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ネットの事件

イギリスのEU離脱決定後、日本からの「イギリスとは」検索が急増。日本人はイギリスを知らなかった?

国民投票の結果によるbrexit(EU離脱)を受けて、イギリス人が”What is the EU?”(EUって何?)と検索した、という話が、笑い話的に報道されました。

EUからの離脱が何をもたらすのかを多くの英国民が分からないまま投票に臨み、結果を受けて慌ててネットで調べた様子が明らかになった

「EU離脱とは?」「EUとは?」 英での検索順位発表:朝日新聞デジタル

英国内のGoogle検索で最も多かった検索ワードには、「What is the EU?」(EUとは何か)や「What happens if we leave the EU?」(EUを離脱したらどうなるか)などがあった。前者は、国民投票結果が正式に発表された後、英国におけるEUに関する検索ワードで第2位だった。後者は、投票終了後に250%以上増加した。

英国、離脱確定後に「EUとは何か」のグーグル検索が急増 – CNET Japan

例にあげたこれらはまだ抑制的で上品な方で、まとめサイト等では「自分たちが何に投票したか理解していない馬鹿なイギリス人」的な取り上げ方をしているところもありました。

「イギリス」を知らない日本人?

ではその同じ時期に、日本人は何を検索していたのでしょう。同じGoogleトレンドで、「イギリスとは」と検索した人の変化が以下のグラフです。

google-trends-what-is-the-uk

EU離脱の投票結果を受けて、「イギリスとは」との日本からの検索は、30倍ぐらいに増えています。こんなに「イギリス」が何のことか知らなかった人がいるとは驚きですね。「急増した」と言えば、まあそれ自体は嘘とは言えないかもしれません。

では次に、「イギリスとは」と「イギリス」の検索量を並べて見てみましょう

google-trends-what-is-the-uk-and-uk

実は、ほとんどの人は「イギリス(グラフの赤い方)」で検索していたことがわかります。「イギリスとは」が30倍に増えた、と言っても、青いグラフはそれが増えたかどうかもわからないぐらい、微々たる量だということがわかります。

ピークの6月24日でその比率は100:2、50倍。イギリスのニュースが話題の時に、イギリス関連のニュースやブログを見るために「イギリス」だけで検索する人がいることは特に不自然とは言えないでしょう。

いずれにしても、Googleトレンドでは「他の時期に比べてどれぐらい増えたのか/減ったのか」という相対的な量しか出てきません。

絶対量ならGoogle Adwordsを

では「イギリスとは?」と検索した人は実際何人ぐらいいたのでしょうか? Remy Smithさんが提案したのは、GoogleトレンドではなくGoogleアドワーズのキーワードプランナーを使った検証です。

こちらはAdwordsの利用者である必要がありますし、6月のデータはまだ出てこないので一工夫必要です。

「イギリスとは」「イギリス」で先月5月までの日本での検索量を調べます。

google-adwords-what-is-uk

すると、「イギリス」の検索が月間で11万回ぐらい、「イギリスとは」の検索回数は月間320回ぐらい、という結果が出てきました。

比率にして340倍は、Googleトレンドの方で出てきた50倍よりもかなり大きな値です。Google AdWordsのツールは、それを基に実際に広告を買う人のためのツールなので、どちらがより正確を期した数値を出しているかも想像できますが、仮に50倍の方だったとしても、「イギリスとは」で検索している人は多数派とは言えませんね。

そして、先月までの平常時で「イギリスとは」の検索が月間320回ぐらいなら、一日に10回。6月24日に普段の30倍の人が「イギリスとは」と検索したとすると、検索した人数は推定で300回、同一人物の複数回という可能性は無視して、まあ300人というところでしょう。

日本でグーグルを使っている人の300人が「イギリスとは」と検索した日が有ったからと言って、ニュースにするような話でもないですね。今回の国民投票のニュースで初めてイギリスという国を知った小学生あたりなら、そういう検索をするかもしれません。

面白すぎる話に注意

今回のニュースの元ネタは、他ならぬグーグル社の Google Trends 公式アカウントでした。

そのため、メディアの中には「グーグル社の発表によると」と言っているところもありましたが、一サービスのツイッター担当の一つのつぶやきでしかありません。興味深い結果ではありますが、元のつぶやきが注意深く「言っていない」ことが、広まっていくうちに付け加えられていった感じもありますね。

