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2007年09月14日

Alexa(アレクサ)の間違った使い方

MarkeZine併載コラム 第七回

今回はアレクサで比較しちゃだめですよ、というケースを実際にあげて説明してみた。

このシリーズは、Markezineの連載との併載になっている。説明図なども作ってもらっているのでマーケジンのほうが読みやすいかも。


いよいよアレクサの深い話に

アレクサとは何か?から始まり、これまで6回に渡ってその原理、読みかた、ツールバーのインストールなど基本的な項目をご説明してきました。

今回からはいよいよ、アレクサ自身が積極的には言わない事柄についてお話していきます。「アレクサ自体のことは知ってるから今さら説明なんか要らないよ」というみなさんはお待たせいたしました。

アレクサについてのよくある誤解

第三回でお話したように、アレクサは「ブラウザによる」「ウェブサイトへの」アクセス情報を収集・提供するサービスです。

アレクサの統計が何をどう集めたデータかということを理解しないまま、闇雲にいろんなドメインを入れて比較をすると、(当然ですが)「このサイトはこれぐらいの人気だろう」という実感とは食い違った数値やグラフが出てくることがあります。

そのような驚きを元に間違った解説をするブログ記事などが後を絶ちませんので、実際に私が見たことのある例などをあげつつ「アレクサではわからないこと」を見ていきましょう。

ブラウザを使わないサービスを調べても無意味

セカンドライフといえば、単なる一過性のブームか、それとも新世代の人気サービスかという論争もかまびすしい、3Dの仮想空間で遊ぶオンラインアプリケーションですね。

このセカンドライフと、日本のソーシャルネットワーク最大手ミクシィの勢いをアレクサのグラフで比べて、「ミクシィと比べればセカンドライフは言われるほど盛り上がってない」と書かれた人がいました。

alexa-secondlife-and-mixi.png
セカンドライフとmixiを比べても…

しかし、セカンドライフはブラウザではなく専用クライアントを使ったネットワークアプリケーションなので、セカンドライフにどれだけユーザが殺到しようと、アレクサにそのデータが送られることはありません。アレクサで出るのは、セカンドライフの案内サイトのアクセス数です。

セカンドライフのウェブサイトと別のオンラインゲームのウェブサイトとを比較をして、「オンラインゲームの(ゲーム本体ではなく)ウェブサイトのトラフィック比較」であれば意味はありますね。もちろん、その場合でも、ウェブサイトの人気とゲーム自体の人気が比例するわけではないことには注意してください。

その場合に出てくるのは、ゲーム同士の人気度の比ではありません。そのゲームの公式ウェブサイトのトラフィックの多い少ないです。ゲームよりもウェブサイトでのコミュニティが充実したサイトや、ゲームのバグ修正パッチをウェブサイトで頻繁に提供しているような会社のほうがアレクサでは良い数値を出すかもしれません。

ケータイ向けサイトを比較しても無意味

携帯電話のブラウザには、アレクサのツールバーは当然入っていません。

これらのブラウザからのアクセスは、Webサーバのログ解析ツールや、(Javascriptが動くブラウザであれば)スクリプト埋め込み式のアクセス解析ツールではわかりますが、アレクサのデータには入ってきません。

当然、モバゲータウンのようなモバイルユーザ中心のネットサービスは、実際に携帯電話でどれだけ人気があっても、アレクサ上ではたいして大きな数字は出ません。

パソコンからモバゲータウンのアドレスを知りたくて検索した人は、案内のためのPCサイトに辿りつくでしょうけれど、実際に入会して毎日アクセスするのはそのPCサイトではないのですから。

alexa-mbga-and-mixi.png

mixiとモバゲータウンとを比べても…

ですから、携帯サービスがメインのサービスと、PC向けがメインのサービスをアレクサで比べても、何も意味のある比較にはなってないわけです。当然、PCサイトに力を入れているサービスのほうが、アレクサではより高アクセスとして表示されます。その比較は、必ずしも携帯サービスとしての人気の多寡とは相関しないでしょう。

