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一方ロシアは鉛筆を使った の真相

via The Space Review 最近ネットで富に「一方ロシアは鉛筆を使った」というセンテンスを見かけるのだけど、プロジェクトX 風ナレーションってやつ? この一文を見ただけでも全体の話が想像できてしまって、非常 […]

via The Space Review

最近ネットで富に「一方ロシアは鉛筆を使った」というセンテンスを見かけるのだけど、プロジェクトX 風ナレーションってやつ?

この一文を見ただけでも全体の話が想像できてしまって、非常に面白い、よくできた話だなあと思っていたところ、この逸話(?)が流行っているのは日本だけではないらしい。

del.icio.us/popularこんな解説記事を発見。

結論としてはこの話はよくできたジョーク、あるいは都市伝説(どちらであるかは書き手がわかってて書いてるかどうかによる)だということだ。スペースペンの値段は4ドル(440円)程度で、鉛筆の値段とそう違わない。

上記の有名な文は英語だと

“The crafty Russians used a pencil.”

というのだそうだ。以下解説記事のポイントをまとめると、

– 普通のボールペンが宇宙で機能しないのはホント

– 有名な宇宙航空史学者までこの逸話を紹介したことがある

– ジョーク中のスペースペンの価格は1億円(90万9000ドル)から100億円(9090万ドル)、一千億円になることも

– 1963年の宇宙行で一本$128(1万4080円)の鉛筆が34本、計$4382(48万2020円)で買われた

– 高価格は船内作業で使える取っ手部分などの改造費用。鉛筆本体は$1.75(110円) ( 有権者への弁解の手紙 pdf )

– 人々は価格のわかる身の回りの日常品の購入価格ばかりを見てNASAを非難するようになる(ロット数とか宇宙仕様への改造などは無視して)

– 同時に、宇宙飛行士が勝手に持ち込んだペンテルの鉛筆($0.49(円))やサンドイッチも存在した ( 私物持込への叱責 pdf )

– 宇宙に行った品に高い価値がつくようになり、また危険防止から、数年後には私物の持込と持ち帰りは厳しく制限されるようになる

– スペースペン($1.98(110円))は1960年代中盤に私企業が勝手に開発したもの。

– この私企業が多額の開発費(つまり、税金ではない)をかけていたかもしれないが、NASAは一切無関係

– 製品名が誤解を生むとしてNASAが抗議 ( pdf )

– 1967年 この企業からスペースペンとは別のペン($4(440円))をNASAが購入

– 1972年 さらに別のペンをNASAが購入 ( 購入票 pdf )

– 嘘から始まったスペースペンはアポロ計画等で本当に宇宙へ行き、販売的にも大成功

以上から、元の話は、

– NASA も最初は鉛筆だった

– NASA が巨額の開発費を投入した、というのはウソ

– 無重力で書けるボールペンがあるのはホント

– ロシアが鉛筆を使ったかどうかは不明。$4(440円) で普通に売ってたなら冷戦下でも輸入してそうだけど

ということに。

なんとなく、この話は本当であってほしいな、本当だったら面白いな、という気持ちもあったけどね。

[追記: 2006.07.14] 欧州宇宙機関 の宇宙飛行士の日記で、ソユーズ内で普通のボールペンが使えたよ、という書き込みを見つけた。ロシアの飛行士から普通のボールペンを使えていると聞き、自ら持ち込んで試したらしい。

コメントで書いたように、下から書いたらすぐ使えなくなるのは手元で試せたけれど、これは重力がボールペンの邪魔をするように働くからで、真の無重力下では問題ないんだろうか?

「一方ロシアは鉛筆を使った の真相」への13件の返信

疑問点が2つほど。
1、ロシアの環境では、地上ではボールペンが使えない所も多いのでは。そもそもボールペンの普及率自体に疑問がある。それとも特殊なインクを使ったボールペンが売られているんだろうか?
2、宇宙で使う場合は、それ単独のコストよりも輸送コストや運用にかかるコストの方が大きな問題となることがある。例えば、(軽量化された)ボールペン一本と鉛筆十本+筆箱では後者の方が重かったならば、輸送費込みのコストではボールペンの方が安くつくかもしれない。また鉛筆の場合は鉛筆削りも必要だが、無重力下ではそれで発生する削り屑の処理も大きな問題となる。削り屑が外部に全く漏れないようにした特殊な鉛筆削りを用意するか、空中に飛散した削り屑を掃除機で吸引する必要が出てくる。その辺りはどのように対処したのだろうか。
もっと分かりやすい例を挙げれば宇宙食。生の食材の方が安くても、それを調理するための鍋や釜を宇宙まで打ち上げるとなると、その輸送費がバカにならない。また無重力下では食材をきざむのも煮るのも手間がかかる。宇宙食1パックの価格と食材一食分の価格とを比較すれば宇宙食の方が高いとは思うが、調理器具や加工にかかる手間も考慮したトータルなコストではおそらく宇宙食の方が遙かに安いだろう。

