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2008年01月23日

Alexa(アレクサ)以外の選択肢

MarkeZine併載コラム 第十回

アレクサ解説の第十回は、アレクサの競合サービスにどんなものがあるかについて。

このシリーズは、マーケジンの連載との併載になっている。


アレクサの代わりになるサービスはあるのか?

第7回第8回では、アレクサ自身が語ることの無い、アレクサのデータの問題点やデータが操作される危険性についてお話してきました。また、第9回では、実際にアレクサのデータを操作できる様々な手法も紹介しました。

そんなにアレクサのデータに問題があるのであれば、なぜたくさんの人がアレクサの情報を参照しているのでしょうか。もっと世の中によいサービスは無いのでしょうか? 今回はアレクサの競合と言われるサービスについて紹介していきたいと思います。

  • Nielsen//NetRatings(ニールセン/ネットレイティングス)
  • ComScore(コムスコア)
  • Hitwise(ヒットワイズ)
  • Compete(コンピート)
  • Quantcast(クワントキャスト)
  • Ranking.com(ランキング・コム)
  • PathTraq(パストラック)

Nielsen//NetRatings(ニールセン/ネットレイティングス)

Nielsen//NetRatingsは、テレビ視聴率データの提供で有名なニールセンの、インターネット部門を担当するNielsen Online社が提供するインターネットトラフィック統計です。1997年に設立され、1999年からデータ提供を行なっています。

アレクサのように好きなドメインに対して簡単な統計データを得ることはできず、有料でレポートを購入することで、自社ウェブサイトと競合他社とのトラフィック遷移の比較などができます。

nielsen-netratings.png
Nielsen//NetRatingsのトップページ

データの収集元は大きく二種類に分けられ、新聞社が世論調査で行なうときのようなランダムな抽選によるパネル選出(RDD)が一つ、もう一つは、懸賞つきネット広告などによって募集されています(*)。テレビの視聴率と同様、パネルの詳細(正確な人数や構成)については明かされていません。

日本法人としてネットレイティングス株式会社があり(1999年設立)、日本でのトラフィック統計のランキングや動向をよく発表しています。日本の新聞等のメディアで日本のウェブサイトの利用状況に言及する際に引用されることが多いデータではないかと思います。

netratings-news-sample.png
ネットレイティングス社発表を元にしたニュースの例

(*) Nielsen//NetRatingのパネル応募ページ

ComScore

ComScoreは、アクセス状況をComScoreのサーバに送るフリーウェアを配布することでパネルを確保しています。

ComScoreも昨年(2007年6月)、日本法人コムスコア・ジャパン設立しました

comscore.png
ComScoreのトップページ

しかし、コムスコアが2007年9月に発表した日本の検索エンジンシェアについてのレポートでは、2006年9月から2007年9月の一年間でヤフーのシェアが30%近く下落したり、ヤフーとグーグル以外の検索エンジンのシェアが10%以上上昇したり、など、日本での統計データに対して実感とは離れた、疑問を抱かせるような数値が出ています。

このリリースは数値の出方が極端だったこともあっていろいろなメディアで取り上げられましたが、日本のデータについては今後の改善が行われるかを見る必要があるのではと筆者は感じています。ComScoreの「便利なツール」が日本語版で流通していないため、そもそも現状で日本のデータが正しく集まっているのかという話もあります。

参考: 検索シェア縮まる! GoogleがYahoo!を超える日

Hitwise(ヒットワイズ)

Hitwiseは、インターネットへの接続業者(ISP)側からデータを集めることで利用者の統計を集めているサービスです。

hitwise.png
Hitwiseのトップページ

会社紹介によれば、米国で1000万人、世界では2500万人のネットユーザの情報を解析し、検索キーワードや訪問したサイト、サイトからサイトへの移動などを追跡しています。

提供しているデータは英語圏中心で、サイトではアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、香港、シンガポールのデータの案内があります。

Compete(コンピート)

Competeは米国のみを対象にしたトラフィック統計提供サービスです。Competeは2006年の11月にサービスを開始しました。

200万人のパネルの情報をISPやASP(アプリケーションサービス提供者)、Competeツールバーなどから収集しています。Mac, Linux, Firefox, Safariユーザにも対応しています。

compete.png
Competeの検索ページ

Competeでは、無料でウェブサイトから統計データを参照できます。年齢、収入、性別、米国内の地域などによってデータを詳細化できるところが、アレクサにはない機能です。統計の時間的な粒度は、アレクサの日別に対し、月別となっています。

後発であることやデータの収集先も多いことから、米国の事情を測定する役には立ちそうですが、そもそもサービス提供外ですので日本では使えないでしょう。

参考: Guy KawasakiによるCompete創業者Stephen DiMarcoへのインタビュー

Quantcast(クワントキャスト)