ゲーム機用のサイトも同様

Wiiやプレイステーション3、Nintendo DSといったゲーム機でもブラウザが使えるようになってきました。これらのブラウザにも、ケータイと同様、アレクサにアクセスデータを送る機能はありません。

ゲーム機のブラウザから閲覧されることが多いであろうゲーム関連のサイトでも、アレクサではアクセス数が実際よりも小さく出てしまうと思われます。たとえば、任天堂のWiiブラウザで楽しめるウェブサイトがどれだけ人気になっても、アレクサにはそのアクセス情報は届かないのですから。

MacintoshやLinuxユーザ、Operaユーザなどのためのサイトも

まったく意味がないとは言いませんが、アップル社のパソコン・マッキントッシュの情報を集めたサイトの人気度を見るのにアレクサを使っても、そこに出るのは「『Windowsユーザで』マックの情報サイトを見るような人の統計」ですから、マックのヘビーユーザがどのマック関連サイトを良く見ているか、といった情報は取れません。

むしろ、「Windowsユーザのためのマック入門」のようなサイトが、実際より良い結果になってしまうかもしれません。

ドメインが違えば統計も異なる

ユーザから見て一つのサービスに見えても、ドメインを見ると複数のドメインから構成されるようなウェブサイトもあります。

サブサービスのための別のドメインを使ったり、ブログサービスなどで表示するときと書くときのドメインが別だったりというようなことは、それなりにあります。

たとえば、株式会社はてなのサービスRimoは、rimo.tvという別のドメインを使っています。これは、アレクサで"hatena.ne.jp"を調べても含まれてはいません。もし「会社としての」トラフィックを他社と比べたいのであれば、アレクサでの比較では不適切となる場合もあるかもしれません。

alexa-hatena-services.png

広告キャンペーンなどのためにある商品のために専用ドメインを取るような企業も同様ですね。アレクサはあくまでも「ドメインの」トラフィック統計ですから、代表的なドメインだけで比較したつもりでいては、同じ運営者による別ドメインのトラフィックを見逃してしまうこともありそうです。

違う性質のウェブサイトは比較しにくい

アレクサが取っているのはページの表示回数です。さて、「ページの表示回数が多ければ人気が高い」という命題は、常に正しいと言えるでしょうか?

求める情報を得るまでに何クリックも必要な構成のサイトであれば、アレクサのトラフィックも大きく出ます。

特に、ソーシャルネットワークサービスのように、何十分もサイト内を巡回して、友達や掲示を読んで回るスタイルのサービスは、アレクサでは上位に行きやすいでしょう。

それを理解した上で異業種のサイトをアレクサで比較するのであれば構いませんが、基本的には同業や似た性質のサイトを比較するための道具として使うのが無難です。

API経由のトラフィックなどは見えない

WebサービスのAPIやウィジェット(ブログパーツ)経由で広く提供しているサービスがあります。他のサイトにニュース等を提供したり、広告などを貼り付けてもらったりするこれらのサービスのアクセスは、アレクサからはカウントされません。

RSS/Atomフィードなどによるコンテンツの提供も、アレクサから見えることはありません。

これらのAPIやスクリプトによるドメインを越えたデータ連携は、ネット上でも少しずつ存在感を増してきています。こういった他サイトとの連携に力を入れているサイトの勢いは、アレクサだけでは見つけられないかもしれませんね。

例として、アレクサでGoogleを見れば、Googleの検索や無料メールのサービスだけでも巨大なトラフィックが出てきますが、それに加えてGoogle AdSenseの広告ネットワークなどで、アレクサで取れるよりずっと大きなトラフィックが存在しているはずです。

まとめ

ドメインを入れるとトラフィックやそのグラフが出てくるアレクサは、直感的でに面白いサービスです。しかし、その原理を考えればなんでも正しく比較できるというわけではないことがわかります。

次回はさらに一歩踏み込んで、アレクサの統計データを恣意的に操作する方法などを解説します。

投稿者 秋元 : 2007年09月14日 17:00

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