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2007年12月12日
Alexa(アレクサ)は操作できる - MarkeZine併載コラム
MarkeZine併載コラム 第九回
今回はいよいよAlexaの操作方法指南の回となった。これまでの連載を読み込んでいる方にはすでに明らかな気もするけれど、具体的にどんなことをすると統計データを変えてしまえるか、という点をまとめてみた。
このシリーズは、マーケジンの連載との併載になっている。
前回は、アレクサの統計データが異常値を示す代表的な例をいくつかご説明しました。
アレクサがおかしくなる原因がわかったということは、逆に、原因となった行動を自ら起こすことでアレクサのデータを変更することも可能だ、ということです。
アレクサの数値は、そもそも操作できる
まずこれを知っておくことは大前提です。第5回、第6回でご紹介したように、アレクサの統計データはアレクサから配布されているツールバーからの情報をサーバに集約して作成されています。
何年か前に、テレビの視聴率に関する不正が発覚したニュースがあったのを覚えていますか? テレビ局側のスタッフが、視聴率をリサーチする会社のモニター(パネル)家庭を尾行で探し出し、買収することで自分の番組の視聴率を上げようとした事件です。
モニターが自由公募であることの弱点
アレクサの場合、モニターはツールバーを入れたユーザだとわかっているわけですから、このテレビ視聴率の事件よりもずっと簡単に操作ができてしまいます。既存のモニター(ツールバーユーザ)を買収することもできますし、そもそもツールバーは無料で誰でもインストールできるのですから、買収なんかしなくても、自分の影響が及ぶユーザに対してどんどんツールバーのインストールをお願いすればいいのです。
1. サイト運営者自身が、アレクサツールバーを関係者やヘビーユーザに薦める
一般のサイトでは、1万人に一人がアレクサツールバーを入れているとします。ちょっと乱暴な簡略化ですけど、月に1万人がサイトに訪問すれば、そのうち一人のアクセスがアレクサにカウントされるでしょう。
しかし、サイトの持ち主がアレクサツールバーの紹介をして、アレクサツールバーのインストールを呼びかけるなどして、そのサイトのユーザの1000人に一人がツールバーを入れていたらどうでしょう?
一般のサイトに比べて、アレクサの統計データに出てくる数値に10倍大きな影響を与えることでしょう。そして、そのユーザは元々そのサイトの読者だったのですから、継続的にそのサイトを訪れる可能性が高く、結果的にそのサイトの統計が実力よりも大きく出てしまいます。
前回ご紹介した、Matt Cutts氏のブログの例はまさにこれですね。あの例ではMatt Cutts氏がAlexa Toolbarのインストールを薦めたわけではありませんが、逆にブログ等でアレクサ・ツールバーのインストールを何度も推薦することで、アレクサのランキングを本来の実力よりも上げてしまうことは可能です。
また、Alexaのウィジェットを貼ると順位があがる、という噂も流れていますが、これは貼ることが直接順位を上げるわけではなく、ウィジェットを見て、ウィジェットからAlexaのサイトに行き、ツールバーをインストールする人が出るからでしょう。自分のサイトの固定ファンにAlexaツールバーを入れさせるという意味では、比較的消極的な方法ですが現象は同じです。
2. ページをたくさん見せるサイト構成にする
これは必ずしもわざとでなくても起こりますので、意図的な操作とは限りませんが、ユーザが見るページ数を増やすことで、アレクサのデータは上向きになります。
たとえば、一つの話を2つのページに分割して、前半ページの終わりに「続きを読む」のような後半ページへのリンクを入れれば、トータルのアクセス数は倍近くになります(次のページに行かずに立ち去るユーザもいるとは思いますが)。
ポップアップを多用して、サイトのどこかをクリックするたびに説明が別ウィンドウで出るような構成も同じです。今ウェブサイトを設計するのであれば、そのような短文はJavascriptなどを使って画面切り替えを起こさずに表示させたりするのが主流だと思いますが、それではアレクサ・ツールバーが別のページを見たとはカウントしてくれません。
このような変更は、ユーザに取っては使いにくく読みにくいことが多いと思います。しかし、サイト運営者の目的がユーザ中心でなければ、アレクサの統計等のためにわざとこういう設計をすることもあるのかもしれません。
3. ページを転送する
