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Stack Overflowがネット環境の無い所でも回答群にアクセスできるオフライン利用プロジェクトを発表

英語圏のプログラミングQ&Aサイト大手 Stack Overflow の発表した Overflow Offline プロジェクトは、プログラミングの疑問が出た時に検索でお世話になることの多い Stack Overflow やその姉妹サイト群の回答情報をダンプしたデータを、インターネットが使えなかったり貧弱な地域でアクセスできるようにしようというものです。

少し前ならネット接続はもっと手に入れにくいもので、たとえば Wikipedia なんかもデータがまとめてダンプできるため、PCやスマートフォンにダウンロードしてオフラインで検索できるアプリには需要があり、なんなら Wikipedia のデータだけを持ち歩ける専用デバイスも存在しました。

しかし、今ならどこのお店でもWi-Fiが提供されているし、携帯電話ネットワークの通信も安価にアクセスできるように思います。そんな今でもオフラインのアクセスが必要なのはどういう状況なんでしょうか?

リリースの中で取り上げられている事例の一つは刑務所。少年刑務所でプログラミングを学んだ後に出所して企業のCTO になったある女性は、友人に四半期ごとにStack Overflow のサイトをダンプしたデータを差し入れてもらってプログラミングを覚えたということ。

このような事例もあったことから、ネットのコンテンツをダウンロードしてアクセスすることを支援している団体Kiwixと連携し、より使いやすい形で Stack Overflow が支援した形でオフラインアクセスができるようにしようというのが今回の話だそう。

また、南極基地で Python + Puppet を使っているプログラマ、インターネット普及率34%のカメルーンで安定した無料Wi-Fi を提供することが難しい大学、などの事例も紹介されています。

そうは言っても、初級の言語入門ならともかく、あるいは初級レベルであっても、現代のプログラミングはパッケージマネージャで提供されるライブラリ群の利用が必須に近い状況で、オフラインでプログラミング学習をするのは実際には大変なのかなと思います。

主要パッケージもThe Overflow Offline プロジェクトのようにオフラインで持ち込めるようにすればいいのかもしれませんが、依存に応じて無数の細かいバージョン違いのパッケージが必要となったり、必要な修正がされたバージョンが手に入らなかったりもしそうです。Q&Aサイトのデータだけでなく、オフラインでプログラミング学習をしてもらおうとするとこのへんにも仕組みが必要なのかなとも思いますね。

via Hacker News

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ネットのマーケティング

「リア充爆発した」オーストラリアのビデオ Set Yourself Free を作ったのはNPOではないかも

おととい紹介したショッキングな啓蒙ビデオ Set Yourself Free、YouTube 上での自身の説明から西オーストラリアの生涯学習NPO の手によるもの、ということでした。

[閲覧注意: ショッキングな内容を含んでいます]

一昨日の時点ではYouTube上で340万回の再生でしたが、現在は800万回を越えています。動画の後半は論議を呼ぶ内容でしたが、YouTube 上の投票では好意的な投票が42,000票、嫌いだという投票が4,500票と、ブラックジョークとして受け入れている人の方が多いようです。

しかし、Slate の記事ではこの NPO の実在を疑っています。別の目的で作られた動画が、NPOの啓発動画のフリをしている可能性を指摘しています。

このNPO団体 Learn for Life には連絡先情報が載っていません。今回の動画を紹介している箇所で製作元として紹介されている ヘンリー&アーロン (Henry & Aaron) は、広告動画の制作ユニットではありますが、このユニットの二人がコメディアンでもあることから、このNPOは作り物ではないかという意見が出ているようです。

Slate がユニットの一人であるアーロンさんに問い合わせたところ、動画”Set Yourself Free”がイタズラかどうかは回答を避けたものの、「財団の実在についてはみなさんの解釈におまかせします。このインターネット時代に悪巧みを隠し通すのは難しいものです」とコメントしたということ。

