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あなたのサイト、検索エンジンには見えていないかもしれない

japan.internet.com 併載コラム

人間が目で見たときと、検索エンジンが調べに来たときではサイトの見えかたが違うことはご存知だろうか。

現在のソフトウェア技術では、画像から意味を読み取ることは簡単ではない。よって、画像に埋め込まれた文章や、Flash など動く画像からジャンプするページのリンクは理解できない。Javascript などを使った「動くメニュー」などの要素も、検索エンジン的にはリンクとしてつながっていないことがほとんどだ。

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まず、実際に検索エンジンから見えるあなたのサイトの実態はどんなものなのか。HTML のソースを見たり特別なツールを使わずに、簡単に確認する手順をご紹介しよう。

1. 検索エンジン Google で、調べたいページの URL を http:// から入力する。存在する URL で Google が認識しているものであれば(*1)、「Google のキャッシュ」というリンクが現れるはずだ。

2. この「Google のキャッシュ」をクリックし、

3. さらに、ページ上部の「テキストのみのキャッシュページを参照する場合はここをクリック」の「ここ」をクリックされたい。

ここで表示されるテキストのみのページが、検索エンジンに認識されたあなたのページになる。(*2)

このテキストページと、画像や Flash などを含んだブラウザ上で見えるページ(あなたが普段イメージしているページ)、どれぐらい違っているだろうか?

ブラウザで人間がたどることはできるのに、検索エンジンには見えてない、たどれない要素がたくさんあるかもしれない。

検索エンジンにとって、たどれないリンクは認識もされないので、トップページとリンク先のサブページに関連が無いことにされたり、ひどいときはリンク先のサブページが検索エンジンに登録されなかったりすることもあるのだ。

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Alexa による日本の人気トップ100位サイトの中にも、検索エンジンに見つけてもらえないメニューを使っているところはある。

たとえば動画サービスの Gyao だ。前述の手順で Gyao のトップページを確認するとこうなる

普通にブラウザで見た際には目だって見える、中央の「ニュース」「映画」「音楽」などのメニューが、検索エンジンには見えていないのがおわかりだろうか。

また、旅行検索の じゃらん net では、都道府県などを掘り下げていく際にフラッシュのメニューを使っているため、テキスト版ではこうなる

検索エンジン的には、このトップページから各都道府県のページには直接行くことができない。検索エンジンで都道府県ごとのページももっと目立ってほしいのであれば、改善の余地はある。

同じく、Sony のサイトもフラッシュのメニューである。検索エンジンに見えているページでは、事業ごとのページに直接飛ぶことができない。

企業のトップページが最も外部から紹介されているページ(=検索で上位に出やすいページ)だとすれば、その「直接の子ページ」と「何度かリンクをたどっていった孫ページ、曾孫ページ」では、リンク先のページが重要かどうかという検索エンジンの判断も違ってくるので、注意が必要だ。

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Flash や Javascript を多用したデザインを行った場合、検索エンジンをちゃんと意識できているかどうかは重要だ。検索エンジン対策の本のなかには、検索エンジンのために特別なページを作りましょう、と勧めるものもある。

ただし、Flash や Javascript が無効なときだけ違うページを返すというやり方はグレーゾーンにある。最近でも、独 BMW の Web サイトが検索エンジンにだけ別のページを見せていたことで一時的に Google からペナルティを受けたのは記憶に新しい。

Flash についてはよい方法を知らないが、Javascript に関しては、Javascript が無効であっても(=検索エンジンから見ても)普通の HTML リンクとして十分機能させるようなデザインも可能だ。

……ということで実例をいろいろ探し回ったのだが、企業サイトでここまでできているものを見つけることができなかった。日本の大手サイトのほとんどは、ちょっと複雑なことはすべて Flash に逃げているようだ。

海外のサイトになるが、たとえば A List Apart の Blog では、Javascript による動きのあるメニューであるにも関わらず、HTML のリンクとしてもわかりやすく見えている例を紹介している。

元のページと、同じページの検索エンジンからの見えかたを比べてみてほしい。ちゃんと他のページに行ける、という点で、人間向けと検索エンジン向けの見え方を近づけることは、やればできることなのだ。

