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Alexa ランキング―どれだけ信頼できるか―

japan.internet.com 併載コラム

Alexa は、オンライン書店の雄 Amazon が 1999年に買収した子会社で、Web サイトがどれだけの人に見られているかを調査することを事業としている。テレビでいう視聴率調査に似たサービスだ。

http://alexa.com/ で、調べたい Web サイトのドメイン名を入力すると、そのドメイン名のサイトに対するアクセス量(トラフィック)や訪問者数、一回の訪問あたりの閲覧ページ数などの情報が表示される。今のところページの表示は英語だが、主な内容はグラフと表で示されるため、慣れれば英語であることは気にならないと思う。

ユーザーがブラウザで直接それぞれの Web サイトを見に行くという WWW の仕組みで、無関係な第三者の Alexa が「誰がいつ、どのサイトを見たか」というデータをどうして取れるのか。「Alexa ツールバー」というブラウザの拡張ツールがその秘密の鍵となる。

Alexa.com から“Alexa Toolbar”をダウンロードしてインストールすると、Internet Explorer 上で各 Web サイトを閲覧した際に、その訪問情報が Alexa にも送信されるのだ。

Alexa はこのようにして送られてきた訪問先情報を集計することで、各 Web サイトの訪問者数予測やサイト滞留ページ数を求め、さらにそれらを比較することで、人気 Web サイトのランキングなども提供している。

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Alexa 社は、Alexa ツールバーだけでなく、他にもいろいろなツール経由でユーザーの訪問情報を収集している。

Internet Explorer の以前のバージョンでは、メニューの[ツール]―[関連したリンクの表示]から、閲覧中のサイトの関連サイトを表示させるという機能を有効に設定することで、Alexa ツールバーと同様のレポートが送信されるようになっていた。(*1)

Amazon の提供する A9 ツールバーにも、Alexa のランク情報を表示する機能があり、Alexa ツールバー同様に閲覧した URL 情報を Alexa に送信している。こちらは Firefox でも使うことができる。

Firefox の場合には、SearchStatus という拡張ツールもある。Alexa 以外から提供されているツールではあるが、Alexa ツールバーと同様の情報を Alexa.com に送っていると思われる。

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しかし、ユーザーの閲覧情報を外部のサーバーに送ってしまうというこれらのツールの仕組みは、スパイウェアであると考える人々もいる。

実際、Norton AntiVirus などのアンチウィルスアプリケーションのいくつかは、Alexa ツールバーをスパイウェアとして駆除するようになっている。このようなアンチウィルス製品がインストールされた環境では、Alexa ツールバーを入れてもすぐに駆除されて作動しないということがある。(A9 ツールバーや SearchStatus などの互換ツールは、ユーザーが少ないために駆除対象となっていない場合も多い)

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Alexa ランキングは、インターネットにおける自サイトの人気度を示す指標の一つとして、Web サイトの製作者やプロデューサらから注目されてきた。

Alexa ツールバーは、Alexa でのランキングを確認するのが簡単になるため、そういった人達によってインストールされ、かなりの数が使われていると思われる。

このようなプログラムによる自動収集では、より多数のデータを取ることができ、実態に近いランキングが作れるという利点がある。しかし、集約されたデータは「Alexa ツールバーを入れそうな人」のネットサーフィンしか反映していないという欠点もある。

Google のエンジニアで有名ブロガーでもある Matt Cutts 氏は、Alexa のデータで Ask.com の訪問者数が彼の Blog の4倍にしかならないことを根拠に、Alexa ランキングの信憑性に疑問を呈している。

Matt Cutts 氏の Blog は人気 Blog ではあるが、検索エンジンで4位につけている Ask と比べられるほどのものではないのも明らかだ。

この現象は、Matt Cutts 氏の Blog を読むような読者が、検索エンジンや SEO にとりわけ興味を持ち、Alexa ツールバーを入れている人の割合も非常に高いだろう、ということで説明することができる。

その他の Web サイトでも、SEO 関連のサイトや、Alexa ツールバーの使い方を紹介しているサイトなどは、高めの数字が出ているように見える。

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訪問者のかなり多いサイトであれば、あなた自身やあなたのチームによるアクセスが Alexa ランキングに与える影響は割合としてそれほど多くないだろう。

しかし、訪問者が少ないサイト、元々の Alexa ランキングが10万位よりも低いようなサイトの場合には、社内や関係者のブラウザに上記のツールバーを入れて、日常的にアクセスするだけで、大きくデータが変動してしまう。

そんな操作で変動してしまうランキングだとすれば、当然、プログラムで同様の操作をすることも理論的には可能で、そのようなアンダーグラウンドなツールもいくつか存在する。(*2)

だから、SEO 業者などが Alexa のランキングなどを達成目標として提示してきた場合には注意が必要だ。Alexa ランキングがそれほど正確ではないということを知らないとしたら業者としてモグリだし、知っていて成果評価に使おうと言うならそれも問題だからだ。

