2008年07月03日

単語になるドメイン名を探せる Domain Hacks

[Markezine併催コラム]


タイトル: 単語になるドメイン名を探せる Domain Hacks
サブタイトル: 社名やサービス名のドメインが取れなかったときに試すサービス

del.icio.usという英語圏の人気サービスがあります。日本で言うとYahoo!ブックマークやはてなブックマークに対応する、ソーシャルブックマークの代表的なサービスです。

del.icio.us-tld.PNG
del.icio.usのドメイン名のトップレベルドメインは"us"

今でこそみんなこの".us"で終わるドメイン名に慣れていますが、サービスの登場時には".us"って何だ、どこだ? というような話をウェブで良く見かけたものです。

".us"というのは、アメリカ(USA)の国別ドメインなのですが、ご存知のとおりアメリカはインターネット発祥の地で、.comや.net、.eduや.govといった国名の入ってないトップレベルドメイン(TLD)はみんな「基本的にアメリカ」だと思っているので、わざわざ".us"ドメインを取得して使っている会社やサービスは多くありません。

"us"というあまり使われていない、つまり沢山空いているTLDを知っていたことと、英単語の中に"us"で終わるものがあるということの二つに気づいたdel.icio.usの人が、この二つの知識を組み合わせることで、「英単語そのままで覚えやすいドメインがなかなか取れない」という障害に対する素晴らしい回答を見つけた例だといえます。

今回は、".com"や".jp"だけがTLDではない、という考えで、世界中のいろいろなTLDを使って、覚えやすいドメインを作るにはどうするか、を支援するツールサービスをご紹介します。

Domain Hacks(ドメインハックス)

このDomain Hacksというサービスは、ある単語を入力すると、その単語を過不足なく使ったドメイン名を、世界中の国や地域のトップレベルドメインを駆使して提案してくれるというサービスです。

僕のブログでは2005年の10月に紹介していますが、その後もいろいろなところで紹介されていて、活用されているようです。

domain-hacks-top.png
Domain Hacksのトップページ

例として、"akimoto"という単語を入れてみましょう。

すると、".to"というトンガのドメインを使った akimo.to という提案をしてくれます。

domain-hacks-akimoto-results.png
akimoto"という単語になるドメイン名の組み合わせ

他にも、サブディレクトリ名と組み合わせることで http://aki.mo/to/ (マカオのドメイン)などのドメインも提案してくれます。

ここの検索結果では、そのドメインが空いているかどうかまでは教えてくれませんが、ドメインの登録情報を調べるWhoisサービスへのリンクや、それぞれの国のドメイン管理者の情報などへのリンクが表示されるので、それを辿って、実際にそのドメインが空いているか、ドメインを取るにはどこへいけばいいか、という情報を調べることができます。

このサービスは、人力で調べるとたいへんな時間がかかりそうな作業を、プログラムの力を使って簡単に提供した、という点ですばらしいですね。ドメイン名以外に似たような問題があるかどうかはちょっと思いつきませんが、もしそういう問題があったら、このような視点の変更や語呂合わせをサポートするツールを提供することで今まで売れなかったものを売り込んだりできるのではないでしょうか。

deliciousドメインの顛末

さて、トップレベルドメインをうまく活用したdel.icio.usですが、その後サービスの大成功を受けてYahoo!に買収されます。また、最初は入手することができなかった"delicious.com"も、強化された資本の力で手に入れてしまいました。

そうなれば、"delicious.com"のほうが覚えやすいし、ブラウザによっては".com"を入れなくてもアクセスできるので切り替えてもいいように思うのですが、ユーザがあまりに"del.icio.us"という変な表記の方に慣れたせいか、わざわざ

delicious.com → del.icio.us

の転送を行なっています。面白いですね。

投稿者 秋元 : 10:31 | トラックバック

2008年05月23日

飛行機のいい座席を調べるサービスSeatGuru

Markezine併催コラム

2年前にブログで書いたものですけど、今でも検索経由で人気のあり見に来る人が多いのが、「飛行機の座席、どこがいい?」です。

SeatGuru(シートグル)

そこで紹介したSeatGuru(シートは座席、グルは導師といった意味です)は、世界の主要な航空会社の飛行機について、座席の情報を網羅的にまとめて提供するというサービスです。

seatguru.png

左側のメニューで、ABC順に航空会社が並んでいるので、そこから例えば"All Nippon(ANA)"をクリックすると、

seatguru-menu-ana.png

ANAの3つの飛行機の座席表が出てきます。

特徴のある座席には、緑、黄色、赤などの色がついています。それらの座席にマウスカーソルをあわせると、その席の利点や欠点が、さらに文章(英語ですが)で解説されるのです。

座席のお得な点(緑色)には、たとえば、前が空いていて足が伸ばせる、とか、横に2席だけなのでカップルに最適、といったものなどがあります。

座席の難点(赤や黄色)には、たとえば、背もたれが倒れない席だ、とか、調理場やトイレが近くてうるさい席だ、といったものや、「この席は飛行中の揺れが大きい」といったものまであります。

