検索と広告、予算を割くべきはどちら?
検索エンジンで検索をしたなら、
- 左側に検索結果(キーワードに関連の高い順にロボット検索の結果)
- 右側に検索連動広告(検索キーワードを購入した会社の宣伝)
という並びのページが表示される。レイアウトは、Yahoo や Google、その他の検索エンジンでも似たり寄ったりだ。
以前は検索結果と広告の配置も各社バラエティに富んでいたが、Google AdWords の大成功と、Yahoo! がディレクトリ検索からロボット検索へ転換したこともあり、検索結果と広告の配置はどこも Google の配置と似たり寄ったりなものになっている。
検索結果で上位に上げる SEO を専門業者に頼むのも、クリックで課金される検索連動広告を買うのも、どちらも実施するのにコストがかかるとすれば、どちらにどれだけ費用をかけるべきなのだろうか?
SEO 業者は自然な検索結果で上位に出ることこそ重要、と言うかもしれないし、検索連動広告の販売側や代理店は、広告こそ効果あり、と薦めるかもしれない。それぞれ寄って立つ位置が違うから、これはしかたがないだろう。
完全な答えを出すのは難しいが、参考になるレポートはある。Google の検索結果を、一般ユーザがどのように見ているか、というのを調べたレポートだ。
これは ENQUIRO と Did-it、Eyetools らの共同研究で出された有料レポートで、さわりの部分が無料で公開されている。
これによると、Google の検索結果(organic search, 訳すとすれば「有機検索」か。手の入っていない公平な結果、というイメージを持たせた用語)の上位から、ユーザがそのリンクに注目をする確率は以下のようになる。
順位 | 確率 |
---|---|
1 | 100% |
2 | 100% |
3 | 100% |
4 | 85% |
5 | 60% |
6 | 50% |
7 | 50% |
8 | 30% |
9 | 30% |
10 | 20% |
検索結果の上位、1位~3位はほぼ目が通される。続くページ下のほうのリンクは50%ぐらいの人がチェック、スクロールしないと見えない8位~10位のリンクは、2,3割の人にしか読んでもらえない。
これに対し、広告(paid search, 有料検索)については、通常のページ右側にある場合(*1)は以下のような注目度になったという。
順位 | 確率 |
---|---|
1 | 50% |
2 | 40% |
3 | 30% |
4 | 20% |
5 | 10% |
6 | 10% |
7 | 10% |
8 | 10% |
右側の広告の方はというと、左側の検索結果に比べると、ずっと視線が来ていない。一番上に表示されたものでも、半分の人からは無視されていることになる。
この調査結果からは、「検索結果で上位に出る」ことと「広告で上位に出る」ことの効果は同等ではなさそうだ。
オフラインの世界、新聞や雑誌でも「本文を読み、広告『も』読む」人が多く、広告ばかり読む人というのは少ないのではないだろうか。広告よりも検索結果のほうをより公平なものとして信頼している人が多いのだろう。
***
ただし、と、ここから但し書きが多くなる。話はそう簡単ではない、ということだ。
世の中には検索サイト上での検索結果と広告の区別がついていないユーザもかなりの割合存在する、という説もある(*3)。そういうユーザ相手には、左か右かは関係なく、目立つ場所に表示されることの効果が高いのだろう。
また、検索をクリックして自社サイトにやってくるユーザと、広告をクリックして自社サイトにやってくるユーザでは、自社サイトに来た後の行動特性が違うだろう、という話もある。
広告をクリックしてやってきたユーザは、広告に対するアレルギーが少ないし、そこでさらに広告や売り込みをかけても成約しやすい可能性がある。単純に(広告上位より)検索上位のほうがユーザを呼び込めたとしても、そのあとの成約率まで含めて比較すると重要性が逆転するようなケースもあるだろう。
最初に紹介したレポートの数値は参考にはなるが、最終的には自社サイト内での成約率まで含めて総合的に考えた上で判断する必要がありそうだ。
(*1) 被験者数が50人と少ないが
(*2) 広告でも、検索結果の上位にかぶさって表示される場合もある。この場合については抜粋では語られていないようだ。
(*3) 検索結果のページに広告が混ざっていることを認識していない、すべてが検索結果だと思っているユーザが62%もいる、というレポート。(英文、PDF)