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読者コメントを「過去に遡って全部実名に切り替えます」と発表して恐慌を引き起こした米地方新聞社

アメリカ北西部モンタナ州ビュートの地方新聞社モンタナ・スタンダード(Montana Standard)が去年の11月に発表したのが、新聞社サイトのニュースへのコメント欄の新年からの実名化。

匿名者によるネガティブなコメントに飽き飽きしていたらしいこの新聞社、編集者の『この実名化によって「匿名コメントの持つ腐食性」を食い止められるでしょう』という実名化への動機が紹介されていて、「実名なら人はひどいことを書かないはず」という信仰がいまだ根強いことを感じます。

# これが誤解であることはフェイスブックを見れば明らかなんですが。

しかし、この今回の変更の最大の問題点は、新しく書かれたコメントだけでなく、過去にサイトに書かれたすべてのコメントについて、表示名(screen name)で表示されていたものを本名(real name)に変えるところにありました。

実名での表示を望まない人は12月26日までに「なぜ自分のコメントを削除すべきか」理由を添えて申請するように、と案内されていましたが。そんな新ルールを過去のコメントに対して適用されてしまうことに対して怒った読者がコメント欄に殺到。

結局、申請締め切り前の12月中旬に、この新聞社は「過去のコメントは全部、単に削除します」と訂正を入れて騒動は収まりました

過去のコメントの内容自体には、役に立つものや貴重なものもたくさん有ったでしょうに。どうしても実名制に移行したいなら、過去分だけニックネームのままにする、という手もありそうなものですが、新聞社の声明によれば、同社のコンテンツ管理システム(CMS)の制限のために、全削除という対応に変わったということ。

この事件から得られる教訓

コメント欄に書くための会員登録ですが、「実名」のところも好きな名前を入れられたようです。

「実名」と「表示名」欄があることで、つい実名の方には本名を書いてしまった人も多かったのだろうと思いますが、まさか後になって実名の方が広く公開されてしまうことになろうとは、想像しなかったというところでしょう。

しかし、本名を登録したサービスが後々どういう方針に変わるかなんてわかりませんし、買収等でまったく別の会社があなたの本名を別の目的で使うこともあるかもしれません。

今回は苦情が多くて撤回されましたが、そもそも必要もないところで本名を記入したり与えたりしない、というのが、賢いネットの歩き方と言えるのではないでしょうか。最初から与えていなければ漏れることも悪用されることもないわけで。生年月日やら何やらもね。