HTML中のmeta refresh指定などで、ページの移転先にユーザを誘導することができますね。アレクサ・ツールバーは、移転前と移転後の両方のURLを収集しています。
サイトの内部で、意味無くこのようなページ転送を、閲覧者には気づかれにくいような短い時間で何度も行なえば、見た目一ページしか見えていなくても、アレクサからは全部のページを開いて閲覧したように見えているかもしれません。
アレクサ側でのデータの処理がわからないので、あまりに短時間での多数のアクセスをプログラムで排除するなどしている可能性もあります。しかし、全般的にアレクサ側のそのような誤集計への対処は手薄なようにも見えます。
4. ツール等で特定のページを何度も開かせたりする
ここまでくると、「他にそうすべき理由があった」という言い訳はできませんね。完全にアレクサの仕組みの裏をかこうという行為ですが、アレクサの仕組みがわかっていれば思いついても不思議ではありません。
マウス操作やキーボード操作を記録して再生するようなツールは、フリーのものも含めてたくさんあります。
そのようなツールを使えば、たとえば、10分おきにアレクサ・ツールバー入りのブラウザを開いて、ターゲットのページを開いてはブラウザを閉じる、といった作業を、24時間ずっとさせておくこともできるでしょう。
操作の程度にもよると思いますが、それがプログラムによる自動操作なのか、それともそのサイトに非常に熱心なファンがいるのか、という区別をするような処理は、おそらくアレクサの集計には組み込まれていないでしょう。
5. アレクサに偽の訪問情報を送る
何もマウスやブラウザの操作を模倣しなくても、ツールバーがアレクサに送信している情報さえ真似できれば、アレクサ側からはそれが本物のブラウザなのか、騙すためのプログラムなのかの区別はつけられません。
ツールバーが送るのと同じリクエストを送るようなプログラムを書けば、ブラウザを開くまでもなく、任意のドメインのアクセス数が増えたように見せかけることが可能でしょう。技術的には難易度は高くありません。
「アレクサの順位を上げるツール」などとして売られているものがあるようですが、それらのツールも内部的にはこういった動作をするプログラムでしょう。
ランキング操作の実例
ベンチャーキャピタリストにして有名ブロガーのジェイソン・カラカニス氏は、アレクサについては批判的なブログを良く書いています。彼はかって、自分のブログの読者にたいして、アレクサのデータを狂わせることで、アレクサの使えなさを証明しよう、と呼びかけたことがあります。
「ツールバーをインストールしていない人はインストールして、僕のブログを何度もリロードしてほしい」という呼びかけに対し、何人の読者が賛同し、実際にツールバーをインストールして何ページ閲覧したのか、といった正確な数値を知る手段はありませんが、後日わかったその前後のブログのアレクサによるトラフィックグラフは次のようなものでした。
この呼びかけ実験は2006年11月に行なわれたものですが、その時期に通常の変動を超えた大きな上昇があるのは確かなようです。
まとめ
アレクサの統計データは、ある程度は狙って操作することができる情報です、というのが今回の内容でした。
自分か、競合相手か、あるいは第三者か、その統計データに感心がある立場の者ならだれでも、アレクサのデータを不正な状態に細工することができます。
ですから、アレクサの統計データを何か他のデータの補足資料にする程度なら問題はありませんが、アレクサの順位やトラフィックデータ自身を、サイト運営や集客の目標にすることはたいへん危険なことで
す。
特に、ウェブマーケティングの担当者や発注先の外部企業に対して、アレクサのランキングを達成目標や成果報酬のバロメーターとして設定することは、今回説明したような不正行為を誘発するものとなるでしょう。
特にあからさまな手法に注意
アレクサの統計データは目標とすべきではありませんが、継続性などからどうしても外せないというのであれば、少なくとも以下のような行為が行なわれていないかは確認しましょう。
- ウェブサイトでアレクサの紹介をする
- アレクサ・ツールバーのインストールを訪問者にすすめる(アレクサのウィジェット/ブログパーツを貼るなど)
- 社内や協力会社の一般社員にアレクサのツールバーをインストールさせようとする
- ウェブサイトのページを無意味に複数ページに分割させようとする
- ポップアップやポップアンダーの多用を勧める
次回の予定
次回は、アレクサと同様にウェブサイトのトラフィックを測定する競合他社について解説します。
投稿者 秋元 : 2007年12月12日 09:52
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