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最短距離ではなく「最も美しい」や「最も楽しい」道順を表示する研究

スペイン、バルセロナのヤフー研究所が発表した研究は、地図上で道順を示す時に、「一番早い」ルートではなく、「一番美しい」ルートや「一番幸せな」ルートなどを表示するという技術です。

happiest-map

出発地点と目的地を入力すると道順を表示してくれる、というのはオンラインの地図サービスでは普通の機能となってきています。車、電車、歩いていくなどの手段に合わせた道順表示も選べますが、ほとんどの場合、表示されるのは「最も早いルート」でしょう。

渋滞情報と組み合わせた「今一番早くつけそうなルート」や、坂道情報と合わせて「自転車で楽なルート」などというのも出来ていますが、今回の研究では、ロンドンやボストンの街の地域ごとの「美しさ」とか「楽しさ」を求め、それを道順作成時に参照することで、少し余分な時間は掛かるかもしれないが、歩いていて楽しいルートや、景色が美しいルートを提示できた、と報告しています。

手順

彼らはまず、ロンドンに関して、クラウドソーシングを使って人力でアルゴリズムを洗練させます。

UrbanGemsというサイトで、グーグルのストリートビューから持ってきた二つの地点の景色を訪問者に見せ、「どちらを美しいと感じたか?」などを多数の参加者に選ばせます。

urbangems-choose-beautiful-street

ここで集めたデータから、ロンドン市内の各地が美しいかどうかが取れたので、このデータを身ながら、美しいところを通りながら到着するように道順を作成します。作成されたルートは、最短に比べると平均12%長くなったということです。

この美しいルートが本当に美しいかの検証には、30人の地域住民を雇い、実際に歩かせています。どれが美しいルートかを隠した上で複数のルートを歩いてもらい、実際に歩いてみて美しいと選んでもらったルートが、プログラムが生成した美しいルートと合致することが多かったということ。

ここまでは、クラウドソーシングによる人力という手間の掛かるやり方ですが、これを別のいろいろな場所でやるにはコストが掛かります。そこで、次の段階として、Flickrの写真とタグを使い、街の美しい場所をプログラムで抽出します。

ロンドンについて、美しい地域がもうわかっているので、Flickrにあるロンドン市内の位置情報がついた写真数百万枚と、それらの写真についたコメント文をデータとして使います。

美しい場所ではより多くの写真が残されることや、ポジティブなコメントがつくという相関を得たため、逆にそのような地点をこんどはボストンのFlickrデータから抽出することで、こんどはボストンでクラウドソーシングしなくても、ボストンの美しい地域、が得られた、ということです。

beauty-in-boston-from-flickr

ボストンで美しいルートを生成し、ロンドンの時と同様にボストンの地域住民54人を使って検証したところ、人が美しいと思う道順を生成することができた、となっています。

Flickrの写真が多数あれば美しいルートを生成できる、ということですから、この先は機械的に、世界中の多くの都市について同じことができそう、というわけですね。

美しいルート、や、楽しいルート、は、特に観光で来た人などには役に立つのではないでしょうか。論文には「静かなルート」というのも出ていますし、他にもいろいろな切り口で、単に近いだけではない、目的別の道順というのが考えられ、地図サービスに搭載されてくるのかもしれません。

via MIT Technology Review via VentureBeat

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技術

エアろくろでエア陶芸し、3Dプリンタで実体化させる研究

「業界人のインタビューでは、なぜか両手をろくろを回すような形にした写真が多い」というのは、2012年の春頃に流行っ笑い話で、「エアろくろ」という言葉を生み出しました。

アメリカのパーデュー大学の研究 Shape-It-Up は、Kinect を使ってエアろくろを回すことで、バーチャルな陶器(でもなんでも)を作れるというシステムです。

shape-it-up-operation

shape-it-up-operation_001

操作はおなじみのKinnectで。両手でオブジェクトの形を作っていきます。

shape-it-up-kinnect

形を変えたり、曲げたりも。

shape-it-up-deformation

デモ動画では色をつけるところがどうなってるかわかりませんが、いろんな形のパーツを作ったものを組み合わせて、人型にしています(2:20 あたりから)

shape-it-up-objects

できあがった3Dモデルをプリントすれば、作ったモデルを具現化することもできますね。

via Put Your Hands Up…and Use Them to Mold Some 3D Art | Gadgets, Science & Technology

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教育

Codespell – Java言語がそのまま呪文となる教育用3Dゲーム

カリフォルニア大学サン・ディエゴ校の計算機科学者達が開発した Codespell は、一人称視点の3Dゲームなのですが、その一番の特徴は、プレイすることでJavaプログラミングを身につけられるという点です。

Codespellでは、プレイヤーは小動物ノーム(gnome)たちが住む土地にやってきた魔法使いです。ノーム達は過去に魔法を使って生活していたのですが、今は魔法をうまく使えなくなっています。魔法の呪文はJava言語プログラムで、物体を浮遊させるとか火を起こすといった7つの手持ちの呪文を使って、ノーム達を助け、火を消したり川を渡ったりといったクエストを解き、バッヂを獲得するのがゲームの目標です。

ゲームプレイ

3D世界の岩が燃えていますが、

codespell-target

岩オブジェクトというターゲットオブジェクトに対して onFire()メソッドにfalseを渡す、という呪文を呼ぶプログラムを書き、実行することで、

codespell-target-program

燃えていた岩の火が消える、という例がデモ動画で紹介されています。

codespell-target-extinguish

プログラミングの達人を昔からWizard、魔法使い、といいますが、ここでは、プログラムがそのまま魔法であるような仮想空間を作りこんだ、ということですね。

ゲームの教育効果

これを開発した研究者たちが、プログラミング経験がまったく無い10歳から12歳の女子40名にこのゲームを遊ばせたところ、少女たちは一時間もしないうちにJavaの基本的な構造を把握し、自分たちで新しい遊び方をプログラミングしたということです。たとえば、呪文(プログラム)を間違えてターゲットのオブジェクトを空中高く、届かないところに持ち上げてしまったグループは、自身を他のオブジェクトの上からジャンプさせるコードを書いて、ターゲットに次の呪文を掛けることができるようにしたそうです。

入手方法

ゲームはオープンソースで公開され、マック版はバイナリがダウンロードできます。Windows版も近々リリースされるということ。

via UC San Diego Computer Scientists Develop First-person Player Video Game that Teaches How to Program in Java via