2009年04月22日
Alexa(アレクサ)に訪問者属性表示や前後訪問サイト情報など新機能が追加
世界中のウェブサイトについてアクセス情報を収集・解析して提供してくれているアレクサに、新しい機能が追加され、デザインも変更されました。変更点について解説させていただきます。
まず、解析結果ページが全般に渡ってデザイン変更されました。グラデーションやスペースを活用し、Javascript/Ajaxによるナビゲーションで多くのデータがすっきり表示されるようになりました。
新たに追加された機能は三つ。
サイト訪問者の特性(Demographics)
ナビゲーションバーの"Demographics"をクリックすることで見られるページ。そのドメインを訪問するユーザについての以下の統計情報をグラフで見ることができます。
- 年代(Age)
- 最終学歴(Education)
- 性別(Gender)
- 子供がいるかどうか(Has Children)
- 家庭・学校・職場いずれからのアクセスか(Browsing Location)
緑色で右側に突き出ているカテゴリーは、そのドメインへの訪問者が比較的多いユーザ層を示します。赤で左側に伸びている場合は、逆に、その属性のユーザが割合として少ないことを示します。
自らのサイトについて、自分達が予想してターゲットとしていたユーザ層と合致するかをチェックしたり、競合サイトのデータと比較して自社サイトが浸透できていないユーザ層がどこかを調べたりするのに使えるのではないでしょうか。
ただし、アレクサのメインのトラフィック情報と同じく、これらの特性の正確さについて過信するのは避けるべきです。アレクサ・ツールバーを使っている人の情報しかデータに反映されていないのはもちろんですし、このあたりの年齢や性別情報も、ツールバーのダウンロード時に尋ねられる自己申告のアンケート結果をベースにしたものと思われますので、このデータだけを根拠にするのではなく、他の手段でもユーザ特性を収集し、つきあわせた上で活用すべき情報でしょう。
クリックストリーム(Clickstream)
そのドメインに訪れた人が、サイトに来る前とサイトから去った後にどのドメインのページを閲覧したか、という情報がこのクリックストリームです。
Upstream Sites(上流サイト)は、今調べているドメインに来る「前」にユーザが見ていたドメインが、ユーザ数の多い順に表示されます。
前に訪問されていたサイトは、自社のサイトであればアクセス解析が集めたリファラー情報から知ることができますが、ライバルサイトに関してはわかりません。アレクサのこのランキングを見れば、どのサイトから他社サイトにアクセスしているのか、というおおまかな情報を知ることができるでしょう。広告ネットワークのドメインがランキングに出ているようであれば、どこに多く広告を出し、ユーザを獲得しているか、ということまで推測できる場合があるかもしれません。
Downstream Sites(下流サイト)は逆に、今見ているドメインを見たユーザが、次にどのドメインのページを見たか、というランキングです。
ここにそのドメインの競合サイトのドメインが多く出ているようであれば、ユーザは今調べているドメインでは問題を解決できずに、競合サイトに行ってしまったのかもしれません。
検索エンジンからの流入割合(Search %)
3つ目の新機能は、Traffic Statsメニューの中のサブメニュー、一番右側にある"Search %"で開くことができます。
ここでは、検索エンジンから来たトラフィックの割合の変動をグラフで見せてくれます。過去のどれぐらいの長さについて見るかは、下部のプルダウンで選択することができます。
検索エンジンからの流入は、絶対数ではなくアクセス全体に対する割合(パーセンテージ)である点には注意してください。
投稿者 秋元 : 11:00 | コメント (1) | トラックバック
2008年07月24日
Alexa(アレクサ)でニコニコ動画のアクセス数が下がってるって本当?
回答: いいえ、アレクサではそんなことはわかりません。
と、Alexa徹底解析講座をお読みいただいた方には言うまでもないことなのですけど。
アレクサのグラフの読み方を理解せずに書かれた次の記事
【トレビアン】ニコニコ動画のアクセス激減!? その原因は……
が一人歩きして、2ちゃんねるを中心に話題になっているようですね。
リンク先の記事では、アレクサのグラフの傾きでニコニコ動画のアクセスが激減(!)していると書かれているのですが、そもそもアレクサのグラフはアクセス数の絶対値のグラフではないし、アレクサのグラフが右下に傾いていても、アクセス数が減っているとは限らないのですからこの主張に意味はありません。
グラフが右肩下がりになる要因
アクセス数の増減と無関係にグラフが右肩下がりになる理由はたくさん考えられるのですが、たとえば、
- 5月に行なわれた統計処理の変更が影響した
- 日本人のAlexaツールバー利用が減った
- ある程度のユーザーがパソコンではなくモバイルからの視聴に移った
といった仮説は立てられます。もちろん、これで全部ではないです。
上記の仮説について解説していきましょう。
2008年5月に統計方法の変更があった
開発者ブログをずっと読んでいるとわかりますが、Alexaは、そもそも非常に少人数のチームで、予算もあまりない部署で運営されているようです。いろいろな欠点は昔から言われているのですが、長らく放置されていました。
しかし、Markezineでもレポートしていますが、今年4月15日に開発者ブログで集計アルゴリズムの変更が行なわれることが予告されています。
この時に、変更の前後でデータの連続性が無くなるかもしれない、ということは仄めかされています。そして、以前は過去5年間にわたって見ることができた過去のトレンドが、2007年の夏以降の分しか見えなくなっています。これも、新旧のデータで整合性が取れなくなったからでしょう。
また、この新システムでは、ツールバー以外のデータも合わせて利用することも言われています。HitwiseのようなISP経由のデータ収集ではとも言われていますが、詳細は不明です。
日本人のAlexaツールバー利用が減った
アレクサの統計は世界中を相手にしているので、アジア等のネットの活動が活発になるほど、日本のネットユーザの活動は相対的に小さくなっていきます。つまり、日本のサービスの場合、大きく伸び続けていないサービスはすべて、実際にはアクセスが伸びていてもアレクサでは右肩下がりになる可能性があるのです。
さらに、それに加えて、アレクサツールバーのインストールベースが減少する要因はたくさんあります。
主なものとしては、まず、PCやブラウザの変更。Internet Explorerは6から7に、Firefoxは2から3に移行しつつありますが、PCの買い替えやブラウザのアップデートの際に「使っていない」等の理由でアレクサツールバーを再インストールしないことはあるでしょう。
また、アンチウィルス製品の中には、閲覧しているURLを外部に送信するアレクサ・ツールバーを好ましくないソフトとして排除するものもあります。個人や会社でのアンチウィルス製品の普及によっても、日本人のアレクサツールバー利用は減っている可能性もあります。
パソコンではなくモバイルでの視聴に移った
これもアレクサ絡みでは良く見落とす人がいますね。
mixi(ミクシィ)とSecond Life(セカンドライフ)をAlexa(アレクサ)で比べても無意味な理由とは?でも話しましたが、アレクサ・ツールバーが動かない環境、携帯電話やウェブブラウザ以外の独自クライアント等でどれだけアクセスがあっても、アレクサには反映されません。
ニコニコ動画はモバイルもやっていますが、運営者側からみればどちらもサーバへのアクセスは同じです。パソコンで見ていたのがモバイルでも見るようになった人、というのがどれぐらいいるのかわかりませんが、そのような人がどれだけいるか調べずにアレクサでパソコンでしか見ない人の数字の変化を追っても、サーバ側から見たアクセスのトレンドとは違うものしか見えないでしょう。
また、IEやFirefoxといったアレクサツールバーが入る環境以外でニコニコ動画を見ている人も考慮しないといけません。Mac Safariのユーザもそうですし、ニコニコ動画の場合は閲覧用の専用ブラウザもあるので、それらの普及率や利用率も調べないと正しいところはわからないでしょう。
「アレクサはダメ、○○なら信用できる」?
