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ネットの事件

フリーな Photoshop のライバルツール GIMP の名前の由来。そして何度も出てくる改名提案

有名オープンソースツールの名前と政治的正しさに関する揉め事です。

“gimp” は悪い言葉か?

“GIMP”という名前をより攻撃的でない(less offensive)名前に変えよう というチケットが GIMP のGitlab に投げられていました。

“gimp”という単語の意味自体を知らなかったので、まずこの人の説明する悪い意味と言うのを調べてみます。

“gimp” には「組み紐」という意味の他に「不自由な足取りの人」「役立たず」といった意味もあるそうです。なるほど。この意味で使われる時は他者を軽んじたり攻撃したりが多い、ということ。

今回は、改名を支持するコメントに10個以上の「いいね」がついているようですが、このチケットに別の掲示板からリンクが張られていて、その掲示板の読者が集団でやってきて「いいね」を押しているのではないか、という意見も出ています。普段GIMPの開発に関わったりユーザーだったりではない人々に操作されているのでは、ということですね。

チケットは短時間で「対処しない」とクローズされていますが、どうも、この改名提案は不定期にGIMPプロジェクトに寄せられ続けている、よくある提案なようです。

GIMP の名前の由来

GIMP の作者、スペンサー・キンボール氏(Spencer Kimball)とピーター・マティス氏(Peter Mattis)の1997年のインタビュー記事で、

当時、映画「パルプフィクション」が話題になってて、そこからある一つの単語が思い浮かんだんです

At the time, Pulp Fiction was the hot movie and a single word popped into my mind while we were tossing out name ideas.

と答えています。当該のシーンはこちら。全身黒の拘束具に包まれた男性を「gimp を連れてこい」と箱から出させています。(シーンの解説)

右の黒づくめの男性が “gimp”

スラング情報を集積している Urban Dictionary のサイトによると、こういった奴隷的な扱いを受ける男性のことも gimp と呼び、これが広く知られるようになったのは「パルプ・フィクション」のこのシーンによるものらしいです。

作者たち自身が「このシーンからつけた」と言っちゃってますので、「一つの単語にいろいろな意味が」とか「GNU Image Manipulation Program (画像操作プログラム)の頭文字だよ」という言い訳も今さらでしょう。

ちなみに、現在 CockroachDB の CockroachLabs社の CEOがキンボール氏、CTOがマティス氏CEO。「ゴキブリDB」ですから、ネーミングのセンスが常に逸脱気味な二人なのかもしれません。

GIMP の FAQ に「名前を変えてほしい」に対する公式回答が載っています。20年以上の歴史で、嫌になるほど問題提起されてきたんでしょうね。そして、それで改名されてないので、このままずっと GIMP は GIMP で行くのでしょう。

今後、GIMP(ツール)について人に説明する時に一緒に紹介できるような、できないような、名前の由来トリビアでした。

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データ可視化

ギレンホール実験 – 有名人のミススペルの傾向を分析

ギレンホール実験(Gyllenhaal experiment)は、スペルが難しい有名人の一人である俳優のジェイク・ギレンホール氏の名前を冠した、面白い調査結果です。

著者のラッセル・ゴールデンバーグ氏(Russell Goldenberg)とマット・ダニエルズ氏(Matt Daniels)はまず、2011年頃にグーグルが公開した、「ブリトニー・スピアーズのグーグル検索60万回のデータ」から、人々がどのように彼女のファーストネームを間違えているかを可視化します。

7文字ですが、正しく入力できた人の割合は8割強。2割弱の人はスペルを間違っているということです。

このようなスペルが怪しい可能性のある有名人を、巨大掲示板 reddit の書き込みデータから (sp?) = 「スペル違うかも」と添えられた単語を探すことで特定するという手法が最近提案されていて、それらを参考にした「よくスペルを間違えられている有名人」の名前クイズを遊ぶことができます。

ホームラン記録で日本でも有名になったマーク・マグワイヤ氏のスペルをうろ覚えで入れてみたのがこちら。

最大8種類の「正解」および「よくある間違い」、そして、”Your Path”として、自分が入れたものも表示されます。

クイズで出てくるその他の難しいスペルの有名人としては、マシュー・「マコノヒー」、スカーレット・「ヨハンセン」
、「マコーレ」・カルキン、コリン・「キャパニック」らが挙げられています。