途中で恣意的な操作が入っていないことが把握できているのであれば、Alexa のランキングやトラフィックの変化情報は依然としてサイト管理やプロデュースに有用な情報だ。数か月、数年といった長期にわたるアクセスのトレンドを簡単に知ることができる。

「Google ページランクにだまされるな」の話と同様、指標の数値を上げることがビジネスの最終的な目標ではない、ということを理解することが重要だ。

(*1)http://www.imilly.com/alexa.htm
(*2)まっとうな Web サイト製作者には無意味なツールなので、製品名やリンクは記さない。どうしてもという方は検索すれば見つけるのは難しくない。

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あのライバルは SEO で抜けるのか?

japan.internet.com 併載コラム

以前のコラム「Google ページランクにだまされるな」で、Google ツールバーで表示されるページランクには実際的な意味がほとんど無く、検索順位に直結しないこと、この数字は操作可能でさえあり、ページランクを Web サイト運営の目標や広告価値の指標にすることの危険性を指摘した。

ページランクはあくまで「楽しむための参考値」で、最終的な目標は検索結果での順位だ、ということは決して忘れてはならない。

SEO 対策を業者に頼むのであれば、頼む前に何位だったのか、頼んだ結果何位になったのか、ということがその業者の成果だ。(*1)

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しかし、順位の数字だけでは見えてこないこともある。マラソンに例えれば、ライバルが1位で自分が2位だとして、差は一人分ではあるが、その差が5秒なのか、5分なのかでは大きな違いがある。

このような、順位の違いに隠された実際の差については、どうやって調べればよいのだろうか?

キーワードと無関係にページごとにつく、いわゆる「ページランク」以外に、もう一つの隠れた指標が存在する。まずは、その「隠れた指標」を適当な検索ワードで見てみよう。

ここでは、Google ではなく BIGLOBE を使う。BIGLOBE の Web 検索は Google からサービスの提供を受けており、基本的には Google の検索結果と同じ順位で同じ結果が表示される。 (*2)

例: BIGLOBE で“メール管理”を検索

しかし、検索結果の URL の左側に表示されるオレンジ色の縦棒が、Google 検索と BIGLOBE 検索の大きな違いだ。

検索結果が1位のサイトは10本の縦棒すべてがオレンジ色で、2位、3位と順位が下がるにつれて、オレンジの棒の数が減っていく。

このオレンジ色の棒の数は何を示しているのか、という説明は見つからないのだが、BIGLOBE の検索ヘルプの図中では、これが“PageRank”ということになっている。(japan.internet.com 編集部から NEC に問い合わせをしていただいたところ、同社では便宜的に「ランク」と呼んでいるようだ。Google の本家ページランクと区別しづらいので以下 「隠しページランク」 としておく。)

いわゆる総合的なページランクは、検索順位との直接の関係が疑われる参考値だが、BIGLOBE で出てくるオレンジ色の「隠しページランク」は、そのとき検索したキーワードに特化した「検索結果の強さ」と見ていいだろう(*3)。

上記の例では、1位(10本)と2位(7本)はそれほど差がついていないが、2位と3位(3本)は大きく離れている、ということが見て取れる。 (*4)

おそらく、Google 検索を利用している提携各社は、検索結果に合わせて様々なデータを得ており、その中からどれを自サイトで表示するか選べるようになっているのだろう。どうして BIGLOBE だけがこの「隠しページランク」を表示しているのかはわからないが、事情がなにであれ、Web サイト運営者にとって有用な情報であることは間違いない。

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検索結果における上位表示の重要性については、前回のコラムで書いた。もう一度前回のコラム「検索と広告、予算を割くべきはどちら?」を思い出してみよう。検索結果ページで、1位から3位の結果がユーザーの視線を得ることができたのは100%だった。

あくまで少サンプルの実験だということは注意しなければならないが、「なにがなんでも1位でないと自社サイトに誘導できない」というわけではなく、3位以内に入った上で、表示される自社サイトの名前や要約でユーザーをひきつけることができれば、1位でなく3位表示でも、クリックして見に来てくれるユーザーは少なくないだろう。

順位は高いに越したことはないが、1つ2つの上下は致命的な違いではない。

もし、自社サイトが3位で、BIGLOBE で知った「隠しページランク」の2位との差が非常に大きかった場合、ちょっとやそっとの改善では順位は変わらないかもしれない。その場合は、SEO をがんばって2位を目指すより、表示されるタイトルや要約を改善したり、他の制作や SEM 活動に予算を回したほうが効率がいいだろう。もちろん、4位、5位のサイトとの差にも注意して、抜かれない程度にはがんばる必要はあるが。

また、すぐ一つ上のサイトとの差が非常に小さければ、少しの SEO 対策で順位が逆転できる可能性がある。こういう場合はまず SEO 対策にコストをかけて順位を上げ、その後他の活動をしたほうがいいだろう。