また、今回の件でアレクサ以外の方法(ネットレイティングスとかコムスコア)なら信用できる、と書かれている人もいますが、これもそんな単純な話ではありません。
有料でやっていれば正確、というものでもないですし、集めたデータをどのように処理しているか、のところがブラックボックスで見えないのですから、どの会社のデータにしても正確かどうかはわかりません。
ランダムにサンプルを採用しているから、入れたい人がツールバーを入れるアレクサより正確、というような意見についても、そのランダムがどれぐらいランダムなのかというのを検証する必要があるでしょう。携帯ユーザのデータはどこも収集できていませんし、ネットレイティングスは「メガパネル」というアレクサツールバーと同様、申し込みベースでデータ提供者を集める手法も始めています。
米国では、それらの調査会社が宣伝文句通り中立公平にデータを集めていることを監査させようという意見も出てきていますが、今のところは謎の処理で出てきた謎の数字を、「おおむねあっているようだ」という経験から利用者が信用して使うという状態でしかないのです。
それは、CompeteでもGoogle Trends for websiteでもPathtraqでも同じです。インターネットの利用状況を完璧に調べることは無理なのですから、何か一つの数字だけ持ってきて、それで増えた減ったを主張するのは、インターネットの仕組みを理解していないか、あるいは自分の主張したいことに合った結果だけを持ってきている可能性があります。
筆者の所属するサイボウズ・ラボでもPathtraqというのをやっているので、「Pathtraqなら完璧」と言えると格好よいのですが、Pathtraqも、もちろん、完璧ではありません。パネルが日本人ばかりなので、日本での利用者だけについて見るときはアレクサよりいい点はあるかもしれませんが。
人は簡単な答を望むもの
「激減」という言い切りの記事を書けば注目されるでしょうけれど、「よくわからない」では記事にはしづらいでしょうね。
「その情報では減ったかどうかわからない。増えている可能性もある」と長く書いても、よく読まない人や興味が浅い人は読み飛ばすでしょう。
この記事を読まれても、たぶんすっきりしないだろうとは思いますが、ネットは学校のテストじゃないので、なんにでもはっきり白黒がつく解答があるわけではない、ということですね。
[参考]
NetRatingsのMegapanelリリース [pdf]
投稿者 秋元 : 13:49 | コメント (2) | トラックバック
2008年01月23日
Alexa(アレクサ)以外の選択肢
MarkeZine併載コラム 第十回
アレクサ解説の第十回は、アレクサの競合サービスにどんなものがあるかについて。
このシリーズは、マーケジンの連載との併載になっている。
アレクサの代わりになるサービスはあるのか?
第7回、第8回では、アレクサ自身が語ることの無い、アレクサのデータの問題点やデータが操作される危険性についてお話してきました。また、第9回では、実際にアレクサのデータを操作できる様々な手法も紹介しました。
そんなにアレクサのデータに問題があるのであれば、なぜたくさんの人がアレクサの情報を参照しているのでしょうか。もっと世の中によいサービスは無いのでしょうか? 今回はアレクサの競合と言われるサービスについて紹介していきたいと思います。
- Nielsen//NetRatings(ニールセン/ネットレイティングス)
- ComScore(コムスコア)
- Hitwise(ヒットワイズ)
- Compete(コンピート)
- Quantcast(クワントキャスト)
- Ranking.com(ランキング・コム)
- PathTraq(パストラック)
Nielsen//NetRatings(ニールセン/ネットレイティングス)
Nielsen//NetRatingsは、テレビ視聴率データの提供で有名なニールセンの、インターネット部門を担当するNielsen Online社が提供するインターネットトラフィック統計です。1997年に設立され、1999年からデータ提供を行なっています。
アレクサのように好きなドメインに対して簡単な統計データを得ることはできず、有料でレポートを購入することで、自社ウェブサイトと競合他社とのトラフィック遷移の比較などができます。
データの収集元は大きく二種類に分けられ、新聞社が世論調査で行なうときのようなランダムな抽選によるパネル選出(RDD)が一つ、もう一つは、懸賞つきネット広告などによって募集されています(*)。テレビの視聴率と同様、パネルの詳細(正確な人数や構成)については明かされていません。
日本法人としてネットレイティングス株式会社があり(1999年設立)、日本でのトラフィック統計のランキングや動向をよく発表しています。日本の新聞等のメディアで日本のウェブサイトの利用状況に言及する際に引用されることが多いデータではないかと思います。
(*) Nielsen//NetRatingのパネル応募ページ
ComScore
ComScoreは、アクセス状況をComScoreのサーバに送るフリーウェアを配布することでパネルを確保しています。
ComScoreも昨年(2007年6月)、日本法人コムスコア・ジャパンを設立しました。
しかし、コムスコアが2007年9月に発表した日本の検索エンジンシェアについてのレポートでは、2006年9月から2007年9月の一年間でヤフーのシェアが30%近く下落したり、ヤフーとグーグル以外の検索エンジンのシェアが10%以上上昇したり、など、日本での統計データに対して実感とは離れた、疑問を抱かせるような数値が出ています。
このリリースは数値の出方が極端だったこともあっていろいろなメディアで取り上げられましたが、日本のデータについては今後の改善が行われるかを見る必要があるのではと筆者は感じています。ComScoreの「便利なツール」が日本語版で流通していないため、そもそも現状で日本のデータが正しく集まっているのかという話もあります。
参考: 検索シェア縮まる! GoogleがYahoo!を超える日
Hitwise(ヒットワイズ)
Hitwiseは、インターネットへの接続業者(ISP)側からデータを集めることで利用者の統計を集めているサービスです。
会社紹介によれば、米国で1000万人、世界では2500万人のネットユーザの情報を解析し、検索キーワードや訪問したサイト、サイトからサイトへの移動などを追跡しています。
提供しているデータは英語圏中心で、サイトではアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、香港、シンガポールのデータの案内があります。
Compete(コンピート)
Competeは米国のみを対象にしたトラフィック統計提供サービスです。Competeは2006年の11月にサービスを開始しました。
200万人のパネルの情報をISPやASP(アプリケーションサービス提供者)、Competeツールバーなどから収集しています。Mac, Linux, Firefox, Safariユーザにも対応しています。
Competeでは、無料でウェブサイトから統計データを参照できます。年齢、収入、性別、米国内の地域などによってデータを詳細化できるところが、アレクサにはない機能です。統計の時間的な粒度は、アレクサの日別に対し、月別となっています。
後発であることやデータの収集先も多いことから、米国の事情を測定する役には立ちそうですが、そもそもサービス提供外ですので日本では使えないでしょう。
参考: Guy KawasakiによるCompete創業者Stephen DiMarcoへのインタビュー
Quantcast(クワントキャスト)
Quantcastも、アレクサの代替を狙って開始されたサービスです。
