カテゴリー
書評

キャパシティプランニング

いただいたもの キャパシティプランニング ― リソースを最大限に活かすサイト分析・予測・配置 Flickrの中の人がFlickrのキャパシティプランニングについて解説した本です。キャパシティプランニング(容量計画)は耳慣 […]

いただいたもの

Flickrの中の人がFlickrのキャパシティプランニングについて解説した本です。キャパシティプランニング(容量計画)は耳慣れない単語ですが、ここで言っているキャパシティはウェブサービスの運営に必要なリソース(サーバ台数、メモリ、ディスク、回線容量やサーバ設置の部屋・ビルまで)で、それらのリソースがこの先どう不足し、いつどれだけ手当てをする必要が出てくるかということを見積もり準備するのがプランニングウとなります。
課金の方法が十分に発達していないこともあり、今はGoogleやYahooをはじめとしたウェブサービスのほとんどが無料で使えます。しかし、ウェブサービスがタダで運営できるはずもなく、運営側にとってはできるだけ「ギリギリ足りる」サーバ台数やその他の設備で運営できないと、ただでさえ広告ぐらいしか方法がない収入では費用をまかなえず、サービスを続けられなくなってしまいます。実際に今年はいろいろなサービスの終了を目にしているように思います。
ギリギリ足りる、でも不足してサービスを止めたりはしない、量のリソースを把握し、利用者の伸びに応じて今後の不足分を、これまた最小限に見極めて手配するのは、ウェブサービスのビジネス運営の観点から非常に重要だというわけです。
しかし、この手の書籍は「プログラミング言語を学ぼう」とか「ウェブアプリを作ろう」という技術書に比べると、数が少ないですね。実際に大規模なサービスで毎日のように新しいサーバを調達しているような現場で働いている人でないと書けませんし、それを書いてくれる人も少数なのだと思います。
この本では、ツールを使ってどのように現状を追跡する(モニタリング)か、収集したデータを分析し、この先キャパシティが足りなくなるポイントを予測するにはどうするか、複数の要因が組み合わさってリソース消費が変動するときに、条件を変えて実験することでどのリソースが使われ、どのリソースが最初に足りなくなりそうかを推測する、といった手順について丁寧に書かれています。なにより、使われているグラフや数字が、実際のFlickrの運営でのデータに基づいているのですから、説得力は高いですね。
付録Aでは、クラウドの利用について、実際にクラウドサービスを活用しているサービスの紹介を含めての解説がされています。Amazon S3は、単なるストレージとしてみるだけであれば、自前で構築した場合の3,4倍はかかるということ。クラウドサービスで得られるものと得られないものを把握し、利点が自社のサービスや成長の度合いに合致した場合には採用する、という、当たり前ですが大事なことが書かれていました。
著者John Allspawさんのブログ, twitter, プレゼンテーションスライドはこちら

[書評に関する注意書き]

  • 貰って書いた本についてはその旨記述します
  • このブログはサイボウズ・ラボの社員ブログなので、秋元個人に献本いただいても、何でも自由に書けるわけではありません。
  • もちろん、書評以外の他のブログエントリもそうですが、社員ブログではあってもサイボウズ・ラボ全社やサイボウズ・グループの意見を代弁してるわけではありません。
  • 献本いただいても必ず読めるわけでも、ご紹介できるわけでもありません。読書の速度は遅いので、発売前や発売直後に送っていただいても、ご紹介が半年後になるようなことも多々あります。