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Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(6) そういえば Ning はどうなった?

PHP 勉強会後の懇親会にて、「Ning の解説が止まったけど使ってないんですか?」という突っ込みを受けた。うん、使ってないヨ。

… えーと。「おまえあれだけ Ning、Ning って騒いでたじゃないか」と言われそうだ。何も言わずにフェードアウトしてたのは悪かった。これをとりあえずのまとめエントリとしたい。

経緯を知らない人むけに Ning 自身の説明をもう一度。Ning はこんなサービス。

  • あの Netscape を開発した Marc Andreessen の出資による新プロジェクト
  • 共有ブックマーク、写真共有、レビューシステム、マッチングシステム、などのパーツが用意されていて、コピーや組み合わせで自分だけの独自ネットサービスを作ることができる場(Playground)
  • PHP5 か独自 XML スクリプトで改造や新規開発も可能
  • すべてのアプリケーションソースコードは公開され、参考にしたり流用したりできる
  • 無料。ユーザを集めて広告で儲ける予定

他の Web2.0 サービスと比べて Ning の特徴的なところは、機能の固定したサービスを提供するのではなく、利用者自身を巻き込んで新しいサービスを量産できるところ。開発者がこぞって参加し、新しいアプリケーションが次々出てくれば、それがまた次のユーザを呼び込む、という正のスパイラルが起こりうるし、それが狙いのサービスだろうと思う。

Ajax がなんでこんなに急速に盛り上がったかという理由の一つは、Javascript なのでソースが丸見えということにある。Google Maps もソースの難読化(Obfuscation)を行ったが、熱心なユーザがあっというまに解析し、同じようなサービスが大量に登場した。Ning が普及すれば、PHP5 のソースレベルで同じことが起こりうる。

ただし、逆方向から見ると、Yahoo! Geocities などの無料ウェブページサービスで、掲示板やアンケートといった小さな動的アプリケーションをボタン一つで組み込めるようなものの、アプリケーションをちょっと本格化させた、というふうに見ることもできる。

エンドユーザからみた Ning は、Mixi で新たなコミュニティを作ったり、Yahoo 掲示板で新しい掲示板を作ったりすることと同じでしかない。違いは、作ることができるアプリケーションの種類が、今風なだけだ。

無料ブログスペースも、ブログ機能に特化した Geocities 的なものといえるし、無料ウェブページサービスや無料ブログサービスが、Ning が提供するようなアプリケーションをつけたしてくることも十分ありうる。というか、そういう動きも既に起こっている。

プログラミングのできるユーザー開発者が十分に現れなければ、Ning 自身が抱える開発者によるアプリケーションの追加だけが、他の無料スペースとの差別化ポイントとなってしまう。

ということで、面白がって参加してくれる優秀なプログラマーを集められるかどうかが、Ning 成功の鍵となると僕は見る。

プログラム心のあるユーザが Ning で開発するということは、

  • Ning フレームワークの上でしか動かないアプリケーションを作ること
  • 書いたコードは公開され、誰からでも参照されること
  • 作ったアプリケーションが大ヒットしても、得られるのは名誉のみ。(Ning 運営者の得にしかならない)

といったことを意味する。

僕も、既存アプリの PHP5 ソースをいくつか眺めてはみた。ソースの質は良いと思うが、結局は Ning フレームワークを include して、そこの機能を使うことに収斂する。

ドキュメントを読んで Ning フレームワークを理解し、新しいネットアプリケーションを作れる開発者であれば、あまり変わらない努力で自前のアプリケーションを作ることができる。

たとえ興味のままに遊びで作るとしても、心のどこかに「これが大ヒットしたら広告つけて大もうけ」とか「事業化」とか考えることはあるだろう。そのときに、儲けは Ning に持っていかれる、というのがわかっていては、やる気が出にくくてもしかたないのではとも思う。

ただし、プログラミングを書きたいわけではないエンドユーザには、Ning は格好のサービスだ、という考えは変わらない。自分の市だけに限定したレストランレビューサイトや、チワワオーナーだけが参加する SNS など、ターゲットを限定したサービスを作り、自分がそのサービスのオーナーになりたい、という人は山のようにいるだろう。Ning ではそれが非常に簡単にできる。

Ning 自身には、「人を集めて広告で儲ける」というインセンティブがある。エンドユーザには、「クリックするだけで自分専用のネットサービスが作れる」という利益がある。しかし、Ning に一番必要な開発者には、あえて Ning で作るためのインセンティブが無いのだ。