元々はパネル方式でトラフィックデータを収集していたのに加えて、Javascript埋め込みによるアクセス解析サービスを追加してデータを集めています。
AlexaやCompeteと同様に、統計データは無料でサイトからアクセスできます。性別・年齢・人種・収入などの分布もわかります。
広告主に対して、あるサイトと似た読者層のサイトを列挙して見せるサービスを持っていて、データ提供サイトは優先的に広告主とマッチングさせるということも行っています。また、あるサイトの読者とブランド(航空会社など)との相関を出したりもしていて、これも広告出稿の選定時には役立ちそうです。
対象は米国限定。
参考: Quantcastによるネット視聴率データの無料開放
Ranking.com(ランキング・コム)
Ranking.comでは、ブラウザのアクセスを高速化したり、サイトの信頼度を独自の数値(TrustGauge)で表すという機能を持つIEツールバーを無料で配り、そこからユーザアクセスを収集して集計しています。
PathTraq(パストラック)
筆者の所属するサイボウズ・ラボが8月に公開したPathtraq(パストラック)については、リリース直後の第6回でも少し紹介いたしました。
Pathtraq(パストラック)は、希望者のブラウザに閲覧ページのアドレスを提供するためのプラグインをインストールしてもらうことで、参加者から集めた訪問ページの統計を取るサービスです。
アレクサがドメイン毎のデータを取るサービスであるのに対して、ページ毎のアクセス情報が集計される点に特徴があります。
今のところ、パストラックは日本語で提供されている日本語圏を対象としたサービスです。よって、アレクサや今回紹介した他のサービスと比べて、日本の中でのウェブページのアクセスデータをより正しく取れる点が利点となります。(ただしパネルの構成は今後も改善が必要でしょう)
データ提供者のプライバシーに配慮し、アクセスしたURLのみを(暗号化されたページや参加者が除外指定したページは除いて)集め、統計を取ったら個々のデータはすぐに廃棄していく仕組みとなっていることが、ある意味弱点とも言えます。
ネットレイティングスのような、パネルの許可を得てネットに関するあらゆる活動を収集しているサービスと比べると、個人のブラウズ活動をずっと追っていくようなことはできません。このあたりは多数の一般ユーザの参加を前提とした仕組み上、プライバシーと機能のバランスの取り方としては妥当なところではないかと思います。
Google Toolbar/Analytics/AdSense
統計を取っているかどうかも確認されたわけではありませんが、検索エンジンのGoogleもユーザのアクセス情報を集計できる能力を十分に持っています。
具体的には、Google Toolbarがページランクを表示する際にGoogleに送る閲覧中のページや、Google Analyticsを利用してアクセス解析をしている多くのウェブサイトの情報、いろいろなサイトに貼られたGoogle AdSense広告やGoogleウィジェットの表示時にわかるクライアント情報とサイトの対応、などです。
Googleが内部的にこれらのデータを総合してウェブのトラフィックを集計していても驚きませんし、どこかで上記の各社のような統計データの提供ビジネスに参加することも可能でしょう。
まとめ
筆者は、ウェブのいろいろな進化に比べると、アレクサの改善速度が追いついていないようには感じています。アマゾンが、アレクサのデータ提供を収益にうまく変える方法を思いつけていないのも力を入れられない理由ではないでしょうか。
しかし、ブラウザの中に組み込まれていた歴史や、その知名度、(実数はわかりませんが)アレクサ・ツールバーの普及度の高さを見ると、アレクサが先行した分を他の競合サービスが追いつくのはなかなか簡単ではありません。
以前に比べるとアレクサの問題点や限界も少しずつ認識されてきているようです。ブログなどでアレクサのデータやグラフを誤った解釈で紹介すると、コメントや他のブログでの反論が見られるようになってきました。
アレクサを他の○○に置き換えても問題は解決しない
しかし、そのようなアレクサの限界を見たライターやブロガーの中には、単にアレクサを使っていたところをComScoreやCompeteのデータやグラフに置き換えて、それでよし、としている人も少なくありません。
ウェブの仕組み上、ComScoreやCompeteなど他の競合サービスが、アレクサの持っている問題からまったく自由であることはできません。
ウェブの本質がブラウザとサーバの間の独立したバラバラのアクセスであり、昔のパソコン通信のような、どこかひとつの中央サーバで管理された仕組みではない以上、すべての正確なアクセスを正確に収集・記録・分析することは不可能だと断言できます。
そういう意味で、単にアレクサを使わずもっとマイナーなサービスのデータを使うというだけであれば、何も問題は解決していないどころか、参加ユーザが少ないためにより恣意的な他ユーザの操作に踊らされる危険も高まるかもしれません。
一つの指標に頼らないこと
ウェブの本質を理解せずに、どこか一社が提供している指標でもって、広告やSEOの成果測定をおこなったり、広告料金の算定に使ったりする無知が、不正の温床となります。
複数のサービスの値を見て比較することで、ある特定のサービスで急な変化があったときに、それが確からしいのか、何か操作が行われているのか、を知ることができるかもしれません。
そういう意味では、アレクサ以外のサービスが多数出てきて使えるようになったのはよいことでしょう。
2007年12月12日
Alexa(アレクサ)は操作できる - MarkeZine併載コラム
MarkeZine併載コラム 第九回
今回はいよいよAlexaの操作方法指南の回となった。これまでの連載を読み込んでいる方にはすでに明らかな気もするけれど、具体的にどんなことをすると統計データを変えてしまえるか、という点をまとめてみた。
このシリーズは、マーケジンの連載との併載になっている。
前回は、アレクサの統計データが異常値を示す代表的な例をいくつかご説明しました。
アレクサがおかしくなる原因がわかったということは、逆に、原因となった行動を自ら起こすことでアレクサのデータを変更することも可能だ、ということです。
アレクサの数値は、そもそも操作できる
まずこれを知っておくことは大前提です。第5回、第6回でご紹介したように、アレクサの統計データはアレクサから配布されているツールバーからの情報をサーバに集約して作成されています。
何年か前に、テレビの視聴率に関する不正が発覚したニュースがあったのを覚えていますか? テレビ局側のスタッフが、視聴率をリサーチする会社のモニター(パネル)家庭を尾行で探し出し、買収することで自分の番組の視聴率を上げようとした事件です。
モニターが自由公募であることの弱点
アレクサの場合、モニターはツールバーを入れたユーザだとわかっているわけですから、このテレビ視聴率の事件よりもずっと簡単に操作ができてしまいます。既存のモニター(ツールバーユーザ)を買収することもできますし、そもそもツールバーは無料で誰でもインストールできるのですから、買収なんかしなくても、自分の影響が及ぶユーザに対してどんどんツールバーのインストールをお願いすればいいのです。
1. サイト運営者自身が、アレクサツールバーを関係者やヘビーユーザに薦める
一般のサイトでは、1万人に一人がアレクサツールバーを入れているとします。ちょっと乱暴な簡略化ですけど、月に1万人がサイトに訪問すれば、そのうち一人のアクセスがアレクサにカウントされるでしょう。
しかし、サイトの持ち主がアレクサツールバーの紹介をして、アレクサツールバーのインストールを呼びかけるなどして、そのサイトのユーザの1000人に一人がツールバーを入れていたらどうでしょう?
