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ワードプレスのソースコードから8年間懸案の変数名「おしっこ」が除去

ブログツールとして世界中の多くのサーバで使われている WordPress のソースコードの、数限りなくある中のちょっとした修正は、変数名の”pee”と”tinkle”を書き換えるというものでした。


-442 function wpautop( $pee, $br = true ) {
+442 function wpautop( $text, $br = true ) {

wpautop()という関数は、ブログ記事のテキストに2行以上の改行があった時、それを<p>タグに置換する、という働きをします。

「WordPress(wp) が自動(auto)で p(タグ)をつける」といったあたりから命名された関数だろうと思いますが、WordPress の歴史は長いのでこの関数も昔から存在していたようです。

それで、この関数を書いた誰かは「オートでPする」の響きからの連想か、引数名に $pee(しっこ、幼児語)を使う言葉遊びをしてしまったようですね。

その後のどこかの時点の修正で $pees をループで一つずつ処理する際に、取り出す変数を $tickle (こちらも しっこ、幼児語)が使われています。

# tinkle というとリトルスターぐらいしか連想しませんが、そんな意味もあるんですね。

WordPress の公式バグ管理システムからは、8年前のチケットで初めてこの二つの変数名についての指摘がなされたことがわかります。

8年前は lead developer らから「単なるプログラマージョーク」「ユーモアを消すことはない」などと相手にされなかったようですが、3か月前にチケットが再オープンされ、今回は修正するということになったようです。

コードの差分を見るとわかるように、大量に修正箇所はありますが基本的に変数名と関数名の置換がほとんどです。$pee は #text に置き換えられていて、たしかに $pee よりはこれが何を保持しているのかわかります。

今回修正が通った際の core committers の反応は、「ワードプレスの成長に応じて、コード中のジョークやユーモアに対する耐性は減っていると思われる」「より多くの人をインクルーシブに受け入れることは重要」といったようなもの。

まとめると

  • 英語圏の人にしかわからないジョーク
  • 変数には変数の役割を表す名前を付けた方がコードを読む人の助けになる
  • 不快な人もいるならユーモアで済ませられない

といったあたりでしょうか。「個人としては気にしない/好きだが WordPress がこのことで避けられると困る」みたいな人もいるかもしれません。

時代の変化かもしれませんし、8年前の却下が妥当だったか、今回の修正が妥当だったかも人によって意見はわかれるかもしれません。ソースコードやコメントで遊ぶというのはプログラマーなら身に覚えのある人は多いと思いますが、完成品ではなくコード自体が広く配布される場合、遊んだ内容が誰かを不快にするものではないかという意識もあったほうがいいんでしょう。

WP Tavern via reddit/programming

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落とした財布が戻ってくるか世界40か国で行われた実験結果

世界の40の国、355の都市で17000個の財布を落として実施された大規模な社会実験結果が発表されました。

「落とされた」財布には、以下のようなものが入っています。

  • 現金 米ドルで$13.45(1430円) 相当を現地購買力に合わせて補正した現地の通貨
  • 同じ名刺が3枚 メールアドレス入り (現地によくある男性名で、現地語)
  • 買い物リスト (現地語で)

財布によって条件を変えて、結果にどう影響するかも調べたそうです。たとえば、現金は入れない”No Money”の条件。鍵を入れる入れない、など

これを、銀行、劇場や美術館等、郵便局、ホテル、警察署、裁判所、などの受付に「角にこれが落ちてました。私は急ぐのでこれで」と連絡先を教えずに去り、中の名刺に書かれた連絡先に連絡が来るかどうか、を調べたそうです。

お金を入れたものと入れなかったものの二つを国別にプロットしたのがこちらのグラフ。

40か国中38か国で、お金が入っていた方(赤い点)の方が、持ち主に戻ってきています。お金が入っている方が、「持ち主に届けなきゃ」という気持ちが出るのですね。メキシコとペルーのみ、現金が入っていない方が財布の戻りは良かったそうですが、その差もそれほど大きなものではありません。

また、「お金だけ」「鍵だけ」などの対照実験では、鍵が入っていた場合の戻り率が高かったということ。鍵を亡くしたのは困っているだろう、という他者への想像力でしょうか。

なお、「戻ったかどうか」は、100日以内に名刺のメールアドレスに連絡が有ったかどうか、で判定しているそうですが、その後に実際に財布が戻った際に、現金が抜かれたうえで戻ってきた率は2%以下に過ぎなかったそうです。

北欧諸国では8割の財布が戻ってきたそうで、すごいですね。実験対象に日本が含まれてないのが残念です。日本も自己イメージとしては落とし物が戻りやすい国ではないかと思いますが最近どうなんでしょうね。

via Bored Panda

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Q – 性別のない合成音声=ジェンダーレス・ボイスを各社音声アシスタントに採用呼びかけ

Q は、グーグル/アップル/アマゾン/マイクロソフトなどIT大手のスマートスピーカーや音声アシスタントに向けて提案された、男性でも女性でもない合成音声です。

サイトトップでクリックすると、その男女どちらでもない合成音声を聴いてみることができます。

デンマーク・コペンハーゲンのLGBTパレード団体やAIのバイアス問題に対処しようという団体らによって制作されたこの音声は、GoogleアシスタントやAmazonアレクサなどの音声アシスタントの音声が「男性声」「女性声」からの選択を強いていることに対する問題提起だということ。

言われてみれば、機械で合成しているのだから人工音声で男性か女性の声を選ばないといけない理由はないわけです。

「テクノロジー企業は、合成音声の性別を選択できることで人々がより快適になると信じ、性別をテクノロジーに持ち込んでいます」

「残念なことに、これらによって性別が必ずはっきりどちらかの2つに分かれる、というステレオタイプの永続化が補強されてしまうのです」

なるほど。応答ができて情報が返せればいいのですから、機械の合成音声にわざわざ性別を与える必要はないのかもしれません。男性声・女性声が今すぐ無くなるとは思えませんが、中性声を追加することはそれほど抵抗なく採用してもらえる可能性もあるのではないでしょうか。

このQの音声モデルは、数千の候補者から数人を選び、その人たちに話してもらった声のピッチを変換することで作ったと、紹介動画にありました。

「世界初のジェンダーレス音声」とサイトでは言っています。これまでも中性的な音声合成はいろいろ存在していたと思うので、世界初は言い過ぎではないかとも思いますが、ジェンダー中立を訴えて作成されたという意味ではこれまでになかったものでしょうか。

via Hacker News