Slateはしかし、広告賞も受賞した「自殺を止めよう」というテーマで、次々とカワイイキャラクターが頭の悪い死に方をするという、同じオーストラリアの地下鉄の動画キャンペーン(こちらは本当に地下鉄の啓蒙ビデオで、YouTubeで7000万回以上再生されています)を引き合いに出して、

gallows humour (絞首台ユーモア = ブラックユーモア)はオーストラリアの人たちにメッセージを伝える力があるようだ、と締めています。

Slate がしたように制作会社のバックグラウンドまで確認せず、YouTube上の自己申告をそのまま受けて「NPOの手による」と紹介してしまったことについては申し訳ありませんでした。また、800万回再生の人気の中には「NPOが作ってこれかよ」という突っ込みで広まった部分もあると思います。(嘘だと100%確定してはいませんが、)最初からコメディ動画として出ていたら、ここまでの話題にはならなかったのではと思います。

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ネットの事件

フェイスブックCOOシェリル・サンドバーグ氏の女性キャリア支援NPOが無給のインターンを募集して炎上中

FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグ氏は、おそらく今のネット業界で最も成功し、力のある女性でしょう。

女性がもっと社会や企業の上位に進出すべきだ、という主張を書いたLean Inは、今年の3月に発売され、ベストセラーとなっています。3ヶ月遅れで日本語にも翻訳され、こちらもベストセラー化しているようです。

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲
LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲

サンドバーグ氏は、その本と同名のNPO団体 LeanIn.org を立ち上げ、キャリアを追求する女性を支援する活動を率いていました。

その NPO LeanIn.org の総合編集者ジェシカ・ベネット氏がフェイスブックページでインターンの募集をかけたのが14日。

Wanted: Lean In editorial intern, to work with our editor (me) in New York. Part-time, unpaid, must be HIGHLY organized with editorial and social chops and able to commit to a regular schedule through end of year. Design and web skills a plus! HIT ME UP. Start date ASAP.

募集: ニューヨークで私と一緒に LeanIn で働く編集インターン。パートタイムで無給。編集とソーシャルな観察に優れ、年末までスケジュール通りに働けることが必要。デザインとウェブの技術があればなお良し! 連絡ください。今すぐでも開始

女性の地位向上を目的に立ち上がった組織が、若い女性をタダでこき使おうとしているように見えますね。Facebookのコメント欄ではすぐに疑問の声が上がり、すぐに英語圏のネット中に義憤あふれる声が広まっていきました。「これは誰に対してであっても恥知らずな搾取だ。まして女性相手ならなおさらのこと」。今日は多数のブログがこれを取り上げました。

サンドバーグ氏がフェイスブック株9100万ドル(100億1000万円)を売却し、大金を手にしていたニュースが先週流れたばかりだったのも印象が悪かったようです。自分の力で稼いだ株を現金化しただけで、それ自体は責められるものではないでしょうが、それだけ稼いだ人が「女性はもっと積極的になるべき」と本を書き、そのための団体を組織したのに、口は出しても資金援助はしていないのか、と突っ込まれました。

LeanIn総合編集のベネット氏は「これは私の『個人的な』投稿で、ニューヨークで『私を』補佐するボランティアを募集しただけです。多くのNPO団体が無料のボランティアを受け入れています」と追加のコメントを出しましたが、これには「うちもNPOだけどインターンには州の最低賃金以上を払ってます」とか「無給のインターンなら定期的に出社することを強制したりはしません」などの反論が。

VentureBeatによれば、アメリカでは若年層の失業率が16.2%に達し、30%に近い大学生が無給のインターンシップを経験しているという数字もあるそうです。職につくのが大変なことから、無報酬であってもその後のキャリアに繋がるかもしれないと考えて応募するそうなのですが、それを悪用し、単なる無償の労働力としてこき使う企業もあるのだとか。

著書での意見や団体の目的を考えれば、やはりこの無償インターン募集は迂闊だったように思いますね。

# ここまでの騒ぎをサンドバーグ氏が黙殺できるとは思えないので、何か反応が出たらまた書きたいと思います。

via Internet pitchforks come out for LeanIn.org as it attempts to hire unpaid intern | VentureBeat