一般のサイトに比べて、アレクサの統計データに出てくる数値に10倍大きな影響を与えることでしょう。そして、そのユーザは元々そのサイトの読者だったのですから、継続的にそのサイトを訪れる可能性が高く、結果的にそのサイトの統計が実力よりも大きく出てしまいます。
前回ご紹介した、Matt Cutts氏のブログの例はまさにこれですね。あの例ではMatt Cutts氏がAlexa Toolbarのインストールを薦めたわけではありませんが、逆にブログ等でアレクサ・ツールバーのインストールを何度も推薦することで、アレクサのランキングを本来の実力よりも上げてしまうことは可能です。
また、Alexaのウィジェットを貼ると順位があがる、という噂も流れていますが、これは貼ることが直接順位を上げるわけではなく、ウィジェットを見て、ウィジェットからAlexaのサイトに行き、ツールバーをインストールする人が出るからでしょう。自分のサイトの固定ファンにAlexaツールバーを入れさせるという意味では、比較的消極的な方法ですが現象は同じです。
2. ページをたくさん見せるサイト構成にする
これは必ずしもわざとでなくても起こりますので、意図的な操作とは限りませんが、ユーザが見るページ数を増やすことで、アレクサのデータは上向きになります。
たとえば、一つの話を2つのページに分割して、前半ページの終わりに「続きを読む」のような後半ページへのリンクを入れれば、トータルのアクセス数は倍近くになります(次のページに行かずに立ち去るユーザもいるとは思いますが)。
ポップアップを多用して、サイトのどこかをクリックするたびに説明が別ウィンドウで出るような構成も同じです。今ウェブサイトを設計するのであれば、そのような短文はJavascriptなどを使って画面切り替えを起こさずに表示させたりするのが主流だと思いますが、それではアレクサ・ツールバーが別のページを見たとはカウントしてくれません。
このような変更は、ユーザに取っては使いにくく読みにくいことが多いと思います。しかし、サイト運営者の目的がユーザ中心でなければ、アレクサの統計等のためにわざとこういう設計をすることもあるのかもしれません。
3. ページを転送する
HTML中のmeta refresh指定などで、ページの移転先にユーザを誘導することができますね。アレクサ・ツールバーは、移転前と移転後の両方のURLを収集しています。
サイトの内部で、意味無くこのようなページ転送を、閲覧者には気づかれにくいような短い時間で何度も行なえば、見た目一ページしか見えていなくても、アレクサからは全部のページを開いて閲覧したように見えているかもしれません。
アレクサ側でのデータの処理がわからないので、あまりに短時間での多数のアクセスをプログラムで排除するなどしている可能性もあります。しかし、全般的にアレクサ側のそのような誤集計への対処は手薄なようにも見えます。
4. ツール等で特定のページを何度も開かせたりする
ここまでくると、「他にそうすべき理由があった」という言い訳はできませんね。完全にアレクサの仕組みの裏をかこうという行為ですが、アレクサの仕組みがわかっていれば思いついても不思議ではありません。
マウス操作やキーボード操作を記録して再生するようなツールは、フリーのものも含めてたくさんあります。
そのようなツールを使えば、たとえば、10分おきにアレクサ・ツールバー入りのブラウザを開いて、ターゲットのページを開いてはブラウザを閉じる、といった作業を、24時間ずっとさせておくこともできるでしょう。
操作の程度にもよると思いますが、それがプログラムによる自動操作なのか、それともそのサイトに非常に熱心なファンがいるのか、という区別をするような処理は、おそらくアレクサの集計には組み込まれていないでしょう。
5. アレクサに偽の訪問情報を送る
何もマウスやブラウザの操作を模倣しなくても、ツールバーがアレクサに送信している情報さえ真似できれば、アレクサ側からはそれが本物のブラウザなのか、騙すためのプログラムなのかの区別はつけられません。
ツールバーが送るのと同じリクエストを送るようなプログラムを書けば、ブラウザを開くまでもなく、任意のドメインのアクセス数が増えたように見せかけることが可能でしょう。技術的には難易度は高くありません。
「アレクサの順位を上げるツール」などとして売られているものがあるようですが、それらのツールも内部的にはこういった動作をするプログラムでしょう。
ランキング操作の実例
ベンチャーキャピタリストにして有名ブロガーのジェイソン・カラカニス氏は、アレクサについては批判的なブログを良く書いています。彼はかって、自分のブログの読者にたいして、アレクサのデータを狂わせることで、アレクサの使えなさを証明しよう、と呼びかけたことがあります。
「ツールバーをインストールしていない人はインストールして、僕のブログを何度もリロードしてほしい」という呼びかけに対し、何人の読者が賛同し、実際にツールバーをインストールして何ページ閲覧したのか、といった正確な数値を知る手段はありませんが、後日わかったその前後のブログのアレクサによるトラフィックグラフは次のようなものでした。
この呼びかけ実験は2006年11月に行なわれたものですが、その時期に通常の変動を超えた大きな上昇があるのは確かなようです。
まとめ
アレクサの統計データは、ある程度は狙って操作することができる情報です、というのが今回の内容でした。
自分か、競合相手か、あるいは第三者か、その統計データに感心がある立場の者ならだれでも、アレクサのデータを不正な状態に細工することができます。
ですから、アレクサの統計データを何か他のデータの補足資料にする程度なら問題はありませんが、アレクサの順位やトラフィックデータ自身を、サイト運営や集客の目標にすることはたいへん危険なことで
す。
特に、ウェブマーケティングの担当者や発注先の外部企業に対して、アレクサのランキングを達成目標や成果報酬のバロメーターとして設定することは、今回説明したような不正行為を誘発するものとなるでしょう。
特にあからさまな手法に注意
アレクサの統計データは目標とすべきではありませんが、継続性などからどうしても外せないというのであれば、少なくとも以下のような行為が行なわれていないかは確認しましょう。
- ウェブサイトでアレクサの紹介をする
- アレクサ・ツールバーのインストールを訪問者にすすめる(アレクサのウィジェット/ブログパーツを貼るなど)
- 社内や協力会社の一般社員にアレクサのツールバーをインストールさせようとする
- ウェブサイトのページを無意味に複数ページに分割させようとする
- ポップアップやポップアンダーの多用を勧める
次回の予定
次回は、アレクサと同様にウェブサイトのトラフィックを測定する競合他社について解説します。
2007年10月24日
Alexa(アレクサ)の統計データの問題点
MarkeZine併載コラム 第八回
このシリーズは、Markezineの連載との併載になっている。説明図なども作ってもらっているのでマーケジンのほうが読みやすいかもしれない。
アレクサの問題点
前回は、アレクサの統計データを誤解してしまうケースについて説明してきました。今回は、統計データ自体の問題点を指摘していきます。
- 有名ブロガーによる問題提起
- サーバ側の統計とつきあわせたユーザ達
- 国(言語)単位でのデータ数増減の不均衡
アレクサのデータ提供者に偏りがある
オンラインゲームや携帯電話サイト、Windowsユーザ以外について測れないのは前回解説の通りですが、WindowsでInternet Explorerを使っているユーザであっても、必ずしも正確なデータが取れているとは限りません。