このような作りであれば、人間向けにデザイン重視で、かつ検索エンジン向けにリンクもはっきりした Web サイトにできる。

「ご希望の動くメニューを作るには Flash じゃないとできませんね」などと軽々しく口にする制作会社には、できないのか、知らないだけなのかをちゃんと確認する必要があるだろう。(*3)

*1 Google にキャッシュを溜めさせない、という通知をしていれば別。
*2 最も良く使われているであろうテキスト検索について。画像検索などはまた別。
*3 単純な動くメニュー以外の効果に Flash を使っている場合は、もちろん Flash でなければできないこともあるだろう。

追記: ここでは japan.internet.com 向けに「ツールをインストールしない」「簡単に確認できる」やり方を書いている。こちらのブログの読者層はもっと便利なツールや効率の良い方法を使っているだろう。

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ただ削除するだけでいいのか? 古いページの「ロングテール」効果

japan.internet.com 併載コラム

「ロングテール」という言葉がある。現実の店舗ではスペースの制約で置けなかったような需要の小さな商品もインターネット上のオンラインショップではいくらでも取り扱うことができ、少量売れるものが多数集まるとその売り上げは無視できないほど大きい、というような現象を指す。

これを踏まえて今回は、実世界の整理整頓と Web サイトの整理整頓は必ずしも同じではない、という話をしようと思う。

Web サイトを制作する際、現実の会社案内カタログや商店の比喩を使って考えることは多い。もちろん、接客という面においては Web サイトも実店舗も同じであるから、この比喩によって類推できる事柄は多く、意味の無いことではない。

しかし、Web サイトが機械(プログラム)による自動応答システムであることを忘れると、人間によるサービスと機械によるサービスの特性の違いを見落として、理にかなわないサイト制作・管理をしてしまうことがある。

「ロングテール」が可能になったのは、自動でお客様の相手をしてくれるWeb サイトにデータを多く置いてもコストがさほど増えないからだ。商品カタログや企業情報、旧製品に関連した紹介・仕様・サポート情報などでも、適切に制作されたページや画像であればページ一枚を置き続けるためのコストは無いに近い。ハードディスクの低価格化もあり、一般企業の Web サイトであればサーバーのディスクのほとんどは空いたまま使われていないということもよくあるだろう。

だが、実店舗のアナロジーを使うと、役目を終えた Web ページを「片付けよう」としてしまいがちだ。現実の店舗やショウルームなら、使い終わったスペースはさっさと片付け、次の商品やキャンペーンのために空けなければトータルのコストが増えてしまう。電車の中吊りでもビルの壁面広告でも撤去しなければコストはかかり続ける。

一方、一旦制作し Web に向けて公開したそれぞれのページは、存続する限りあなたの企業や商品を宣伝し続けてくれる。古いページにリンクしてくれた他サイト、Blog、ソーシャルブックマークなどはあなたの企業の Web サイトが「老舗」であり「重要」であることの証言者でもあるのだ。

検索エンジンはそれらのリンクを順位付けの指標に含むため、古いページを消してしまうことはせっかくネット上で受けた評判を捨ててしまうことに等しい。

役目を終えたページも何らかの検索キーワードに結びついており、たとえ年に数人であってもそこから訪問者はやってくる。その時に「ページが見つかりません」といったエラーページを見せてしまうのは、検索エンジン対策(SEO)の観点からもあまりにもったいない。

では、古い情報の URL にアクセスされた際、企業のトップページや無関係な他のページに転送してあげるのはどうか。これもページを単純に削除するよりはましだがベストではない。

なぜなら、その古い個別ページに貼られた URL は Web 全体からみたら、漠然としたあなたの企業の情報よりも、特定のキーワード(「製品Aの情報」「製品Bに関する他社Cとの共同リリース」など)と結びつく力をすでに持っているからだ。

たとえば、製造中止にする製品のカタログページがあるなら、単に削除したり企業トップページに転送するよりは後継製品や関連製品のカタログページへと案内するのがいい。

もちろん、そのまま残していてはまずいページもあるだろう。たとえば、期限のある懸賞キャンペーンのページであれば、誤解が起こらないように「このキャンペーンは終了しました」とページに大きく追記したり、申し込みフォームを削除して申し込めないようにすればいい。そういうキャンペーンを行ったという記録がきっかけで検索からあなたの企業や商品を見つける人もいるかもしれないのだ。