ということで、華々しいデビューにも関わらず、その後 Ning について言及された良記事をあまり見ないし、アプリケーションのほうも、今のところオリジナリティの高いものが出てきているわけでもない、という状況になってしまっているのだ。

Ning によってもたらされる、有用アプリケーションのソース共有化は、非常に夢のある話で、できることなら実現してほしい。しかし、今のところ、何かもう一工夫なければ、その段階への突破が起こらないのでは、というのが今のところの Ning に対する感想である。

過去の Ning 記事:
Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(1)
Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(2)
Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(3)
Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(4) ビジネスモデルは?
Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(5) 開発してみる

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Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(5) 開発してみる

Ning からメールが来て、開発者アクセスをあげたよ、とのこと。早速 Ning に行ってみると、App Manager という開発者ページに入れるようになっている。

まず View Source で既存の Example アプリのソースをリストしてみた。Review 型のサンプルアプリについて、ロジックの php ファイルが 20個程度、テンプレートらしい php ファイルも 20個程度。

ロジックのほうは、フレームワークにあるらしいファイルを読み込み、そのクラスを利用する形の短いファイル。try catch があるので PHP のバージョンは 5 なんだろう。

とりあえずは、プログラミングレスで簡単に作れますよ、という Clone this App をクリックし、サンプルをコピーしてみる。何を作るか特にアイデアがなかったので、とりあえず Bookmarks を選択。

すると、アプリ名、アプリの説明、使いたい URL を指定しろ、という画面になった。アプリ名や説明に日本語を入れたらエラーになった。

その3つを設定しただけで、del.icio.us 風のアプリケーションが起動した。これがその作ってみたサイト
Ning 日本語情報ブックマーク集

Add Bookmark で Ning について書いてある日本語ページを登録してみる。こっちは日本語は通るようだ。ただし、タグは日本語がダメで、化けてしまった。

ということで、10分ほどで専用のソーシャルブックマークが一個作れた(コピーしただけだが)わけで、「既に世の中にあるウェブアプリと同じようなアプリを、メンバー構成や専門性を変えてもう一個作りたい」という人、これは実は結構多いのではと思うのだが、にとっては非常に期待のできるサービスなのではないか、と思った。

さらに、テンプレートの書き換えに挑戦してみる。ファイル一覧で templates ディレクトリの下へ行き、適当な .php ファイルを開く。その中に、メニューなどの英語がそのまま入っているので、それらを日本語に書き換えて保存してみると、アプリの表示もすぐに日本語に切り替わった。

ちゃんとした国際化じゃないけど、英語アプリのテキストを書き換えての日本語化はできそうだ。ところどころ、複数形を扱うための処理などが入っているため、そのへんは単純な置き換えではなく考えないといけないところもあるが。

もう一個軽いアプリをコピー。懺悔アプリ。ただしこちらは日本語が動かず。

さらに一つ。シンプル掲示板。これなんかは、テンプレートファイルを使わない作りになっている。また、PHP ではなく独自のタグだけでも書けるということ。

Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(6) そういえば Ning はどうなった? へ続く

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Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(4) ビジネスモデルは?

Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(1)
Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(2)
Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(3) の続き。

Ning のビジネスモデルについても、FAQ で解説されている

Playground 自身は無料サービスを守り、収入源としては広告とプレミアムサービス(有料による機能強化)を考えているという。必然の結果として、アプリの開発者が Ning 以外の他社の広告を出すことはできない。(商用サービスを作って自分で課金する分にはかまわない)

有料ユーザは広告が出ないとか、より多くの容量を使える、というのはよくある話。Ning の上では、PHP などで書いたアプリも強制的に共有されてしまうが、たとえばこのソースを有料で「隠せる」とかいった課金も考えているらしい。

この、作ったソースが共有されてしまう、というモデルは、実は Ajax が大流行している理由と同じところをついているようにも思う。

Google Map などすごいものを作れるんだけど、それがどう動いているかはあっという間に解析されて類似のサービスが出てくる、というのは、Javascript がソースを隠せないことで起こっている現象だ。

Ning の上に展開された PHP (や Python や Ruby)のコードが強制的に公開されるとなれば、Ning の上でアプリケーションソースコードの大規模な共有が発生し、そこでは衆知が集まったことによるソースコード改善プロセスの高速化が起こらないとも限らない。

Netscape の作者による新 Web2.0 サービス Ning(5) 開発してみる へ続く