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ネットの事件

「イスラエルからのプルリクエストは受けられません」- オープンソース貢献と国際紛争

PHPの人気フレームワーク Laravel にダウンロードリンク生成機能を追加するオープンソースのパッケージで、機能追加の提案がイラン人の作者によって却下されるという事件が発生しました。却下の理由はイランの法律だそうです。

armancodes/laravel-download-link は、Laravel 上でファイルダウンロードのリンクを生成するパッケージ。GitHub で管理されるオープンソースのライブラリで、ダウンロードリンクの時間による失効や IPアドレスによるアクセス制限などの機能を持っています。作者は @armancodes で、プロフィールではテヘラン在住となっています。

これに対し、ユーザー @Yiddishe-Kop が、特定のユーザーにだけダウンロードを有効化させることができる改造を提案しました。当初は受け入れられそうなコメントの流れでしたが、作者による以下のようなコメントで、PRは却下されてしまいました。

すばらしいアイデアをありがとう。

たいへん申し訳ないのですが、このPRをマージすることはできません。私の国の法律で、イスラエルからの人やイスラエル政府と関係を持ってはいけないという法律があります。

理解してもらえることを願います。あらためてあなたの時間に感謝します。

Hi, Thanks for your great idea.

I’m SO SORRY to tell you that I cannot merge this PR. There is a law in my country that we MUST NOT have any relationship with people from Israel or the Israel government.

I hope you understand this, and again thanks for your time.

他ユーザーも交えた議論が少し続いた後、元Google/Facebookのエンジニアでイラン系カナダ人で、今年イランへ入国した際に逮捕投獄され、アメリカへ戻ったらイランのスパイになるよう脅されて解放された、と発表した Behdad Esfahbod氏 (@behdad)が「ただマージすればいい(Just merge it)」とコメントした後で、プルリクエスト自体が作者によってクローズされてしまいました。

ユーザ名 @Yiddishe-Kop のの Yiddishe(イディッシュ)の部分は東欧系ユダヤ人の話す言語イディッシュ語(Yidish)にもあるようにユダヤという意味の言葉で、アカウント名に「ユダヤ」と入っていることからイラン人の作者が「気づいてしまった」というところはあるように思います。

プルリクエストの最初の方では、パッチの提案に感謝して取り込むためのテストコードを追加したりもしているので、名前に気づく前は普通に受け入れるつもりだったのでしょう。却下のコメントも悪意はまったく感じられず、むしろ申し訳ないと思っている風に読めますし、現地での法律がそうなっていてしかもインターネットに公開されている場所で、個人の判断で受け入れたりすることはもしかしたら作者が危険な状態になる可能性もあるのかもしれません。

また、Hacker News の議論では、そもそもアメリカ企業のGitHub はイランや北朝鮮からのアクセスを制限しているはずで、国籍による排除についてはどっちもどっちだ、という意見もありました。すべての機能が制限されているわけではないですが、利用規約を厳格に適用すると、イラン在住の作者の方が実はGitHub を使えないという可能性もあります。

GitHub については、他にシリアやクリミアからのアクセスも(IPアドレスによる位置情報らしきものを根拠に)ブロックしているという報道もあります。

今回はイスラエルとイスラム教国の間でしたが、世界が(再度)大きく2分されていく感じもある昨今、二大国の間で直接とか、それぞれの息のかかった国の間でとか、オープンソースとその貢献活動についても、面倒な事件がいろいろ出てくるようになるのかもしれません。そういった事とはなるべく距離を置きたいというエンジニアも多いのではと思いますが、普段パッチ提供者の国籍や居住地など気にすることもないでしょうし、誰もが突然こういった問題の当事者になってしまう可能性はありますね。

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ツール

Hacker Tab – GitHubのtrendingプロジェクトをブラウザの新規タブに表示するChrome拡張

新たに公開されたHacker Tab Chromeブラウザ拡張は、ブラウザの新規タブで表示されるページを、Google検索ではなく GitHub のホットなプロジェクト(trending)に差し替えてくれます。

プログラミング言語/集計期間を選んで絞り込むこともできます。

拡張機能のソースコードはこちら。GitHub の trending の取得にはこちらのスクレイピングライブラリを使っているようです。

ブラウザのタブが表示されるたびにチェックすることになるので新たな面白いオープンソースプロジェクトの発見につながるかもしれませんね。

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情報共有ツール

コスプレ写真でGitを学ぶレポジトリ komeiji-satori/Dress

GitHub のkomeiji-satori/Dress は、自分のコスプレ写真をGitで管理し共有するため(A Study and Practice project of git)の学習用レポジトリです。

当プロジェクトで、リポジトリの clone, ブランチの作成, コミットのpush/pull, プルリクエストの作成, の全プロセスを学べます。Git/GitHub の使い方がわかるようになるでしょう。

This project helps you to learn the whole process of cloning a repository, creating a branch, pushing and pulling commits, and making a pull request, thus you can have a good knowledge of Git/GitHub’s usage.

100名近くの contributors が参加していますね。Hacker News で紹介されたことでどっと増えているのかもしれません。

説明が中国語と英語の併記で、必ずしも同じ内容が両方で書かれているようでもないですが、もともとは女装コスプレか異性装コスプレの共有場だったのかもしれません。Contributing.md には「他人の写真を載せない」「可愛いは正義」「性別不問」という参加条件が載っています。

public に全データが公開されていることから、データを利用したウェブサイトが複数作られ、README 中でも紹介されています。

ライセンスはCC 4.0 by-nc-sa とあるため、利用条件に従ってここの写真を再利用する人も出るかもしれませんね。

元々ソースコードの管理や共有のために作られた Git ですが、IT関連の電子書籍の編集などで使っているケースもあります。コードを書けなくても、いろんな人が自分の目的で使える場があれば、世の中の Git 親和性や バージョン管理への理解も高まるのかもしれないなと感じました。もしかしたらすでにあるのかもしれませんが、句会とか水彩画とか、いろいろな趣味の発表場所として使われていくのかも。

via Hacker News