらに学生たちへの弾圧が強まる中で偽造パスポートを入手してアメリカへと逃げることになります。

アメリカに着いてから難民収容所に移されてからも、自国で逮捕された時ほどひどい扱いではなくても、手続きも遅々として進まず、自由のない暮らしは続きます。

あまりに毎日の進捗がなく、陰鬱な描写が続くことから、”Give up”すると、これまで何十日が経過していたか、そしてこの実話の難民が実際に難民認定を受けるまでに何日かかったのか、が表示されます。ゲームなら”Give up”できますが、この待ち続ける生活の中で実際に諦めることができるとしたら、甘んじて逮捕されるとか収容所で狂うとかですかね。

読んでいるだけでも辛いこの体験は、すべて実際に体験してきた難民たちの聞き取りから再構成された内容です。ゲームとして考えると、自由度もなければ嬉しくないイベントばかりのダメなゲームなのかもしれませんが、その自由のなさや辛さこそが、実際に難民の人たちに起こった/起こっている事だ、という意味で、リアルなゲームとも言えます。

共同でこのゲームを制作した WNYC ラジオの関連ニュースはこちら。

via Colorlines

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UIデザイン

悪のUIデザイン、ダークパターンの実例を見せる動画

ダークパターンについては2010年、概念が提唱された際にこのブログでも紹介しました

ユーザー体験を向上させるのではなく、ウェブサイト運営側の都合でものを買わせたり、ユーザー登録させたりするウェブサイト構築上のトリックを分類して名前をつけよう、というのがダークパターンです。

先週、そのようなダークパターンを解説する動画が公開され、注目を集めています。

とにかく退会したいんだ!

動画の最初はアマゾン。「アマゾンを退会しようとした人はどうなる?」で、一回入ったらそこから出ることは難しい Roach Motel (ゴキブリホイホイ)ダークパターンの実例を見せています。(00:15)

アマゾンを止めようと思ったことがないので知りませんでしたが、日本語でも止めるための手順を説明するブログ記事がいくつもあり、なかなか止め方が難しいのですね。動画と同じように日本のアマゾンでも退会ページを目指してみたのですが、退会に関してはアメリカ版と同じサイト構造になっているようです。

直観的にまず開くであろう、上部ナビゲーションバーの「アカウント&リスト」からは、様々なリンクが表示されるものの、そのどこからも退会ページに辿り着くことはできないそうです。

動画が教えてくれる手順は、

  • ページ最下部のリンクから「ヘルプ」をクリック
  • 「問題が解決しない場合は」から「カスタマーサービスに連絡」
  • 1の「プライム、その他」タブを選んで
  • 2のプルダウンから「アカウントの確認、変更、閉鎖」 (アメリカ版ではここが”Login & Security”だそうで、さらにわかりにくいですね)
  • もう一つ出てくるプルダウンから「アカウントの閉鎖」
  • 「チャット」「電話」「eメール」のいずれかを選び、先方からの連絡を待つ

なるほどこれは大変ですね。多くの人は途中で諦めてしまいそうです。

メルマガ退会を難しく

次はニュースレター/メールマガジンの購読停止(02:15)。メールの末尾に購読中止のためのリンクがあり、それを開けばその相手からのメールはもう来なくなる、という仕組みは良くあります。

日本のメルマガでは手動で依頼しないといけなかったりするのがまだまだ多いので、これでも助かる方かと思いますが、動画作者はここにもダークパターンがある、と喝破しています。

購読中止のリンクが地のテキストと見分けにくい色や太さになっていたり、ガチャガチャと関係のない情報が列挙されて非常に探しにくくなっていることが多い、と言います。

言われてみれば、たしかにこういうのよく見ます。

流れで購入ボタン

3つめのスマートフォンゲームアプリでの事例(02:30)は、「ゲームを始める」「次の面へ行く」などのボタンを全部グリーンの角丸ボタンで続けた上で、ゲーム内課金のダイアログで「購入」の方を同じデザインのボタンで描画する、というパターン。

動画では他に、やたらと「こちらは先ほど売り切れました!」「あとn時間で無くなります!」といった警告を散りばめるホテル予約サイトや、友人のメールアドレス情報を(サービスに招待する目的で)預けることをわかりにくいボタンで8回も押す機会があるような登録フォームをデザインして訴訟を受け負けたリンクトインの裁判、などの事例を紹介しています。

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データ可視化

デマが社会に広がっていくモデルを体験できるインタラクティブな図

Post-truth は、ポスト真実がソーシャルネットワーク上でどのように広がっていくかを、簡単なモデルでシミュレートできるサイトです。

図は人々がソーシャルネットワーク等でつながっている状態を示しています。丸が人で、丸と丸をつなぐ線がソーシャル上の友人関係。

濃い紫の人は詳しい人(Aware)、薄い紫の人は詳しくない人(Unaware)で、右下のスライダーで社会にいる人たちがどれぐらいその問題について詳しいか、を調整できます。

その上で、ネットワーク上のどこかにデマ(=「感情に訴えたポスト・トゥルース」)を投入すると、それをさらに自分の知人にシェアする人(赤色)と、シェアしない人(白色)に分かれます。

判っている黒紫の人が多い問題では、デマはなかなか広がりません。問題に詳しくない薄紫の人が多いと、あっという間に赤色が広まっていき、世の中の多くの人がそのデマに触れることとなります。その人本人が信じるかどうかはともかくとして、「友達が何人も言っていた」事になってしまうわけです。

このシミュレーターで何度か遊んでみると、デマを広げて社会を真っ赤にするためにはどうしたらいいか、もわかってきます。色が薄くて(=理解が浅くて)、色が薄い友人を多く持つ人にデマを投下すると良く広がっていくわけです。また、一度の投下ではあまり広がらなくても、別のところに2度、3度と投下し続けると、ある時うまく伝搬して広がっていったりもします。

社会の中で詳しい人を増やすことはもちろん対策になるのですが、どんな問題に対しても人を詳しくする、というのは実際問題不可能でしょう。となると、あとできることは「良く知らない事は広めない」かと思いますが、驚きをもって共有したい嘘ニュースが多数流れてくるソーシャルネットワークでそういう態度を取れる人は多くなく、その結果としてデマが途切れることは無いのかもしれませんね。