「EUという言葉を含んだ検索キーワードの中で2位」とは書いてありますが、それがどれぐらい多かったのかは、ツイートからは見て取れません。前述のRemy SmithさんのGoogle Adwordsのツールを使った推定では、「イギリス中でせいぜい1000人にも満たないだろう」ということでした。

イギリス人の「多くが」EUを知らなかった、みたいなニュアンスで書いているニュースを見た時に、「さて、本当にそんなことがあり得るんだろうか?」と思えるかどうかは、異国の市井の人を自分と同じような人間だろうと想像するか、自分とは何か違った人間だろうと想像するか、にも影響されるのではないかな、と思います。

参考: Stop Using Google Trends(Googleトレンドを使うな)

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ネットの事件

オンラインでケンカ相手を探すアプリ Rumblr はウソだった

おとといご紹介した、オンラインで近くのケンカ相手を見つける Rumblrですが、トップ画像やアプリのスクリーンショットが消え、サブドメインのURLに転送されるようになっています。

getrumblr

ITブログ大手の Mashable が中の人を探し出して電話インタビューをしたところ、Rumblr はこの人たちが立ち上げる、とあるコンサルティング企業の宣伝として作られたニセサービスだということを認めたそうです。

月曜のリリースのあと、CBS など多くのメディアに対して回答していたため、多くの英語メディアで取り上げられました()が、Rumblr アプリ自体はデモができる程度のものを作っただけで、リリースするつもりはない、ということです。

「このアプリは『危険』で、本当に作っても世界に対してネガティブな影響しか与えない」と言われると、そりゃそうでしょうね、と言うしかないのですが。

Mashable のブロガーは、サイトにあった登録メールに登録しようとして、その先で自動応答のスクリプトとやりとりしているうちに、そのコンサル企業のサイトに連れていかれたことで冒頭の中の人に連絡ができたそうです。

# 嘘のアプリで宣伝する会社が増えると困るので、リンクはしません。はてなブックマークで記録だけしておきます。

rumblr-after-form-submission

自分でも使ってみたいサービスならメール登録していたかもしれませんが、特に東京の街角で知らない人とケンカしたいとは思わなかったので自分で発見できませんでした。ごめんなさい。

Mashable のブロガーの「もしどこかのベンチャーキャピタリストがやってきて、1億ドル(110億円)出資するから Rumblr を本当に出さないか、と訊かれたらどうします?」という質問に、このコンサルタントは「たぶんノーと言いますよ」と答えたそうです。

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データ可視化

アメリカ・メディアマップ – Twitterで共有される人気メディアとその地域性がわかるインタラクティブマップ

URL短縮サービスの大手 Bit.ly が公開したリアルタイム・メディア・マップ(Real-Time Media Map)は、アメリカ人がどんな新聞・雑誌・テレビ・オンラインメディアを読み、ツイッターなどで紹介しているかを一瞥できる、インタラクティブな可視化地図です。

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オンラインニュース・ブログメディアの各州での一番人気を出したのが上の地図。地域により、一番読まれているメディアはバラバラですね。

現在最も読者が多いであろうハフィントンポストは、南部や中西部で強いですが、大都市圏ではあまり一番ではない様子。

起業やインターネットに強いTechCrunchは、シリコンバレーのあるカリフォルニアや、マイクロソフト、アマゾンなどが本社を持つワシントン州で強い。ライバルのMashableは、シカゴのあるイリノイやフロリダを押さえています。

首都周辺のバージニアやメリーランドでは政治系のニュースメディアPoliticoが一番。

エンターテインメント系のニュースの比率が多い印象のあるBuzfeedやTMZ、嘘のニュースで人気のThe Onion などは、田舎の州で強いようです。起業とかビジネスとかに興味のある人が割合的に少ないためなのでしょうね。

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こちらはテレビ/ラジオ系サイトへの言及をまとめたもの。

南部で保守系のFoxが強いですね。ニューヨークやカリフォルニアではラジオ局NPRのニュースが多く言及されているようです。多くの田舎州で、イギリスのテレビ/ラジオ局であるBBCが一番話題にされているのは意外です。あと、ワシントン州でアルジャジーラが一位なのは何でしょうか。

元データが「Twitterユーザーでbit.lyでURLを短縮しているユーザーがつぶやくURL」に限定されているとはいえ、人気サービスですからそのツイート数は膨大なはずです。

「アメリカでは」といっても、地域によって人々に影響を与えるメディアは大きく違うのだなあというのがわかりますね。

via Maps Of The Most Popular News Outlets In Each State