このような情報を押さえていれば、席が選べるような状況で、「通路側か窓側か」という以上に、同じエコノミー席でもより快適な席をリクエストしたりすることもできるでしょう。

seatguru-ana-economy.png

競合サービス

2年前の記事では、LoveMySeatという同種のライバルサービスもご紹介していたのですけど、そちらのサイトにアクセスしようとすると、SeatGuruに転送されてしまいます。

少し調べてみると、LoveMySeatがSeatGuruからデータの無断盗用で訴えられた、という情報が出てきました。結果的にはLoveMySeatは無くなり、そのドメインもSeatGuruのものとなっているようです。

この裁判の結果がどうなったのかまでは追跡できなかったのですが、データが命のこのようなサービスでは、データをどう集めるかについては問題にならないようにデータの権利をはっきりさせるようしないといけないでしょう。

アイデアの応用

このサービスの応用の一つは、日本の国内線や日本発着便を中心に、日本語で同種の情報を提供したり、SeatGuruと提携して日本語ページを作ったりすることでしょう。

また、同じ座席という範疇では、鉄道や船の座席や寝台・個室などの情報を同様に集めるデータベースサイトというのも考えられるでしょう。コンサートホールや映画館、スポーツ会場の座席についても応用が利くかもしれませんね。

同じ価格・グレードの座席であれば同じ質です、というのが販売側の建前ですから、販売者・主催者のウェブサイトでそこまでの情報を提供することはできないはずです。

サイトに来た訪問者が、その情報で「少し得できる」ような情報を提供できたなら、ウェブサイトの集客のためのよいプロモーションになることでしょう。公式に提供されている情報に、公式には提供できないであろうどのような情報を足すことができるか、というのを考えてみてはどうでしょうか。

投稿者 秋元 : 12:05 | トラックバック

2008年04月25日

[MarkeZine併載コラム] かっこいい・それっぽい英語名を考えるためのサービス Dislexiconなど

Markezine併載コラム


第二回は、2005年8月にクールな名前生成サービスでご紹介した「名前ジェネレータ」というカテゴリのサービスを調べてみました。

訪問者に名前・生年月日・文章・ブログのアドレスや顔写真などを入力してもらい、それを基にした別の情報を提供するようなネットサービスは、英語では"generator"(ジェネレータ、生成するもの)というカテゴリやタグで分類されることが多いです。

ユーザの役に立つ情報を提供するものは古くからいろいろとありますが、製品のプロモーションや広告収入を目的とした暇つぶし系のサービスでは、ジョークとして提供されるものもここ数年は増えていますね。

Dislexicon(ディスレキシコン)

このDislexiconというサービスは、ある単語を入力すると、その単語の前後に英単語の構成要素をつけくわえて、会社名やサービス名に使えそうな新語を提案してくれるというサービスです。

dislexicon.png

たとえば、"marketing"という単語を入れて、マーケティングという単語を含んだ英語っぽい複合語を3つ作らせたところ、以下のような結果が出てきました。

新語音節意味
マーケティンジブルmarketing-ibleマーケティングする能力に長ける
モーフマーケティングmorph-marketingマーケティングを形作る
マーケティングメトリック marketing-metricマーケティングを測定する

ネイティブな英語圏のユーザであっても、このようにいろいろなネーミングのアイデアを簡単にいくつも得られれば、ネタ出しの叩き台として使えるでしょう。

我々のような外国人にしてみれば、自分の知っている単語から変な和製英語の社名やサービス名をつけるより、ある程度辞書的にありそうな単語の案を簡単に多数得られるのはいいのではないでしょうか。他の日本人が思いつかないぐらいにひねったネーミングに気づくこともできるかもしれません。

このようなネーミング系のサービスは、技術的には辞書さえ用意すれば難しいものではないのもあり、多数存在します。

WordConstructor(ワードコンストラクタ)

WordConstructorのほうは、こちらが与えた単語をベースに、新語を生成してくれるジェネレータです。

こちらは辞書的というよりは、音的な置き換えをメインとしたもので、奇抜な単語も生成されるようです。

word-constructor.png

単語の一部は変わらないように固定したり、子音や母音の登場場所を指定したりと細かい調整もできるようになっています。スライダーでパーセンテージを上げると、より元の単語と音的に近い単語を生成します。

Company Names(カンパニーネームズ)

また、ネットサービスの場合は、正しい英語でドメイン名が取れない(=辞書にあるような単語は使わなくても先行した業者が押さえてしまっている)ことが多く、辞書とちょっとだけ違う単語を考えたり二語以上の単語をつなげたりという努力が多数行なわれています。

Company Names(会社名)では、ページをリロードするたびに、ネット風な社名を100個生成してくれます。

company-names.png

Unique Word Generator(ユニークな単語ジェネレータ)

