URL短縮サービスtr.imのサービス終了が教えてくれたこと
tinyurlやbit.lyのような短縮URLサービスで、そこそこ人気も利用者もあったとされるtr.imが、サービス終了を案内しています。 既に新規の短縮化や、リダイレクトのアクセス統計サービスなどは停止しており、URLの転送も今年の年末で終了するということ。 twitterのつぶやきなど、字数の制限された書き込みで使われることが多いURL短縮サービスで、半年以上前のURLがクリックされる回数は割合的には低いのかもしれませんが、サービスがなくなってしまうとリンクを辿れなくなる、というこの手のリダイレクトサービスが持つ問題点が発動してしまうことになります。 twitter上での人気URLを集計するtweetmemeでは、twitterで使われた短縮URLサービスのシェアも集計していますが、現時点ではtwitterの公式に採用されたbit.lyが8割近いシェアを獲得して他を圧倒しています。以前は3%近くでシェア5位につけていたtr.imは、上位5位からは消えています。
ブログで発表された敗戦の弁ですが、毎日大量の短縮URLを生成しリダイレクトを行なってきたけれども、開発のための投資ばかりが増大し、ネットワークのコストをまかなう方法を見つけられなかった、ということです。 今回、発表前にサービスの売却も試みたようですが、誰もtr.imを(一部であっても)買おうとする人は居なかったということです。(今後スパマーが購入を打診するのではと思いますが) # 海外進出する日本のウェブ企業で、お金がいっぱいあるところは今からでも名乗ってみると宣伝になるかもしれませんよ。買収元の企業名がいろんなニュースやブログで出るのは間違いないでしょうから bit.lyもそうですが、最近のURL短縮サービスは、スパマーのURLや危険なURLを排除したり警告を発したりする機能や、URLへのアクセス回数やアクセス元の情報を集計するアクセス解析機能などを持っています。URL短縮だけだと非常に簡単に、それこそ数十行のスクリプトで作れてしまうのですが、機能開発競争に巻き込まれることで運営のコストが増大していたのでしょう。 それに、これもブログで述べられていますが、twitterでみんながつぶやいているURLというのは、結局のところ誰もが手に入れられる情報だ、というのも彼らの気づきだそうです。上のtweetmemeもそうですが、誰でも手に入れられる情報を集計加工してみせるというビジネスは、それ自体では差別化した価値は生み出せない、という結論に達していました。 また、twitterがbit.lyを公式のURL短縮サービスとして採用したことも、tr.imの絶望感を高めたようです。bit.lyが(tinyurl.comに代わって)デフォルトに採用されたのは、bit.lyが機能的に他より優れていたということよりも、投資や買収の関係でtwitterとbit.lyにつながりがあったことが一番の原因と見られています。「twitterとつながりのない我々」というフレーズがブログに出ています。 考えてみれば、twitterの140文字にリンクを収めるためのサービスなら、twitter.com本体が持っていてもいいわけです。bit.lyとtwitterの蜜月関係は、会社の関係や両方に関わる投資家の思惑で保たれていて、ある日突然twitterが公式の短縮URLを自前でやらないことを保証できるから、bit.lyは投資を集めることができる、と。tinyurl.com, ow.ly, is.gd, ff.imなどの他のサービスも、この状況を崩すのは難しいのではないでしょうか。 サービスの機能的なところも、技術の良し悪しでサーバーの利用台数が半減できたり、デザインや使いやすさでより高い評判を取ったり、という差別化はできるのでしょうけれど、それよりもビジネス的な連携が勝敗に大きく関わるんだなというのが感想ですね。当たり前といえば当たり前ですけど。 余談ですが、tr.im終了のお知らせをtwitterでつぶやいたら、bit.lyで短縮された上に、それをクリックするとbit.lyが「このリンクはスパムの疑いがあります」という警告を表示しています。bit.lyのスパム判定のできに問題があるのかわかりませんが、踏んだり蹴ったりとはこのことだなあと思いました。 [2009.08.12 追記] 閉鎖撤回のアナウンスと共に転送以外のサービスも再開したようです。TechCrunchは、売却を有利にすすめるためのまずいアピールだったとみているようですが、さてどうなんでしょうか。 [参考] Competeでのユニークビジター比較 Hitwise Intelligence - Heather Dougherty - North America 短縮URLのシェア争いに関する記事 URL短縮戦争:TwitterがTinyURLを捨て、bit.lyを採用