アレクサに統計データを提供している人たちは、アレクサのツールバーをインストールしている人たちです。決してランダムに選ばれているわけではありません。それが問題となる場合があります。
アレクサのデータ提供者が何千人、あるいは何万人いるのかは非公開なのでわかりません。しかし、多いとはいってもインターネットの全ユーザからみれば微々たるもののはずです。
Googleの人気ブロガーによる検証例
実例をあげましょう。Googleの検索品質チームで働き、検索とSEOに関するブログで有名なMatt Cutts氏が、彼のサイトのAlexaトラフィックの異常さをブログで指摘した件は有名です。
Askといえば、日本でもAsk.jpを展開している検索エンジンです。グーグル、ヤフー、マイクロソフトLiveの三つには引き離されていますが、それでも世界4位のシェアを持つ検索エンジンで、数パーセントであってもユーザ数、アクセス数は膨大なはずです。
しかし、Matt Cutts氏は、彼のブログのAlexaトラフィックをAskのそれと比較し、Askの4分の1ものアクセスが彼のブログにあることになっているのを発見しました。
彼のブログは確かに人気ブログですが、ニュースやブログなどでの取り上げられ方や世の中の一般ネットユーザの認知度からいってもこの結果はありえません。
彼のブログを購読するような人のほとんどが、SEO業者やSEOに興味のある人で、そのような人たちはAlexaツールバーをインストールしている割合は、一般のネットユーザよりもはるかに高いはずです。そのために、Alexaのデータ上ではありえないほど大きなトラフィックがあるように見えてしまったのでしょう。
このブログに限らず、SEO関係の人気サイトやブログは、Alexaの統計では実際のアクセス数よりもかなり上位に出る傾向にあることが知られています。
ユーザによるサーバ側統計とのつきあわせプロジェクト
アレクサのデータの信頼度を調べるために運営されているこのようなサイトもあります。
Alexaのランキングと、実際にアクセスしたユニークビジター数の相関を、さまざまなサイトの運営者からデータを集めることで求めようというプロジェクトです。
このプロジェクトにデータを提供しているのは、サイトにやってきた匿名のサイト管理者なので、入力されたランキングとサーバサイドのデータが正確かどうかという保証はありません。
それでも、たとえイタズラによる嘘の入力があったとしても、これだけ多くの参加者が無意味に違う数値をわざわざ入れるとは考えにくいです。ここは、ほとんどのデータが事実であるとして話を進めます。
グラフ中の線が、全体的な相関関係を代表したものとなります。なんとなく、ランクが上のほうが実際のアクセス数が多そう、という相関関係が見られて、グラフ中にも相関の線は引いてあります。
しかし、個々の点が線から大きく離れているケースも、かなりあることがわかります。Alexaでのランクは高いのに、実際のアクセスは非常に少ないサイトもあれば、Alexaでは低い評価でも、同じランクの他のサイトに比べて10倍以上のアクセスがあったり、というのもそこそこあるようです。
このような実状を知っていれば、Alexaで出てくるランキングやトラフィック量を成果測定や広告効果の推定に使うのは危うい、というのは自然と導き出されるのではないでしょうか。
国ごとのデータ提供者数の変動が大きい
Matt Cutts氏の例のように、アレクサのツールバーを入れるか入れないかによって、特定のカテゴリのドメインが実力以上に高く集計されてしまうことが起こりえます。
この現象が非常に大きな形で出てくる別の事例が、国、より正確には言語によるツールバー普及数の変動です。
アレクサの統計データがウェブ全体のトラフィックをより正しく切り取るためには、アレクサ・ツールバーを使うユーザが偏りを持たないことが条件となります。
しかし、アレクサやアレクサ・ツールバーの存在はどのようにして知られ、普及するのでしょうか? それは、この連載を含むウェブサイト運営者向けの情報サイトでの解説記事や、ブログなどでの紹介によるものでしょう。
でも、全世界のユーザに対して一斉に同じ記事やブログが影響を及ぼすことはありません。その最も大きな要因は、言語の壁です。この連載の記事が公開されたときに、アレクサのことを知ってツールバーをインストールするのは、日本語の読めるユーザだけですから、そこでは日本語のサイトをよく見る、あるいはほとんど日本語のサイトしか巡回することがないユーザです。
このように、ある言語でアレクサが紹介され、その言語内で突然、アレクサ・ツールバーの普及率が高まる、という現象は実際に観測されています。実例を見てみましょう。
モンゴルのデータを例に、アレクサの統計の弱点を検証する
Alexaでは、国別のトラフィック上位サイトをランキングしているので、モンゴルの上位サイトを見てみます。
ここから、モンゴル向けにのみモンゴル語で提供されている上位サービスについて、いくつか過去5年間の統計データを見てみましょう。
さて、アレクサのデータからすると、モンゴルで上位の人気サイトは、どれも2007年に入ってから10倍近いトラフィックの伸びをしめしています。モンゴルで携帯電話の普及が伸びているというニュースはどこかで見ましたが、ウェブの利用が一年もしないうちに本当に10倍に伸びたのでしょうか?
他の指標とつきあわせるという意味で、モンゴルの政府統計公報を見てみます。幸い、モンゴル語と英語の併記となっていました。公開されている最新の2007年6月版 [pdf]によれば、インターネットの利用料金も、インターネットアクセスの提供規模も、2006年とほとんど変わるところがありません。
次に、モンゴルの国別ドメイン(.mn)で、アレクサ(alexa.com)について語られているページを検索エンジンで検索してみます。
出てきたほとんどのサイトはモンゴル語で読めませんが、いくつか開いてブログらしいものの日付を見てみると、早いもので2006年の10月、多くは2007年の言及です。
この例から読み取れるように、モンゴル語圏のウェブでは、2006年の終わりごろからアレクサとアレクサ・ツールバーの存在が知られるようになり、それに呼応するようにモンゴルでサービスをしているネットサービスの多くが、実際にはありえないほどの伸びを、それもほぼ同じ伸び率で記録していることになります。
今回たまたまモンゴルを対象に調べてみて、例として出すには極端すぎる結果が出たので私も驚いたのですが、モンゴルの場合はネット人口もですが総人口自体が小さいこともその理由かと思います。以前ベトナムでも同様の調査をし、主要なベトナムのサイトについてアレクサの統計がある期間に突然2倍になったのもわかっています。
世界でのツールバー普及動向に翻弄されるトラフィック統計
欧米や日本では、アレクサ・ツールバーはかなり以前から知られていて、SEOの業者やサイト運営者にはインストールしていた人も多くいました。その後、このツールバーをスパイウェアと認定して(見ているサイトの情報を送るという意味では、アレクサが信用できなければそういう考えもできるでしょう)削除するウィルス対策ツールが登場したりと、ツールバー利用者の数は伸びていません。
しかし、最近になってネットが普及してきたような国では特に、今アレクサが知られ、ツールバーが大量にインストールされているという事情があります。そのために、全世界の統計に対する割合でトラフィックの数値やグラフが出るアレクサでは、実際のトラフィックが減少していないにも関わらず、アメリカや日本でサービスを行っているサイトの数値が最近になって減少してきているように見えてしまうのです。