BIGLOBE の検索で表示される「隠しページランク」情報を使うことで、次の効果的な手は何か、という判断に正確さを加えることができるだろう。

(*1)本質的ではない SEO 対策をする業者相手の場合は、「契約が切れたときに順位が落ちたりしないか」というチェックも重要。短期間だけ効くインチキ対策の場合もあるからだ

(*2)順位変動の波及が遅くて結果が多少異なる場合もある。同一ドメイン内での複数ページ表示、タイトルや要約の表示など、何をどう表示するか、といった点でも細かな違いはある。

(*3)NEC によると、検索キーワードとの「マッチング度合い」を示すという。意味としては同じである。

(*4)2006年5月12日現在の検索結果での場合

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検索と広告、予算を割くべきはどちら?

japan.internet.com 併載コラム

検索エンジンで検索をしたなら、

– 左側に検索結果(キーワードに関連の高い順にロボット検索の結果)
– 右側に検索連動広告(検索キーワードを購入した会社の宣伝)

という並びのページが表示される。レイアウトは、Yahoo や Google、その他の検索エンジンでも似たり寄ったりだ。

以前は検索結果と広告の配置も各社バラエティに富んでいたが、Google AdWords の大成功と、Yahoo! がディレクトリ検索からロボット検索へ転換したこともあり、検索結果と広告の配置はどこも Google の配置と似たり寄ったりなものになっている。

検索結果で上位に上げる SEO を専門業者に頼むのも、クリックで課金される検索連動広告を買うのも、どちらも実施するのにコストがかかるとすれば、どちらにどれだけ費用をかけるべきなのだろうか?

SEO 業者は自然な検索結果で上位に出ることこそ重要、と言うかもしれないし、検索連動広告の販売側や代理店は、広告こそ効果あり、と薦めるかもしれない。それぞれ寄って立つ位置が違うから、これはしかたがないだろう。

完全な答えを出すのは難しいが、参考になるレポートはある。Google の検索結果を、一般ユーザがどのように見ているか、というのを調べたレポートだ。

これは ENQUIRO と Did-it、Eyetools らの共同研究で出された有料レポートで、さわりの部分が無料で公開されている

これによると、Google の検索結果(organic search, 訳すとすれば「有機検索」か。手の入っていない公平な結果、というイメージを持たせた用語)の上位から、ユーザがそのリンクに注目をする確率は以下のようになる。

検索結果が目に留まる確率
順位 確率
1 100%
2 100%
3 100%
4 85%
5 60%
6 50%
7 50%
8 30%
9 30%
10 20%

検索結果の上位、1位~3位はほぼ目が通される。続くページ下のほうのリンクは50%ぐらいの人がチェック、スクロールしないと見えない8位~10位のリンクは、2,3割の人にしか読んでもらえない。

これに対し、広告(paid search, 有料検索)については、通常のページ右側にある場合(*1)は以下のような注目度になったという。

広告が目に留まる確率
順位 確率
1 50%
2 40%
3 30%
4 20%
5 10%
6 10%
7 10%
8 10%

右側の広告の方はというと、左側の検索結果に比べると、ずっと視線が来ていない。一番上に表示されたものでも、半分の人からは無視されていることになる。

この調査結果からは、「検索結果で上位に出る」ことと「広告で上位に出る」ことの効果は同等ではなさそうだ。

オフラインの世界、新聞や雑誌でも「本文を読み、広告『も』読む」人が多く、広告ばかり読む人というのは少ないのではないだろうか。広告よりも検索結果のほうをより公平なものとして信頼している人が多いのだろう。

***

ただし、と、ここから但し書きが多くなる。話はそう簡単ではない、ということだ。

世の中には検索サイト上での検索結果と広告の区別がついていないユーザもかなりの割合存在する、という説もある(*3)。そういうユーザ相手には、左か右かは関係なく、目立つ場所に表示されることの効果が高いのだろう。

また、検索をクリックして自社サイトにやってくるユーザと、広告をクリックして自社サイトにやってくるユーザでは、自社サイトに来た後の行動特性が違うだろう、という話もある。

広告をクリックしてやってきたユーザは、広告に対するアレルギーが少ないし、そこでさらに広告や売り込みをかけても成約しやすい可能性がある。単純に(広告上位より)検索上位のほうがユーザを呼び込めたとしても、そのあとの成約率まで含めて比較すると重要性が逆転するようなケースもあるだろう。

最初に紹介したレポートの数値は参考にはなるが、最終的には自社サイト内での成約率まで含めて総合的に考えた上で判断する必要がありそうだ。

(*1) 被験者数が50人と少ないが
(*2) 広告でも、検索結果の上位にかぶさって表示される場合もある。この場合については抜粋では語られていないようだ。
(*3) 検索結果のページに広告が混ざっていることを認識していない、すべてが検索結果だと思っているユーザが62%もいる、というレポート。(英文、PDF)