カテゴリー
ネットの事件

米アマゾンで売られている有力NFT本をまじめにレビューしようとした人の話

NFTに関する売れ筋の本を12冊購入して、NFT 熱に一言申したい、と思った @lcamtuf さんが、どうしようもなくデタラメな本を見つけたという話

12冊全般について、まとめる価値もない(希少性が価値の源泉、みたいな本ばかりだった)と判断されたのですが、特に検索で3位に出てきた本がすごかったそう。☆5つのレビューが100個以上ついています。

前半のNFTの説明では「代替可能性(Fungibility)」と「代替不可能性(Non-fungibility)」を取り違えている、ぐらいでした。それもどうかと思いますが。

中盤からはいつのまにか”NFT”ではなく”Net Price Calculator(ネット料金計算機)”の略である”NTF”の説明が入ってきます。「Net Price Calculator の略」って、N しか合ってないじゃないですか。

さらに数ページ後には化学療法の薬の利用を減らす手法”NFP”の説明にと話が変わっていたそうです。要はこの書籍はテキストの分量はあるというだけのデタラメということですね。

@lcamtuf さんは当初、この本は依頼によってコンテンツを濫造するコンテンツファームに、各章バラバラに依頼されたものではないかと疑ったようです。内容に一貫した繋がりが見られないからですね。

しかし、それにしても文中の NTF やら NFP やらをその周辺の用語と一緒に検索しても、書籍に出てきた内容に似ている内容すらも出てこないのは変だ、と。確実な証拠はないものの、これは質の悪い人間の執筆者の集合によるものではなく、AIによる自動生成文を書籍化したものなのでは、と考えているそうです。

その後Amazon が何かしたのか、レビューの数はだいぶ減っているようです。発売直後のレビューで低評価をつけてる人も確かにいるのですが、絶賛してるレビュワーもまだ残っていますね。ここで抜き出された文章が本当なら、そして通してこの本を読んでいるなら、とても絶賛できるようなものではありませんけど。

電子書籍だけならまだわかりますが、ペーパーバック版もあるということは、こういう難しいことを解説する系の本はリアルに出版しても儲かるぐらい売れてしまうのかもしれないですね。

こんな本が混ざっていると、表紙買いとか積ん読とかはできないですね。

via Hacker News

カテゴリー
ネットのサービス

taxsim.app – 過去60年間のアメリカの所得税額を計算できるサイト

資料として面白いサイト。taxsim.app はアメリカ合衆国の各州における所得税額をシミュレートしてくれるwebサイトです。

今年だけでなく1960年から現在まで、それぞれその年の税率で計算してくれるというところに特徴があります。

年度や州、年齢や婚姻状況、そして年収を入力すると、連邦税と州税の額が表示されます。

カリフォルニア州、2000年に25歳、独身、年収9万ドル[acc value="90000" currency="usd"]として税率を計算

控除に影響する様々な追加の設定もすることができます。また、設定からdevモードにすると、このデータを表示しているAPIに対するrequest/responseを確認することもできます。

この税額計算ができる TAXSIM というソフトウェアは Fortran で書かれていて、これまでもいろいろな方法で動かされてウェブUIも何度も変更されているらしいのですが、現在の実装は Fortran のオリジナルコードを WebAssembly/LLVM で動かし、今回の UI は Vue や Tailwind.css を使っているそう。ソースコードも公開されています。

過去の税率や控除がどうだったかをウェブ上で自分でいろいろと確かめられるのはいいですね。同じ年収で年度を進めていくと、年収にもよるのでしょうけど1980年代とかに比べて連邦税の金額が減少傾向にあるんだな、など変化を実感することができます。

適当な値を入れて税金がどう変化するかを試してみましたが、1960年代から今までの税率の変化は、ずっと増え続ける、とか、ずっと減り続ける、とかいうことは無く、長いスパンで増えたり減ったりしていたようです。年収のレンジなどによっても傾向は変わるのかもしれませんが、政権党の交代とか景気の変動に対して変わってきた結果なのかもしれないですね。

いずれにしても、「昔はもっと税金が高かった」あるいは「安かった」という n=1 の回想というのは、その人のいた業界が伸びたかとか、個人の昇進や転職がうまくいったかどうかとか、家族の増減とか、色々な要因に影響されていて必ずしも世の中全体の変化を映してはいないかもしれません。こういったツールでモデルケースをいろいろ遡れるのは、議論のための正確な証拠が取れるという意味でいいですね。

カテゴリー
ネットのサービス

70 Million Jobs – 服役者と企業のジョブ・マッチングサービス

サービスを知った時が終了案内。というのは残念ですが。こんなツイートで知りました。

70 Million Jobs (7000万の仕事)というwebサービスは、刑務所に入っていた服役者の再就職を企業とマッチングするサービスだそうです。

70 Million Jobs のトップページ

「軽犯罪者と重犯罪者にフレンドリーな仕事」「犯罪記録のある人に再就職のチャンスを」とあるように、刑務所から出てきた人に企業が職を提供し、住所や職種でそれを検索できるようになっています。

アメリカの受刑者は200万人(日本は5万人弱)だそうで、刑務所から出てくる人数も多くなります。そんな犯罪歴のある人の数は成人人口の3分の1、7000万人に及ぶそうで、サービス名の70 million はここから来ているのですね。

そして、刑務所を出てきた人が仕事を見つけることは、アメリカでも決して簡単ではないそう。しかし、社会の3人に1人に犯罪歴があるとすれば、それを避けて雇用していては社会が成り立たないのではという気もします。仕事が見つからずにまた犯罪に走ってしまう人も中にはいるでしょうし、過去を認識したうえで採用する会社に入れるのなら、社会の安定にも全体の生産性にも寄与しそうで、このサービスには大きな意義がありそうに思いますね。

サービス紹介の動画で、CEOのリチャード・ブロンソン氏自身もまた、詐欺的な証券販売が元で2年間の服役経験をしていたそうです。自身の社会復帰や再就職での困難から、同様の困難を持つ多くの人達をなんとかしたいと始めたのだとか。

サービスが無くなりそうな状態で知ったのは残念です。日本も率や数は比較的少ないにしても、同様の問題がまったくないとは言えないでしょう。類似のサービスが求められている、あるいは社会がこのようなサービスをより必要とするようになっていくかもしれません。