米国のユーザからは米国外の、特に非英語圏のネットの情勢は注目されにくいため、この要因に関しては英語圏でもまだあまり広まっていない話ですが、筆者としてはこの要因はかなり大きく、アレクサの統計データを使って特定の国(言語)のウェブ市場の浮沈を語ることをほとんど不可能にしていると見ています。
今回のまとめ
アレクサにデータを送っている人の構成によって、アレクサの統計データは簡単に変化してしまうことがわかったと思います。
アレクサのトラフィックデータは、単体でそれのみを使って何かを判断するには向いていないデータだといえます。
最近は、アレクサのグラフで語ることの危険性が多少理解されてきたようで、以前のような断定口調の記事やブログは減り、「あくまで参考資料」というかんじで添えられることが多くなったように見えます。
また、アレクサの競合サービスから統計やグラフを持ってくるケースも増えてきましたが、その競合サービスがどのようにデータを集めているのか理解していないと、結局同じ失敗を繰り返しているだけになる、というのは注意を喚起しておきたいと思います。アレクサの競合サービス達については、この連載の後の回でまとめてご紹介しようかと考えています。
2007年09月14日
Alexa(アレクサ)の間違った使い方
MarkeZine併載コラム 第七回
今回はアレクサで比較しちゃだめですよ、というケースを実際にあげて説明してみた。
このシリーズは、Markezineの連載との併載になっている。説明図なども作ってもらっているのでマーケジンのほうが読みやすいかも。
いよいよアレクサの深い話に
アレクサとは何か?から始まり、これまで6回に渡ってその原理、読みかた、ツールバーのインストールなど基本的な項目をご説明してきました。
今回からはいよいよ、アレクサ自身が積極的には言わない事柄についてお話していきます。「アレクサ自体のことは知ってるから今さら説明なんか要らないよ」というみなさんはお待たせいたしました。
アレクサについてのよくある誤解
第三回でお話したように、アレクサは「ブラウザによる」「ウェブサイトへの」アクセス情報を収集・提供するサービスです。
アレクサの統計が何をどう集めたデータかということを理解しないまま、闇雲にいろんなドメインを入れて比較をすると、(当然ですが)「このサイトはこれぐらいの人気だろう」という実感とは食い違った数値やグラフが出てくることがあります。
そのような驚きを元に間違った解説をするブログ記事などが後を絶ちませんので、実際に私が見たことのある例などをあげつつ「アレクサではわからないこと」を見ていきましょう。
ブラウザを使わないサービスを調べても無意味
セカンドライフといえば、単なる一過性のブームか、それとも新世代の人気サービスかという論争もかまびすしい、3Dの仮想空間で遊ぶオンラインアプリケーションですね。
このセカンドライフと、日本のソーシャルネットワーク最大手ミクシィの勢いをアレクサのグラフで比べて、「ミクシィと比べればセカンドライフは言われるほど盛り上がってない」と書かれた人がいました。
しかし、セカンドライフはブラウザではなく専用クライアントを使ったネットワークアプリケーションなので、セカンドライフにどれだけユーザが殺到しようと、アレクサにそのデータが送られることはありません。アレクサで出るのは、セカンドライフの案内サイトのアクセス数です。
セカンドライフのウェブサイトと別のオンラインゲームのウェブサイトとを比較をして、「オンラインゲームの(ゲーム本体ではなく)ウェブサイトのトラフィック比較」であれば意味はありますね。もちろん、その場合でも、ウェブサイトの人気とゲーム自体の人気が比例するわけではないことには注意してください。
その場合に出てくるのは、ゲーム同士の人気度の比ではありません。そのゲームの公式ウェブサイトのトラフィックの多い少ないです。ゲームよりもウェブサイトでのコミュニティが充実したサイトや、ゲームのバグ修正パッチをウェブサイトで頻繁に提供しているような会社のほうがアレクサでは良い数値を出すかもしれません。
ケータイ向けサイトを比較しても無意味
携帯電話のブラウザには、アレクサのツールバーは当然入っていません。
これらのブラウザからのアクセスは、Webサーバのログ解析ツールや、(Javascriptが動くブラウザであれば)スクリプト埋め込み式のアクセス解析ツールではわかりますが、アレクサのデータには入ってきません。
当然、モバゲータウンのようなモバイルユーザ中心のネットサービスは、実際に携帯電話でどれだけ人気があっても、アレクサ上ではたいして大きな数字は出ません。
パソコンからモバゲータウンのアドレスを知りたくて検索した人は、案内のためのPCサイトに辿りつくでしょうけれど、実際に入会して毎日アクセスするのはそのPCサイトではないのですから。
ですから、携帯サービスがメインのサービスと、PC向けがメインのサービスをアレクサで比べても、何も意味のある比較にはなってないわけです。当然、PCサイトに力を入れているサービスのほうが、アレクサではより高アクセスとして表示されます。その比較は、必ずしも携帯サービスとしての人気の多寡とは相関しないでしょう。
ゲーム機用のサイトも同様
Wiiやプレイステーション3、Nintendo DSといったゲーム機でもブラウザが使えるようになってきました。これらのブラウザにも、ケータイと同様、アレクサにアクセスデータを送る機能はありません。
ゲーム機のブラウザから閲覧されることが多いであろうゲーム関連のサイトでも、アレクサではアクセス数が実際よりも小さく出てしまうと思われます。たとえば、任天堂のWiiブラウザで楽しめるウェブサイトがどれだけ人気になっても、アレクサにはそのアクセス情報は届かないのですから。
MacintoshやLinuxユーザ、Operaユーザなどのためのサイトも
まったく意味がないとは言いませんが、アップル社のパソコン・マッキントッシュの情報を集めたサイトの人気度を見るのにアレクサを使っても、そこに出るのは「『Windowsユーザで』マックの情報サイトを見るような人の統計」ですから、マックのヘビーユーザがどのマック関連サイトを良く見ているか、といった情報は取れません。
むしろ、「Windowsユーザのためのマック入門」のようなサイトが、実際より良い結果になってしまうかもしれません。
ドメインが違えば統計も異なる
ユーザから見て一つのサービスに見えても、ドメインを見ると複数のドメインから構成されるようなウェブサイトもあります。
サブサービスのための別のドメインを使ったり、ブログサービスなどで表示するときと書くときのドメインが別だったりというようなことは、それなりにあります。
たとえば、株式会社はてなのサービスRimoは、rimo.tvという別のドメインを使っています。これは、アレクサで"hatena.ne.jp"を調べても含まれてはいません。もし「会社としての」トラフィックを他社と比べたいのであれば、アレクサでの比較では不適切となる場合もあるかもしれません。
広告キャンペーンなどのためにある商品のために専用ドメインを取るような企業も同様ですね。アレクサはあくまでも「ドメインの」トラフィック統計ですから、代表的なドメインだけで比較したつもりでいては、同じ運営者による別ドメインのトラフィックを見逃してしまうこともありそうです。
違う性質のウェブサイトは比較しにくい
アレクサが取っているのはページの表示回数です。さて、「ページの表示回数が多ければ人気が高い」という命題は、常に正しいと言えるでしょうか?
