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英語学習

「ヒアラブル (hearable)」は英語か?

「目指すのは次世代ヒアラブル」というタイトルの記事を見て「ヒアラブルって何だっけ?」となりました。

本文で「ヒアラブル・デバイス」が「音を聞くための道具」みたいな意味で使われているようなので、hear + able で “hearable” ということですね。それって audible じゃないの、と思い、ちょっと調べることにしました。

まず、手元のFirefox のスペルチェッカは hearable を弾きます。

Google検索でヒット数を調べると、

  • ”hearable device” – 約3240件
  • ”audible device” – 約94000件

1ページ目には NEC の英語リリースとかも出てくるので、日本語がオリジナルな資料もこの中には多いかもしれません。

ある文字列が英語の一般的な単語かどうかを調べる時、Scrabble用の辞書を引くという手があります。英単語を作って点数を競うゲーム Scrabble では、審判のために使える英単語が決まっているので、まあ英語の単語だろう、と認められるかどうかの一つの指針になります。

ありますね。

英単語ではあるし、言われれば何のことか意味もわかるけど、ほとんど使われない、ということでいいのかと思います。

ただ、英語メディアの記事で使っているものもありました。こちらの例だと、元のニュースリリースが hearable を使っているので参照しているニュースもそちらを使っているようです。英語メディアの記事のすべてを英語ネイティブが書いているわけでもないというのもあります。

ニュースに取り上げてもらいたい企業等が、audible と別の言葉をわざと使って新しいジャンルのように見せようとしている可能性もあります。このジャンルの調査をする時は、”audible”, “hearable” 両方で検索した方がよさそうです。

なお、聴覚以外の英単語についても同様に「正しいけど聞きなれない英単語」「普通は使わないけど見ればわかる英単語」の二組あるものが多いようです。(参考: ‘Hearable’ vs. ‘audible’ in English)

(たぶん)元からある (たぶん)後でできた
聴覚 audible hearable
視覚 visible seeable
嗅覚 olfactible (*) smellable (*)
味覚 edible / gustable tastable
触覚 tangible touchable

右側は、要は一番よく使われる動詞に able をつけたものですね。機械的に作れるしわかりやすいですが、元々左側の正しい単語が存在するが、それを知らなかったり思い出さなかったりする人が使っているということでしょうか。

olfactible / smellable は、どちらもScrabble辞書で出てきませんでした。辞書によっては一方あるいは両方とも載ってないこともあり、そもそも「嗅げる」というのを一単語で表したいという場面が非常に少ないのかもしれません。

また、touchable は tangible に比べるとあまり自然な英語では使われないようですが、それを否定する “untouchable” は一般的だし理解される単語というのも面白いです。

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Sideways Dictionary – IT用語を「比喩」で説明するみんなで作る辞書サイト

Sideways Dictionary (斜めに見た感じの辞書)というサイトは、一般の人にはわかりにくいIT用語を、何かに例えることで説明しようという辞書サイト。Googleの兄弟会社Jigsaw のプロジェクトです。

トップからは、70個ほどの用語がアルファベット順に並んでいて、クリックするとその用語の説明文が閲覧できます。


Access Control List(アクセス制御リスト)を選んでみます

それはソフトウェア版の Turnstile (回転式改札口) みたいなもの。あなたに権限があれば、進むことができる (by Nick Asbury)


By User:ArnoldReinholdOwn work, CC BY-SA 3.0, Link

「by 名前」とあるように、ここにある比喩の説明はすべてユーザーの投稿によるものです。”More Analogies”をクリックすると、他にもACLを説明しようとするいろいろな比喩を読むことができます。

5件の中で一番イイネが多かったのがこちら。

それはパーティーのゲスト表みたいなもの。招待状を持ってこさせる代わりに、招待側が入口ドアのところでリストを見ながら、入れてもいい人をチェックする責任を持つ。どんな素晴らしいパーティーだとしても、招待者をおだてて侵入したり、どこかの他人に招待の権利を渡すことはできない。

他の用語も見てみます。

「ビットコイン」は、ティンカーベルのようなもの。たくさんの子供が信じた時だけ彼女は存在できる。ビットコインも、たくさんの信じる人がいて初めて意味を持つ。同じ話はすべての通貨に対して言えるけれどもね。

ゼロデイ」とは、キングが丸裸だと気づいたチェスのようなもの。あなたは対戦者がそれに気づかないよう息を殺し、どうやって防御を固めようか考え始めたところ。最悪のシナリオでは、相手は5手前にはもうそのことに気づいてて、あなたのことをもてあそんでいるのかもしれない。チェックメイト。

それぞれの用語に複数の比喩があり、読み比べることでより対象のIT用語の意味するところがわかってくるかもしれません。また、IT用語の方が把握できているエンジニアなら、逆に比喩に出てきた方の概念やその英語表現を学べるでしょう。

比喩を使うことで本質から外れて行ってしまう、ということもネットの議論などでは良く起こることではありますが、みんなで意見を持ち寄って並べることで、まったくITに疎い人にでもある程度伝わるような比喩を見つけていくことはできるのかもしれませんね。

via The Next Web

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ネットのサービス

lexiconjure – 機械学習で英単語の意味を作り上げるツイッターbot

ロス・グッドウィンさん(Ross Goodwin)の手によるツイッターアカウント@lexiconjure は、それに向けてアルファベットの単語をつぶやくと、その単語の意味を「生成」して返してくれるという新しい自動応答ボットです。

たとえば、Hexidecimated, 「16進数にされた」的な造語を与えられて、こんな定義を生成しています。

Hexidecimated

[形] アメリカ合衆国ヘキシカ島時代に関する/意味する。Hexide は北半球で強調される音節を持ち、イスラム教徒とユダヤ教徒が住んでいた。

[名] Hexidecimateの子孫

19世紀後半: ギリシア語の hexis (健康) + kedimē (種) から

なんかもっともらしいんですが、デタラメです。

この定義、オックスフォード辞書のデータからディープラーニングを使って自動生成しているそうです。

既存の辞書の定義をなぞって、あるはずのない言葉の定義をそれらしい英語と辞書っぽいフォーマットで生成してくれるというわけですね。

PythonのソースコードがGitHubで公開されています。

もう一つ傑作を紹介。このbotが紹介されたHacker Newsのコメント欄より。

ycombinator

[名] 受け入れられる状況に対して騙したり敵意を見せたりするように設計された人物

Y Combinator はHacker Newsの運営元ですね。

辞書風の定義文はTwitterの(今の)文字数では収まらないので、完全版はTumblrの方で記録されています

多数のツイッターユーザーから辞書にない単語も与えられていますし、”love”のような辞書に既にあるはずの単語も与えられ、それについても新しい「意味」が生成されています。

lexiconjure-top

AWSの無料枠を使って運営され、90分に一個の定義を返すようになっているそうで、現在はリクエスト殺到のため返答が遅れている状況です。

辞書にない単語の定義をでっちあげるゲームとしては、昔フジテレビで深夜にやっていた「たほいや」がありました。英語圏では「ボルダーダッシュ」(たわごと)とか「フィクショナリー」(フィクション+ディクショナリー)と言うそうです。

via Hacker News