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アナログをデジタルにつなげる – 手紙から電子メールへの変換サービス

Remote Control Mail は、紙の手紙をメールで受け取ることができるという有料サービスだ。サービスは限定的にはじまったばかり。

手紙

指定の住所に届いた自分宛の手紙について、まず封筒表側をスキャンしてネット経由で閲覧可能にしてくれる。その表書きを見た利用者は、それぞれの封筒について、さらに以下の処理をさせることができる。

  • 自宅や会社へ転送
  • 開いて、中身をスキャンして PDF 化、メールで転送(ただし、これは2006年開始予定)
  • シュレッダーにかけて捨てる

コストは、$2.5(220円)/月の基本料金と、上記の「させること」の内容や件数に応じた従量課金の組み合わせだ。

紙の手紙を主に使う人と、eメールを主に使う人の橋渡し的なサービスになる可能性があるのではないかと思う。

技術者として、新しい技術、新しいサービスばかり見てしまうことがあるが、実際のサービスの対象ユーザを考えた場合、今あるサービスからの段階的な移行をどうするかについて考えることも重要で、またそういうところにこそビジネスの芽があるのかもしれない、と感じた。日本でもほしいサービス(もし既にあったら教えてほしい)。

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ネットのマーケティング

証拠を見せる – スパム対策のこんな方法

SPAM STOCK TRACKER という、面白い試みをしているサイトを紹介する。

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スパムメールのなかに、特定の企業の株を購入することを薦めるスパム、たとえば、「今、○○株式会社の株が買いどき!」みたいなスパムメールがあると思う。受け取ったことがある人も多いだろう。

この joshua cyr さん、ほんとうにスパマーが言うとおりに株価は上がるのだろうか、ということをサイトで追跡することにした。これがこの SPAM STOCK TRACKER だ。

ここで彼が追跡した結果によれば、スパムで「この株が上がります」と言ってきた銘柄のほとんどが、実際には下がっているということがわかる。

右上に表示される合計を見れば、もしスパムの言うとおりに買ってたら資産は半減していたとわかる。

下の個別銘柄の表を見れば、ほとんどの株がスパムを受け取ったときよりも値下がりしてることがわかる。

普通なら、「必ず上がる株を知ってる人が、それを赤の他人に教える理由がない」と思うので、こんなスパムいくら送ってきても無駄だろうと思うのだが、世の中にはスパムで宣伝された製品を買う人もいるそうなので、スパムで「株が上がるよ」と言われて信じちゃう人もいないとは言い切れない。

万一あなたの近くにそんな騙されやすい人がいたら、こういうサイトを見せるのが一番伝わりやすいだろう。

日本語の場合だと、Yahoo! ファイナンスの掲示板や 2ちゃんなるなどが、こういった株式関係のスパム的な書き込みが蔓延しているところだろうか(株にあまり詳しくないので、他にもっと大きな掲示板があるかもしれないが)。こういったところに対しても同じ実験をしてみると、面白いだろう。おそらく Joshua さんの実験と同じような結果になると思う。

株価の場合、もともと数値化されているものだから、ネットや Blogsphere での評判との比較を取ることはたやすい。株価以外でも、評判(reputation)システムにおける、「やらせ」的な推薦などを別の数値や調査結果などとつきあわせることで、インチキを暴くような仕組みを考えられるかもしれない。

そうやって、スパムで薦められた株/商品/サービスなどが、普通の株/商品/サービスなどよりも悪いということが定量化されていくと、スパムも減っていかないかなあ、などと期待するのだった。

[2006.12.1 追記] リアルタイムで、受け取ったスパムとそこで推薦された銘柄の関係を表示する別のサービス、Stock Spam Effectiveness Monitorが登場した。

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ネットのサービス

37 Signals のビジネスモデルはあくまで Web デザインコンサルティングなのだろうか

この会のエントリで書いた内容は間違い、実際にはまったく逆でした。コメントを参照してください。ogjun さんご指摘ありがとうございます。

The 37 Better Project は、BackpackitBasecamp などでいわゆる Web2.0 的なサービスを先導し、開発フレームワークの Ruby on Rails でブラウザベースアプリケーション開発に旋風を巻き起こしている 37 Signals の新ページ。

もともと、 37 signals は Web UI のコンサルティング会社で、Backpackit などオンラインの情報共有サービスは実質無料。利用の多いユーザからは料金を取ることになっているが、有料ユーザがどれぐらいいるのかは怪しく、どうやって儲けるのかビジネスモデルがはっきりしないところが、典型的な Web 2.0 企業といえる。

元々の本業が Web 設計コンサルティングであることは 37signals.com 本ページに書いてあるし、Web デザインに関わる書籍も出している

今回新たに公表されたのは、世の中の代表的な企業ネットサービスをいくつか取り上げて、「37 Signals ならこう作り変えますよ」というデモと、定額($2500(27万5000円))のコンサルティング試用サービス 37 express

こんな風に直したら、既存の企業サービスももっとよくなるのでは、というデモが下記のようなもの。

デモでは、現在のサービスと、彼らがどこをどう直して、それによってどういう効果があるか、といったことが比較して説明されている。

37 signals の各公開サービスでやっているような、動くデモではないし、Ajax も(試したかぎり)使ってない。リンクも作動しないので、純粋に Web デザインだけの提言デモのようだ。

また、37 express を申し込んでみたい人のための、10 項目のアンケートも Word 形式でダウンロードできるようになっていて、この 10 項目もサイトの再設計をするにあたって考えるべき項目がよくまとまっている。$2500(27万5000円) 払う前でも、そこそこ有用な情報が得られるように思えた。

見るだけでも勉強になる今回の発表だが、これはまた同時に、37 signals があくまで デザインコンサルティングを中心にビジネスモデルを組み立てていることを表している。

Backpackit.com などの無料サービスには「我も続け」と参入した/するフォロワーも多いが、フォロワーの多くが「ユーザをたくさん集めれば、利益は後からついてくるだろう」と Web2.0 的な楽観論に支配されているようにみえる中で、追いつこうとしている 37 signals がそもそもサービスで儲けようとしてないとしたら、他社競合は足元をすくわれるだろうな。

Backpackit や Ruby on Rails といった秀作を無料で公開しておいて、「ただのデザインコンサルタントですよ」というのもすごい話だけど。