求める情報を得るまでに何クリックも必要な構成のサイトであれば、アレクサのトラフィックも大きく出ます。
特に、ソーシャルネットワークサービスのように、何十分もサイト内を巡回して、友達や掲示を読んで回るスタイルのサービスは、アレクサでは上位に行きやすいでしょう。
それを理解した上で異業種のサイトをアレクサで比較するのであれば構いませんが、基本的には同業や似た性質のサイトを比較するための道具として使うのが無難です。
API経由のトラフィックなどは見えない
WebサービスのAPIやウィジェット(ブログパーツ)経由で広く提供しているサービスがあります。他のサイトにニュース等を提供したり、広告などを貼り付けてもらったりするこれらのサービスのアクセスは、アレクサからはカウントされません。
RSS/Atomフィードなどによるコンテンツの提供も、アレクサから見えることはありません。
これらのAPIやスクリプトによるドメインを越えたデータ連携は、ネット上でも少しずつ存在感を増してきています。こういった他サイトとの連携に力を入れているサイトの勢いは、アレクサだけでは見つけられないかもしれませんね。
例として、アレクサでGoogleを見れば、Googleの検索や無料メールのサービスだけでも巨大なトラフィックが出てきますが、それに加えてGoogle AdSenseの広告ネットワークなどで、アレクサで取れるよりずっと大きなトラフィックが存在しているはずです。
まとめ
ドメインを入れるとトラフィックやそのグラフが出てくるアレクサは、直感的でに面白いサービスです。しかし、その原理を考えればなんでも正しく比較できるというわけではないことがわかります。
次回はさらに一歩踏み込んで、アレクサの統計データを恣意的に操作する方法などを解説します。
2007年08月10日
FirefoxでもAlexa(アレクサ) / Pathtraqリリース
MarkeZine併載コラム 第六回
今回はWindows/IE以外でのアレクサツールの紹介。
あと最後に、8日に公開されたサイボウズ・ラボの新アクセス解析サービスPathtraq(パストラック)の紹介。
このシリーズは、マーケジンの連載との併載になっている。
Windows/IE以外でもアレクサに参加できる
過去二回に渡り、Windows上のインターネットエクスプロラー(IE)向けのアレクサ・ツールバーについて説明をしてきました。今回は、それ以外の環境でアレクサの統計に参加するためのツールについて紹介します。
また、サイボウズ・ラボが新しくはじめた、アレクサの代わりと成り得るトラフィック集計サービスについても紹介させていただきます。
この記事はAlexa(アレクサ)に関する連載の第六回目になります。アレクサが何で、どう使うかということについては、第一回のアレクサとは何かからお読みいただければと思います。
AlexaデータはWindows/IEユーザの統計だった
前々回からご紹介しているアレクサ・ツールバーは、マイクロソフトWindows上のInternet Explorer専用のツールバーでした。
アレクサでは、ここ何年間のあいだというもの、このIE用のツールバーがAlexaの唯一の情報収集手段でした。(さらにその前には、NetscapeやIEにAlexaの機能が内蔵されていました。詳しくは連載の第三回をご覧ください)
一時期は、この構成でウェブにアクセスする人が90%を大きく越えるようなブラウザのシェアになっていたこともあり、そのような状況ではIEを使うユーザのアクセス先を調べていれば十分だったろう、というのもあったでしょう。。
しかし、その後、ブラウザの市場シェアは、Firefoxのシェアの増加や、アップルのマッキントッシュ(標準ブラウザはSafari)の復調などもあり、Intenet Explorerのバージョン4や5の時代に比べると、Intenet Explorerだけ対応していればいいという状況ではなくなってきています。
アメリカや日本はそれほどでもありませんが、ヨーロッパやオセアニアでは国によってはFirefoxのシェアがIEに迫るほど高いところもあり、IEユーザだけの統計を取っていては正確なトラフィック分析ができなくなりつつあります。(*1 http://www.xitimonitor.com/fr-fr/barometre-des-navigateurs/firefox-juillet-2007/index-1-1-3-102.html)
その様な状況下で先月リリースされたのが、Firefoxブラウザのための公式アレクサ・アドオンSparkyです。
Firefox向けの公式ツールバーSparky
Sparkyとは
正式名称が"The Alexa Toolbar for Firefox"(Firefox向けアレクサ・ツールバー)であることから、Firefoxユーザに対してアレクサ・ツールバーの機能を提供するものです。
また、ブラウザへの組み込みも、ツールバーという形式ではなく、機能追加のためのアドオンの仕組みに従っています。
IE版のツールバーには今はもう有用とはいえない機能も入っていますが、まったく同じ機能を揃えているわけではなく、独自のアドオンとなっています。
Sparkyのインストール
Sparkyのインストールは、他のFirefoxアドオンのインストールのしかたとまったく同様です。ダウンロードページから"Install Now"(いますぐインストール)のボタンをクリックすると、プライバシーポリシーの確認ページが出て、同意するとアドオンのダウンロードが始まります。
もし、次のような警告画面が出るようであれば、
「設定を変更」を押して、Sparkyの配布ドメイン"sparky.mozdev.org"を許可サイトに追加して、再度インストールを試みる必要があります。
インストールが終了したら、Firefoxを再起動すればSparkyが有効になります。
Sparkyの使い方
Sparkyがインストールされていれば、Firefoxブラウザのステータスバーに、最近のリーチ(Reach)の移り変わりをグラフにしたものや、アレクサ順位(Rank)ランクが数字と棒グラフで表示されます。
ページを移るたびに、今見ているページのドメインに関する情報が出てくるので、いろいろなページを見てアレクサのデータをチェックするような人には手間が省けて有用かと思います。
Sparkyのステータス表示の上で右クリックすると、メニューが出てきます。大きく3つにわかれており、1つめはアドオン自身の情報や、どの表示に関する設定です。
中段は、アレクサの検索エンジンに関する機能へのリンクです。検索エンジンとしてのアレクサはほとんど使う人もいませんが、今見ているドメインに関する検索を行なったり、キャッシュされたページを調べられます。
最後のグループは、今見ているページのドメインに関するアレクサの統計ページへのジャンプです。
また、ナビゲーションバーには、"Related Links"(関連するほかのサイト)を表示するメニューが追加されています。今見ているドメインと似ていたり、関連が深いドメインのサイトが推薦されます。
Firefox向けの非公式なアドオン
Sparkyが出る前から、Firefoxには「非公式」なAlexaツールバー相当のアドオンが複数存在しました。これらは、アレクサ社とは無関係にアレクサ・ツールバーの内部動作などを解析して勝手に作成されたものです。
アレクサの統計データの性格から、ウェブマーケッターやSEOを行なう人向けのアドオンに含まれていることが多いです。
SearchStatus アドオン
南アフリカのネットマーケティング会社Quirkによって提供されているSearchStatusアドオンは、SEOに関する様々な情報を現在開いているページに関して調べてくれる無料ツールです。
SearchStatusをFirefox上にインストールしておくと、ページの切り替え毎に、
- Googleページランク
- アレクサ順位
- アレクサの競合サービスの一つコンピート(Compete)の順位
などをステータスバーに表示してくれます。(表示方式や表示場所もカスタマイズできます)
SearchStatusアドオンは、Googleのページランクや、アレクサの競合サービスであるCompeteの順位も表示します。
Smart Toolbar アドオン
Smart Toolbarも、アレクサ順位、Googleページランク、バックリンク数やWhoisなどその他のSEOに関する情報を表示するためのFirefoxアドオンです。
RankQuest SEO Toolbarアドオン
RankQuest SEO Toolbarも、アレクサ順位やGoogleページランクのチェック機能を含んだアドオンです。
リンク切れのチェックなどSEOやサイトデザインに関する多くの機能を持っています。不完全ですが、メニューの一部は日本語化もされています。
