« UbiquityのAza Raskinさんと会った | メイン | 開発者のPHP利用はPHP5に移行した »
2008年11月27日
書評: アーキテクチャの生態系
献本いただいたもの。
ニコニコ動画の非同期な同期性を解説したオンラインの記事等が有名な濱野智史さんの本。
日本人による近年のウェブサービス・ウェブトレンド解説ということで、GoogleやYouTube、Twitterだけでなく、2ちゃんねる・Mixi・Winny・ニコニコ動画・ボーカロイド・ケータイ小説、などが対象とされ、なぜそれらのサービスや製品が日本のウェブで人気を博したのかが考察されている。
読んでいると、「この人どんだけ2ちゃんねるが好きなんだ」(僕も好きだけど)とか、「ニコニコ動画好き過ぎる」(僕も好きだけど)とか伝わってきてしまった。今の日本語のウェブをヘビーに使い倒している人たちの思考を知りたいという人にも、流行したサービスの何が良かったのかを知りたい人にも役に立つ点があるだろう。
非常に面白かった点: 爆発的ヒットとなったケータイ小説「恋空」のどこが「リアル」なのか、の考察
著者も恋空が文学的に素晴らしいと言っているわけでは決してないけれど、漢字が正しいとか語彙の選択が正しいとか文章の組み立てが正しいとか因果関係が正しいとか、そういった従来の正しさとはまったく違うところに、ケータイで四六時中連絡を取り合っている者であれば理解できるような(そうでなければなんでそんな描写がやたらと登場しているのか理解できないような)説明文が多数あるのだ、という分析にはうならされた。
僕は対象となるケータイ小説を読んでないし、ケータイ小説のメインターゲットの生活風俗もよくわからないので、それがどれだけ正しいのかはわからないけど、小説を引用しての本書での説明だけでも、ケータイ小説の何が「リアル」なのかを気づけた気がした。
ケータイ小説中で示されている、携帯電話を使って今行なわれているやりとりの中で、いわゆるケータイ世代がどんなコミュニケーションの期待値を持ったり、何が彼らの暗黙のマナーだったりするのか、ということ、そういった情報が執拗にケータイ小説中に現われているが、ケータイでのコミュニケーションを多用していない人にはそれが情報であることにも気づけていない、という指摘にはとても考えさせられた。
目次 第一章 アーキテクチャの生態系とは 第二章 グーグルはいかにウェブ上に生態系を築いたか 第三章 どのようにグーグルなきウェブは進化するか 第四章 なぜ日本と米国のSNSはちがうのか 第五章 ウェブの「外側」はいかに設計されてきたか 第六章 アーキテクチャはいかに時間を操作するか 第七章 コンテンツの生態系と「操作ログ的リアリズム」 第八章 日本に自生するアーキテクチャをどう捉えるか
[書評に関する注意書き]
- 貰って書いた本についてはその旨記述する
- このブログはサイボウズ・ラボの社員ブログなので、秋元個人に献本いただいても、何でも自由に書けるわけではない。
- もちろん、書評以外の他のブログエントリもそうだが、社員ブログではあってもサイボウズ・ラボ全社やサイボウズ・グループの意見を代弁してるわけではない。
- 献本いただいても必ず読めるわけでも、ご紹介できるわけでもない。読書の速度は遅いので、発売前や発売直後に送っていただいても、ご紹介が半年後になるようなこともある
投稿者 秋元 : 2008年11月27日 15:34
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://labs.cybozu.co.jp/cgi-bin/mt-admin/mt-tbp.cgi/2080