まあそういう話を抜きにしても、宇宙用ボールペンの価格は興味深い話ではあるのだが。

宇宙のボールペンのジョークを聞いて、本気にしてしまった男がいた。
アメリカの科学者は、彼に、その話がジョークであることを納得させようと
して、毛細管現象とは何かというところから始まり、ボールペンのインクの
成分やその粘度がどれぐらいか、など小一時間に及ぶ説明を行い、ボールペ
ンはそもそも無重力でも使えるのだということを納得させた。
一方、ソ連の科学者は、紙を上にはりつけて下からボールペンで字を書いて
見せ、ボールペンが上下逆でも使える=無重力でも使えることを納得させた。

> 村山さん

1. 摂氏零下20度でボールペンは使えなくなる、という話も聞きましたが、屋内で活動しているロシア人は普通に常温環境でボールペンを使ってるのではないでしょうか?

2. 原文にそのへんの顛末はさらっと書いてありますよ

> akioさん

ええと、別のジョークの紹介でしょうか? 間違いの指摘でしょうか?

宇宙の話は確かめにくいですが、下から書くぐらいどこでも試せますよね。今やってみたら、最初は書けていた線がすぐに書けなくなりましたよ。

スペースペンや、最近どこかでニュースを見た加圧されてるボールペンは書けるのかもしれませんけどね。当時のソ連にはそれらはないのではと思います。

ありがとうございます。やはりロシア(ソ連か。時代的には)もボールペンぐらい輸入できますよね。

注目に関しては、はやっている話題を取り上げる場合は、検索されうるキーワードをそのままエントリのタイトルにすればいいと思いますよ。元の文を変えてしまうと検索で出にくいですから。

最近、「新聞の見出しがSEO対策のせいでひねりがなくなり、つまらない」という記事がありましたが、検索エンジンがひねりを理解しませんから、このへんはしかたないですかねえ。

ありがとうございます。ネット上でジョークを募ってレートづけするというイベントのようなので、これが出典というわけではないでしょうけど、広まるきっかけだったのかもしれませんね。

この研究で全体のトップになったジョーク( http://www.laughlab.co.uk/winner.html )は、日本でもニュースになって紹介されていたのを読んだ記憶があります。英語じゃないと意味の通じないジョークですけど。

各国別の人気ジョークでは、僕はイギリスのものがいちばん面白いと感じました。

ソ連びいきなので眉に唾して聞いてほしいですが、宇宙開発に関してはアメリカよりもソ連のほうが、ムダに費用や科学力を投入しています。ソ連のほうが「すごい」です。えへん。
http://homepage3.nifty.com/junji-ota/sg/index.htm
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E9%80%A3%E3%81%AE%E6%9C%89%E4%BA%BA%E6%9C%88%E6%97%85%E8%A1%8C%E8%A8%88%E7%94%BB

このジョークがおもしろいのは、ロシアが神秘のヴェールにつつまれているからなんですよね。冷戦期には、われわれ(アメリカ)がいろいろ悩んでるあいだに、連中は思いも寄らぬとんちでわれわれの一歩先を行っているかもしれない!というパラノイアが盛んで、そういう背景からすると
「さもありなん」
と思わせる説得力を感じてしまうという。

実際、当時のアメリカは鉄のカーテンの向こうの実態がわからない科学力を針小棒大に評価しておびえ、異常に高いスペックの戦闘機をつくろうとしたり、
http://www.h3.dion.ne.jp/~okumoto/page022.html
こんな逸話を残したりしています。

そういう事情とは関係なく、このジョークはおもしろいと思います。インターネットサービスに関わってる人には特に。ものすごく重いフレームワークでサービスを立ち上げようとしたら、どこかの個人が単純なCGIで先行してたとか。そんなことありそうじゃないですか?

リンク先、どれも面白いですねえ! 知らなかった話ばかりでした。Bar さんの言われる通り割り引いたとしても面白い。

そして、このジョークが受ける理由も同意です。複雑化したものをシンプルなもので凌駕する、という話の骨格が、技術者に響くのでしょうね。

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