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ただ削除するだけでいいのか? 古いページの「ロングテール」効果

japan.internet.com 併載コラム 「ロングテール」という言葉がある。現実の店舗ではスペースの制約で置けなかったような需要の小さな商品もインターネット上のオンラインショップではいくらでも取り扱うことができ、 […]

japan.internet.com 併載コラム

「ロングテール」という言葉がある。現実の店舗ではスペースの制約で置けなかったような需要の小さな商品もインターネット上のオンラインショップではいくらでも取り扱うことができ、少量売れるものが多数集まるとその売り上げは無視できないほど大きい、というような現象を指す。

これを踏まえて今回は、実世界の整理整頓と Web サイトの整理整頓は必ずしも同じではない、という話をしようと思う。

Web サイトを制作する際、現実の会社案内カタログや商店の比喩を使って考えることは多い。もちろん、接客という面においては Web サイトも実店舗も同じであるから、この比喩によって類推できる事柄は多く、意味の無いことではない。

しかし、Web サイトが機械(プログラム)による自動応答システムであることを忘れると、人間によるサービスと機械によるサービスの特性の違いを見落として、理にかなわないサイト制作・管理をしてしまうことがある。

「ロングテール」が可能になったのは、自動でお客様の相手をしてくれるWeb サイトにデータを多く置いてもコストがさほど増えないからだ。商品カタログや企業情報、旧製品に関連した紹介・仕様・サポート情報などでも、適切に制作されたページや画像であればページ一枚を置き続けるためのコストは無いに近い。ハードディスクの低価格化もあり、一般企業の Web サイトであればサーバーのディスクのほとんどは空いたまま使われていないということもよくあるだろう。

だが、実店舗のアナロジーを使うと、役目を終えた Web ページを「片付けよう」としてしまいがちだ。現実の店舗やショウルームなら、使い終わったスペースはさっさと片付け、次の商品やキャンペーンのために空けなければトータルのコストが増えてしまう。電車の中吊りでもビルの壁面広告でも撤去しなければコストはかかり続ける。

一方、一旦制作し Web に向けて公開したそれぞれのページは、存続する限りあなたの企業や商品を宣伝し続けてくれる。古いページにリンクしてくれた他サイト、Blog、ソーシャルブックマークなどはあなたの企業の Web サイトが「老舗」であり「重要」であることの証言者でもあるのだ。

検索エンジンはそれらのリンクを順位付けの指標に含むため、古いページを消してしまうことはせっかくネット上で受けた評判を捨ててしまうことに等しい。

役目を終えたページも何らかの検索キーワードに結びついており、たとえ年に数人であってもそこから訪問者はやってくる。その時に「ページが見つかりません」といったエラーページを見せてしまうのは、検索エンジン対策(SEO)の観点からもあまりにもったいない。

では、古い情報の URL にアクセスされた際、企業のトップページや無関係な他のページに転送してあげるのはどうか。これもページを単純に削除するよりはましだがベストではない。

なぜなら、その古い個別ページに貼られた URL は Web 全体からみたら、漠然としたあなたの企業の情報よりも、特定のキーワード(「製品Aの情報」「製品Bに関する他社Cとの共同リリース」など)と結びつく力をすでに持っているからだ。

たとえば、製造中止にする製品のカタログページがあるなら、単に削除したり企業トップページに転送するよりは後継製品や関連製品のカタログページへと案内するのがいい。

もちろん、そのまま残していてはまずいページもあるだろう。たとえば、期限のある懸賞キャンペーンのページであれば、誤解が起こらないように「このキャンペーンは終了しました」とページに大きく追記したり、申し込みフォームを削除して申し込めないようにすればいい。そういうキャンペーンを行ったという記録がきっかけで検索からあなたの企業や商品を見つける人もいるかもしれないのだ。

インターネットから特定のキーワードによって参照されているというパワーを、今やっている他のキャンペーンや、新製品のページへと転送(リンク)してあげる(*1)。これにより、過去に行ってきたすべてのインターネット上のマーケティング活動の残り火を、ロングテール的に今のサイトの集客に積み上げることができるだろう。

(注)今回のコラムで、単純に「サイト内のページの数さえ増やせば検索で有利になるのか」と誤解されると困るので補足しておくが、内容がほとんど同じページを量産しても、最近の検索エンジンは類似ページを認識できるようになっており、このような安易な手段は逆にペナルティ(検索順位低下)の元となる。

(*1)ちなみに、リンクの転送方式にも技術的な選択肢がある。よい制作業者ならどのような転送が最適かわかっているはずだ。