インターネットから特定のキーワードによって参照されているというパワーを、今やっている他のキャンペーンや、新製品のページへと転送(リンク)してあげる(*1)。これにより、過去に行ってきたすべてのインターネット上のマーケティング活動の残り火を、ロングテール的に今のサイトの集客に積み上げることができるだろう。

(注)今回のコラムで、単純に「サイト内のページの数さえ増やせば検索で有利になるのか」と誤解されると困るので補足しておくが、内容がほとんど同じページを量産しても、最近の検索エンジンは類似ページを認識できるようになっており、このような安易な手段は逆にペナルティ(検索順位低下)の元となる。

(*1)ちなみに、リンクの転送方式にも技術的な選択肢がある。よい制作業者ならどのような転送が最適かわかっているはずだ。

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あなたのドメインは本当にあなたのものか?

japan.internet.com 併載コラム

ブラウザで Web にアクセスする際のアドレス(ドメイン名)は、World Wide Web におけるあなたの企業の住所である。

実際の土地に建っている建物なら、住所を決めたり管理したりするのは市町村だが、実体物が無い Web においては、ドメインを管理するレジストリ(*1)という団体があり、その元でドメインの登録や更新を処理する多数のレジストラという団体が、ドメインを誰にいつまで貸し出しているか、といったことを管理している。

「うちの会社の Web サイトを作ってくれませんか」と頼んだときに、頼まれた相手はあなたの会社のドメインを借りるところから作業してくれることだろう。ドメインと Web サーバーを結びつける作業も。

あなたからみれば、お金を出して発注したのだから、成果は当然自社のものだ、と思われるだろう。しかし、時々、Web サイトの制作を頼んだ相手が、あなたの会社のドメインの所有権を持ちっぱなしということがあるのだ。

これは、家を建ててもらって住み始めたはいいが登記簿は確認しないようなものだ。お金を出して自分の家を買ったつもりが、実は所有権は仲介者のはずの不動産屋のものになっていて、自分は借りているだけの立場になっていた、みたいなことが、ドメインの管理ではときに起こっているのだ。

何も問題が起こっていないとき、制作会社との仲がうまくいってるときは、だれがドメインの所有者であろうとあまり問題は無い。

しかし、業者を変えるなどで関係がこじれたり、業者の担当者が引継ぎをせずにいなくなったり、といったことで、そのドメインの管理や更新ができなくなってしまう、という危険性が存在するのだ。

レジストラの管理画面にログインできて、そのドメインの情報を更新できるのは誰なのか、ということは、はっきりさせておかなければならない。

レジストラに登録された、今ドメインを借りているドメインオーナーが自社になっていることは確認しなければならない。レジストラの管理画面にログインするためのユーザー名やパスワード等は、あくまで自社のもので、それを発注先の製作会社に一時的に使わせている、という形式にすること。

インターネット側から、ドメインの所有者・管理者情報を見るには、whois と呼ばれる検索サービスを使う。whois はオープンな規格で、いろいろなサイト検索できる(詳しくは”whois”で検索してほしい)が、たとえば”.jp”ドメインであれば、

!JP WHOIS

などで、「検索キーワード」に”example.co.jp” などを入れて検索できる。”.com/.net/.org/.info”などであれば、たとえば、

Whois.net

などで調べられる。

ここで出てくる Contact Information(公開連絡窓口)や Administrative Contact(管理者連絡先)といった情報が自社になっているか、なっていないとしたらそれは誰になっているか(*2)、を確認することができる。

ドメイン名の管理に限らず、外部のサービスにアカウント持つことで管理しているものはすべて、同様のリスクを孕んでいる。ASP 型のアクセス解析サービス、ブラウザ管理型のネット広告出稿サービスなどがそれで、いざという時には自社のスタッフがログインできること、それまで外注していた業者のログインを停止させられること、などを確認するべきだろう。

*1 .com や .net、日本向けの .jp などトップレベルドメイン(ドメインの一番右端にある大分類)ごとに担当しているレジストリが存在する

*2 発注先の社名でもなく、レジストリの情報が表示される場合もある。この場合は、発注先がドメインを所有しているわけではないかもしれない。レジストリに対して、ドメインの所有権が自社にあることを確認する問い合わせをすればよい。