中には、正解率が2割を切っているものや、正しい綴りよりも多くの人が答えている間違っている綴り、なんていうものもあります。

これらのデータは、JSON形式でこちらからダウンロードすることもできます。

名前のスペルについては、間違われようが気にしない、というか実害もそれほど無いかもしれませんが、大量のデータの間違いを分析することで面白い結果が取れるというのはいろいろ他にも実験できそうですね。

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ネットのマーケティング

1HappyBirthday.com – 3万曲以上の名前入り誕生日ソングを無料公開するサイト

グレッグ・メイさん(Greg May)が2006年に開始したプロジェクト 1HappyBirthday.com は、彼自身が作った誕生日を祝う複数のオリジナル曲「ハッピーバースデー」に様々な名前を入れて公開し続けるというものです。

1happybirthday-com-top

有名なあの「ハッピーバースデー」ではなく、オリジナル曲です。やたらと「ハッピー・バースデー」と呼びかける名前の回数が多いことの他に、一か所スペイン語の「誕生日おめでとう」(Feliz cumpleaños)が入っていることと、彼の犬シナモンの鳴き声が入っていることが特徴です。

25000種類の違う名前を入れ込んだ25000曲

YouTubeの1HappyBirthdayチャンネルに登録されている、パーソナライズされたハッピーバースデーの動画は現時点で31,313本あるそうです。パティに対するPatty, Paty, Pattiのような、同じ発音の名前の字幕違いはそれぞれ動画が作られているそうなので、そのような重複を除いた純粋な曲の数はその8割ぐらい、ということですが、それでも25000曲あることになります。

2006年にこのプロジェクトを始めたメイさんは、ロス・アンゼルスのスタジオを借り、プロの歌手を雇って、よくある名前400個について録音を開始。当初は「コカコーラとかペプシとかが、グローバルなスポンサーになってくれてビジネスになるのでは」と思っていたそうです。

しかしそのようなことは起こらず、それでも名前を増やしてはレコーディングの注文を続け、今では年間に4000曲、4000の新しい名前を入れた歌をリリースしているということです。一曲の録音に6ドル(660円)支払っている、ということなので、25000曲で15万ドル(1650万円)の出費となりますね。

日本人の名前も

民族で絞り込む方法がなかったのでいくつか適当に検索してみただけですが、日本名と思われるものもありました。

ハルミ・チョコレート

ヨーコ誕生歌パラヤビーチ

トシ バースデーケーキパステル

FAQには「ドイツ語やフランス語は発音が難しいものが多い、中国・韓国は名前の種類が多すぎる」と書いてあります。

日本人も名前の種類は多いのでどれぐらいカバーされているかわかりませんが、自分の名前がないか、サイトの検索フォームで(ローマ字で)検索してみてはどうでしょうか。

自分の名前の録音がない場合、サイトからリクエストすることもできますが、リクエストも大量に来ているということでいつ録音されるかはわからないようです。また、録音されることになっても、どう発音するかについてスカイプ等を使って伝える必要があります。

ビジネスモデル

サイトは無料で公開されています。著作権は放棄されていませんが、私的利用は問題ないし、1happybirthday.comへのリンクをつければ自分のサイトで一曲使っても構わないということ。

サイトでは、指定の日の早朝1時にメールでその相手の名前入りの曲を送るようなサービスもあります。これも無料

「自分の名前の曲のCDが欲しいんですが?」という質問には、「mp3でダウンロードして自分でCDに焼きなよ」と答えるなど、商売っ気が無さすぎて心配になります。

英語サイトとスペイン語サイトがあり、毎月400万人の人が曲を聴きに来るそうですが、Google AdSenseの広告では運営費は全然まかなえていないということ。

「何をもって成功とするか」という質問に対しては、「いつか、レストランやラジオやどこかで、この歌で誕生日を祝うのを耳にできたら、それが成功だ」ということ。

15万ドル(1650万円)以上のお金とそれ以外のリソースもつぎ込まれていますが、今みんなが歌っているいわゆる「ハッピーバースデーの歌」と同じように広まって歌われるようになったりすれば、そのうちに大きなリターンとなる可能性もあるのかもしれませんね。

via The Verge