Quantcastも、アレクサの代替を狙って開始されたサービスです。

quantcast.png
Quantcastの検索ページ

元々はパネル方式でトラフィックデータを収集していたのに加えて、Javascript埋め込みによるアクセス解析サービスを追加してデータを集めています。

AlexaやCompeteと同様に、統計データは無料でサイトからアクセスできます。性別・年齢・人種・収入などの分布もわかります。

広告主に対して、あるサイトと似た読者層のサイトを列挙して見せるサービスを持っていて、データ提供サイトは優先的に広告主とマッチングさせるということも行っています。また、あるサイトの読者とブランド(航空会社など)との相関を出したりもしていて、これも広告出稿の選定時には役立ちそうです。

対象は米国限定。

参考: Quantcastによるネット視聴率データの無料開放

Ranking.com(ランキング・コム)

Ranking.comでは、ブラウザのアクセスを高速化したり、サイトの信頼度を独自の数値(TrustGauge)で表すという機能を持つIEツールバーを無料で配り、そこからユーザアクセスを収集して集計しています。

ranking.com.png
Ranking.comの検索結果ページ

PathTraq(パストラック)

筆者の所属するサイボウズ・ラボが8月に公開したPathtraq(パストラック)については、リリース直後の第6回でも少し紹介いたしました。

Pathtraq(パストラック)は、希望者のブラウザに閲覧ページのアドレスを提供するためのプラグインをインストールしてもらうことで、参加者から集めた訪問ページの統計を取るサービスです。
アレクサがドメイン毎のデータを取るサービスであるのに対して、ページ毎のアクセス情報が集計される点に特徴があります。

pathtraq-screenshot.png
Pathtraq検索結果ページ

今のところ、パストラックは日本語で提供されている日本語圏を対象としたサービスです。よって、アレクサや今回紹介した他のサービスと比べて、日本の中でのウェブページのアクセスデータをより正しく取れる点が利点となります。(ただしパネルの構成は今後も改善が必要でしょう)

データ提供者のプライバシーに配慮し、アクセスしたURLのみを(暗号化されたページや参加者が除外指定したページは除いて)集め、統計を取ったら個々のデータはすぐに廃棄していく仕組みとなっていることが、ある意味弱点とも言えます。

ネットレイティングスのような、パネルの許可を得てネットに関するあらゆる活動を収集しているサービスと比べると、個人のブラウズ活動をずっと追っていくようなことはできません。このあたりは多数の一般ユーザの参加を前提とした仕組み上、プライバシーと機能のバランスの取り方としては妥当なところではないかと思います。

Google Toolbar/Analytics/AdSense

統計を取っているかどうかも確認されたわけではありませんが、検索エンジンのGoogleもユーザのアクセス情報を集計できる能力を十分に持っています。

具体的には、Google Toolbarがページランクを表示する際にGoogleに送る閲覧中のページや、Google Analyticsを利用してアクセス解析をしている多くのウェブサイトの情報、いろいろなサイトに貼られたGoogle AdSense広告やGoogleウィジェットの表示時にわかるクライアント情報とサイトの対応、などです。

Googleが内部的にこれらのデータを総合してウェブのトラフィックを集計していても驚きませんし、どこかで上記の各社のような統計データの提供ビジネスに参加することも可能でしょう。

まとめ

筆者は、ウェブのいろいろな進化に比べると、アレクサの改善速度が追いついていないようには感じています。アマゾンが、アレクサのデータ提供を収益にうまく変える方法を思いつけていないのも力を入れられない理由ではないでしょうか。

しかし、ブラウザの中に組み込まれていた歴史や、その知名度、(実数はわかりませんが)アレクサ・ツールバーの普及度の高さを見ると、アレクサが先行した分を他の競合サービスが追いつくのはなかなか簡単ではありません。

以前に比べるとアレクサの問題点や限界も少しずつ認識されてきているようです。ブログなどでアレクサのデータやグラフを誤った解釈で紹介すると、コメントや他のブログでの反論が見られるようになってきました。

アレクサを他の○○に置き換えても問題は解決しない

しかし、そのようなアレクサの限界を見たライターやブロガーの中には、単にアレクサを使っていたところをComScoreやCompeteのデータやグラフに置き換えて、それでよし、としている人も少なくありません。

ウェブの仕組み上、ComScoreやCompeteなど他の競合サービスが、アレクサの持っている問題からまったく自由であることはできません。

ウェブの本質がブラウザとサーバの間の独立したバラバラのアクセスであり、昔のパソコン通信のような、どこかひとつの中央サーバで管理された仕組みではない以上、すべての正確なアクセスを正確に収集・記録・分析することは不可能だと断言できます。

そういう意味で、単にアレクサを使わずもっとマイナーなサービスのデータを使うというだけであれば、何も問題は解決していないどころか、参加ユーザが少ないためにより恣意的な他ユーザの操作に踊らされる危険も高まるかもしれません。

一つの指標に頼らないこと

ウェブの本質を理解せずに、どこか一社が提供している指標でもって、広告やSEOの成果測定をおこなったり、広告料金の算定に使ったりする無知が、不正の温床となります。

複数のサービスの値を見て比較することで、ある特定のサービスで急な変化があったときに、それが確からしいのか、何か操作が行われているのか、を知ることができるかもしれません。

そういう意味では、アレクサ以外のサービスが多数出てきて使えるようになったのはよいことでしょう。

投稿者 秋元 : 2008年01月23日 11:30

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