研究

データベース

縁の下の⼒持ちとして⽀えるシステムの中枢

データベース分野の研究は、システムソフトウェアやミドルウェアの領域に位置する、まさに「縁の下の⼒持ち」といえる取り組みです。直接⽬⽴つものではありませんが、少しずつできることを増やし、処理を楽にし、コストを下げることで、幅広い社会基盤を⽀えています。

研究を始めたきっかけは、学⽣時代に関⼼を持ちながらも取り組めなかったトランザクションへの思いでした。

現在は、複数の優れた性質を兼ね備えた並⾏制御⼿法の実現を⽬指して研究を進めています。⽬標は、データベースシステムといえば真っ先に想起されるような標準的存在をつくること。最終的には、並⾏性を意識していないさまざまなトランザクションでも、そこそこの性能で正しく動作する「タフな並⾏制御」を実現することをゴールとしています。


同時実⾏制御 (Concurrency control)

⼀貫性‧進⾏性‧スケーラビリティ‧低オーバーヘッドを兼ね備えた、汎⽤の Many-core 環境向け並⾏制御⼿法 SRCC を提案します。従来、データベースアプリケーションの開発者が並⾏性を意識せずにトランザクションを設計した場合、それらをどのように組み合わせても正しく動作し、⼗分な性能を発揮する仕組みは⼀部の例外を除き実現できていませんでした。本研究は、その「あたりまえ」を可能にすることを⽬指しています。

担当
星野 喬、他
実施期間
2016年〜
主な成果
  • プロトタイプと共著も含む論文・研究報告
  • xSIG2017、VLDB2021、VLDB2025、OS 研究会など

排他制御(ロック)

従来から広く⽤いられている Reader-writer lock の課題である公平性と性能の両⽴を解決する⽅式を提案します。従来の⽅式ではStarvation-free までの保証に留まることが多かったのに対し、本研究ではそれよりも強い制約である Bounded-bypass の公平性を実現します。さらに、特定メモリ領域での Spinwait によるアクセス集中を緩和し、Request queue の並列処理を導⼊することで、⾼スループットと低レイテンシを両⽴する新しい Reader-writer lock を実現します。

担当
星野 喬、他
実施期間
2019年〜2025年
主な成果
  • PPoPP 2025(国際会議)で採択‧発表

トランザクション理論

従来のトランザクション理論において Serializability(直列化可能性)が「グラフにサイクルが存在しない」という性質で定義され、証明も背理法を⽤いるのが⼀般的だった点を⾒直します。実際の並⾏制御プロトコルは特定の順序を⽣成しているため、その順序が満たすべき性質を直接定義する⽅が合理的です。本研究では、順序を基盤とした Serializability の新たな同値定義を3つ提案し、並⾏制御プロトコルの正しさ証明をより直感的に⾏える枠組みを⽬指します。

担当
星野 喬光成 滋⽣、他
実施期間
2018年〜
主な成果
  • xSIG2019(国内ワークショップ)での発表