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2008年10月06日

書評: セカンドライフ 仮想コミュニティがビジネスを創りかえる

献本いただいたもの。

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セカンドライフ 仮想コミュニティがビジネスを創りかえる

正直、タイトルを見た瞬間は「えー要らないよこの本」と思ったんだけど、この本は「セカンドライフにショールーム作ったらメディアに取り上げられ宣伝費浮いてウハウハ」という、日本でセカンドライフというとよく聞く(聞きあきた)アレとは全然違う内容の本だ。

もう今となっては、タイトルに「セカンドライフ」と入ってる時点で心配になるけれども、でも、この本はセカンドライフの本以外の何物でもない。じゃあセカンドライフの何か、というと、旅行記だ。

セカンドライフの早い時期から内部に入り込み、ユーザの増加とともに発生した様々な事件をリアルタイムで見てきたジャーナリストが、事件の張本人達に取材をして当時の背景を明らかにする、というノンフィクションである。

ちょっと前の過剰宣伝(といっても、運営元がそれをやっていたわけでもない)や、それに対して実際には技術的に落胆させられることが多い(同時に集まれる人数が少ないなど)など、いろいろと問題はあるけれども、セカンドライフという仮想世界がどのような偶然から生まれて、その中で予想もつかなかったどんなことが起こったか、というのを読むと、これが面白いのだ。

たとえば、「セカンドライフでは当たり前のようにアバターが空を飛べるけれど、これも最初の設計にあったわけではなくて、昇るというアニメーションを作るのが面倒だったので開発の手抜きをしたら、空を自由に飛べることが楽しいと好評だった」、みたいなエピソードが満載だ。

それに、膨らみすぎた風船がしぼんでいるという状況はあっても、膨らんだ結果セカンドライフが多くの雑誌のトップを飾ったり、セカンドライフの中の成功者がメディアに取り上げられたり、という現象は確かにあったわけで、どういう偶然が、あるいは準備が、そういった爆発的な人気の広がりを作ったのか、といったところは、今のセカンドライフに批判的な人でも興味を持たざるを得ないところだろう。

ユーザの集団による政治的な戦闘や、現実世界ではハンディキャップを負っている人たちが仮想世界で大きな体験をしたり、統合失調症患者の感覚を再現できる部屋をセカンドライフ内に構築したり、と、面白い話がたくさんあった。

そういった多くの事柄は、非日本語で起こっていたのだろうし、そんなに熱心に情報を追っていなかった僕にとっては、ウェブでもそれほど見ることが無かった情報だ。たぶん、時間があってもそれを自分で見に行ったりとかはしてなかっただろう。そういうエッセンスを本一冊で知れた、という意味では、読んで良かった、と言える。たとえこの後セカンドライフにログインすることは無くても、だ。


[書評に関する注意書き]

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  • 献本いただいても必ず読めるわけでも、ご紹介できるわけでもない。読書の速度は遅いので、発売前や発売直後に送っていただいても、ご紹介が半年後になるようなこともある

投稿者 秋元 : 2008年10月06日 18:51

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