Unique Word Generatorでは、辞書にないけれどなんとなく英語的な単語を作ります。

unique-word-generator.png


Web2.0 Domain Name Generator(Web2.0っぽいドメイン名ジェネレータ)

Web2.0的なサービスには、ドメイン名の衝突を避けて変な名前のものも多いですが、このジェネレータはそれを揶揄しているところも多少あるかもしれません。

Web2.0 Domain Name Generatorでは、そんな「Web2.0っぽい」名前を提案してくれます。

web2.0-company-name-generator.png

ここでは、生成した名前を使ってドメインが空いているかどうかのチェックにつなげてくれるので、もし気に入った名前が出たらそのままドメインを取得することもできます。このサービスはドメイン販売業者とのアフィリエイトを行なっているわけですね。

投稿者 秋元 : 11:54 | トラックバック

2008年04月11日

[MarkeZine併載コラム] あのCGMサイトが流行ったワケ 行ったことのある国を記録するサイト「World66」

Markezineにて新しいコラム連載をすることになった。Alexa(アレクサ)連載と同様に、当ブログとの併載となる。

当ブログでは新しく登場したサービスの速報をすることが多いので、今回の連載では過去に紹介したサービスを振り返り、そのサービスや他の競合サービスがどういう状況になっているかということを書いていく予定だ。


サイボウズ・ラボで職業ブロガーをやっている秋元ともうします。サイボウズ・ラボのブログでは、研究員として海外のネットウォッチや技術研究を担当しており、そこで得られた情報や知見を速報的に社員ブログに書いています。

このコラム連載では、新着ニュース的なものとは逆に、過去に紹介してきた、海外の興味深いネットサービスやネットマーケティング手法をもう一度振り返り、その後のサービスの状況や競合サービス等をあわせての現状をまとめて紹介していきたいと思います。

Markezineでは、トラフィック解析サービスAlexa(アレクサ)の解説を連載してきていました。Alexaの使い方や注意点などについて、現時点で知っておくべき項目については11回の連載でほぼ網羅しましたので、何か新しいトピックが出るまでアレクサについては置いておくこととします。


さて、第一回目は、クチコミ旅行サイトWorld66とそのブログパーツをご紹介しましょう。

World66は、1999年に設立された、ユーザ投稿をベースとしたオンライン旅行ガイドサイトです。登録ユーザは

  • 住んだことのある国
  • 行ったことのある国
  • 行ってみたい国

を登録することで、それぞれ濃い赤、赤、濃い灰色に塗り分けられた自分だけの世界地図を得ることができます。この世界地図はウィジェット(日本でいうブログパーツ)としてブログや他のサイトに貼ることもできます。

世界地図以外に、アメリカやカナダの州についても同様の地図を作成できます。



create your own visited country map or write about it on the open travel guide

何かをコレクションしたい、という心理は誰にでもあるものです。地図に空白のところがあればそこに興味が出たり、そこを埋めてみようかという気持ちもでてくるわけで、旅行ガイドサイトとしてはよい仕組みでしょう。

それに、どの国に行ったか、というのは、誰にでも答えられる敷居の低い質問です。読者に海外旅行をするような層が多ければ世界地図でもいいですし、国内の地図や、もっと狭くは電車の路線の訪れた駅でも応用ができるでしょう。

また、新たにどこかの国に旅行してきたときには、特にその地図が自分のブログなどに貼ってあって目につくようであれば、地図を更新するために元サイトに訪問する必要が出てきますので、リピータを確保するという意味でもよくできたウィジェットと言えるのではないでしょうか。

検索してみたところ、10万ページ以上にこのWorld66の地図が貼られているようです。色分けされた世界地図というデザインも直感的で何を表しているかわかりやすいですし、このブログパーツからの集客効果は大きいでしょう。

2005年には、日本地図で同様の地図を生成する経県(経県値&経県マップ)というサイトが開設されています。こちらは地理好きの人のコミュニティによるもののようですので、他のサイトと連動したりする性質のものではありませんが、World66のような旅行サイトや引越し・転職サイトなどでユーザの引き止めや再訪問を促す仕組みとして、日本でも使えそうなアイデアではないかと思います。

keiken-screenshot.png

また、地図の塗りわけ以外にも、属人的な「行った・行かない」「したことがある」という情報を可視化できる画像やウィジェットの生成・配布には、「集めたい」「完成させたい」という人間の本能的な欲求に訴えるマーケティング的なヒントがあるのではないでしょうか。

サービスのポイント

このサービスの優れている点を再度まとめると、以下のようになるでしょう。

  • コレクション欲を満たす
  • 誰でも回答できる
  • ユーザの行動が再訪問を喚起する

ユーザ生成(CGM)の旅行ガイドとして、競合にはWorld is roundWikitravelなどがあります。WikitravelとWorld66は2006年に買収の結果同じInternet Brands社の所有となっています。また、日本ではフォートラベルなどが類似サービスといえるでしょう。

投稿者 秋元 : 13:59 | トラックバック