このRankQuestは、Internet Explorer版のツールバーも作って配布しています。
その他のアレクサ関連Firefoxアドオン
About This Site(このサイトについて)アドオンなど、他にもAlexaの情報を取得表示する機能を持つアドオンは存在します。
また、AlexaのRelated Links機能を提供するアドオンとしてAlexa Sidebar AgainやMetaTagsがあります。
どのアドオンも、アレクサの統計データを表示するためにはアレクサに閲覧情報を送信しているので、公式でも非公式でも同じようにアレクサに一人分の閲覧データは送り込まれます。データ収集の内部仕様が変わらなければ、自分にとって一番便利なアドオンを使って問題ないと思います。
Sparkyが出る前から存在していたこれらのアドオンやSparkyによって、Firefoxのユーザの閲覧情報もアレクサの統計に反映されているといえます。また、FirefoxはMacOSXやLinuxなどでも動くので、Windows以外のユーザでもこれらのアドオンを使うことができるようになったわけです。
Pathtraq(パストラック)公開
筆者の所属するサイボウズ・ラボでは、8月8日に新しいトラフィック統計システムPathtraq(パストラック)をリリースいたしました。
アレクサの弱点や限界については、この連載でもいずれお話しする予定となっています。新サービスPathtraqは、それらの問題に対するサイボウズ・ラボからの対案です。
アレクサとパストラックでは、その内容や実現の仕組みに大きな違いがあります。詳しく知りたい方はぜひPathtraqのサイトや今後出てくるであろうニュース記事の解説をお読みいただきたいと思います。
一つだけ例としてあげると、たとえば、Alexaがドメイン単位での集計でしかなく、一つのドメインに異なる複数のウェブサイトやコンテンツがある場合にそれ以上の情報が見えてこないのに対して、Pathtraqではページごとのアクセスやページ間の遷移情報なども活用しています。
アレクサやその競合サービス(これらも今後紹介いたします)とは異なる、後発らしい工夫を盛り込んでありますので、ぜひお試しいただければと思います。ユーザ参加型のシステムですので、参加者が一定数を越えればかなり面白いサービスとなることでしょう。
今後の連載で、アレクサやその他の類似サービスの特徴について解説していきますが、そのときにパストラックについても必要に応じてお話させていただきます。
2007年07月19日
アレクサツールバー(Alexa Toolbar)の使い方 — MarkeZine併載コラム
MarkeZine併載コラム 第五回
今回はツールバーの使い方について。あと、急遽追加したFirefox向け新ツールバーSparkyについてちょっと。
このシリーズは、マーケジンの連載との併載になっている。
アレクサ・ツールバーの使い方
連載の前回第四回では、アレクサ・ツールバーのWindowsへのインストールについて説明いたしました。今回は、インストールしたアレクサ・ツールバーの使い方について解説させていただきます。
なお、アレクサとは何か、そのデータをどう読むか、アレクサの内部の仕組み、などについては連載の初期の回をご覧ください。
インストールされたツールバーを確認する
前回のインストール手順を終了したら、Internet Explorer(バージョン6または7。画面イメージはInternet Explorer 7のものを使っています)を開いてください。
ブラウザの最上部にアドレスバーがあり、その次にアレクサ・ツールバーが表示されます。
ツールバーは、右側の[ツール]-[ツールバー]で表示・非表示を切り替えることができます。常にアレクサ・ツールバーを使わないという場合は非表示にすることでブラウザの表示画面を広くできます。
ツールバー上の各機能
ツールバーの左側から順に、ツールバーの表示内容と機能を見ていきましょう。
Alexaロゴ
左端のAlexaロゴをクリックすると、Alexa.comに飛びます。また、その右側にある矢印のプルダウンメニューからは、ツールバーの概要(Quick Tour)、ヘルプ(Help)、プライバシーポリシーなどのページへジャンプすることができます。
オプション(Options)については後で説明します。
検索ボックス(Search)
テキストボックスにキーワードを入れ、Enterを押すかその右の[Search]ボタンをクリックすることで、ヤフーやGoogleなどの検索サイトに行かなくても、直接ブラウザから検索をすることができます。
とはいっても、ここで使われる検索エンジンはヤフーやGoogleではなく、Amazon/Alexaの独自検索エンジンで、日本語の扱いもあまり良くありません。筆者が試したときには、検索結果の日本語が多数、ローマ字表記になってしまっていました。
[Search]ボタン右側のプルダウンからは、他に
- 現在見ているドメインからだけ検索
- Amazon.com(アメリカの方です)を検索する
- Wikitionary(オープンな辞書サイト)を検索する
- Wikipedia(オープンな百科事典サイト)検索を検索する
などを選んで検索することもできます。ただしどれも英語圏向けの検索となるので、あまり使う機会はないかもしれません。
サイト情報(info)
このツールバーの本来機能である、アレクサの統計データ関連の機能がこれになります。
ここには、ブラウザで今開いているドメインについての、世界におけるトラフィック順位の数字と、その順位の三ヶ月前からの変動が矢印で表示されます。
この上にマウスを置くと、アレクサが知っているそのドメインのオーナー情報などが簡単に表示されます。
[info]をクリックすると現ページに関するアレクサの概要ページ(Overview)、数字をクリックすると現ページに関するアレクサのトラフィック詳細ページ(Traffic Detail)にジャンプします。
いろいろなウェブサイトを見て、それらのサイト・ドメインに関するアレクサの情報を多用するような人には便利と言えるかもしれません。
また、プルダウンの最下部に出ている"The Web You Made"ボタンを押すと、あなたが最近閲覧したドメインの情報がまとまったアレクサのページに誘導されます。
自分の閲覧履歴がアレクサにまとめられてしまうことには気味の悪さもあるでしょう。この機能は後述のOptions画面でオフにできます。
この機能はあまりメンテナンスされていないようで、私が試したときはページ上のギミックがエラーで動きませんでした。
関連サイト(Related Links)
こちらもアレクサの主要機能である、関連するサイト(ドメイン)の一覧表示です。ツールバーの中央から右側にかけて、今見ているドメインと良く似ている・読者が近いとアレクサが判定したドメインが列挙されます。
あとは、ツールバーの右側から4つのアイコン・ロゴが並びます。これらも左から説明します。
ポップアップ・ブロッカー機能(Alexa popup manager)
アレクサ・ツールバーには、広告などわずらわしいポップアップ画面を制御してポップアップ画面が出ないようにしてくれる機能もあります。このアイコンを押すとポップアップ・ブロック機能の利用状況が確認できます。
ちなみに、ポップアップをブロックする機能は、他社のツールバーにも載っているものが多いですし、最近ではブラウザによってはブラウザ自身が内蔵していたりもします。
友人に教える機能(Tell a friend)
手紙を開けているようなアイコンを押すと、今見ているURLについて知り合いにメールするためのポップアップ画面が開きます。
昔のページを見る機能(Wayback Machine)
過去のページを巨大なデータベースに保存しているインターネット・アーカイブのサービスを呼び出すボタンです。
今開いているページが、以前はどのようなページだったのかというのを見ることができます。
インターネット・アーカイブは非営利団体ですが、データに関してアレクサ・インターネットと提携をしているので、その縁でアイコンが載っているようです。
amazonのロゴ
アレクサの親会社であるアマゾンへのロゴとリンクです。
以上で、アレクサ・ツールバーに表示されている機能をすべて紹介しました。
右クリックメニューの機能
表示されているページ上で右クリックしたときに表示されるメニューからも、そのページのアレクサ情報ページに飛ぶことができます。右クリックメニューに出る"Get Alexa Data"がそれになります。
また、テキストを選択した状態で右クリックを押すと、メニューに"Alexa Web Search"が出てきます。これは、今選択しているテキストで、アレクサの検索エンジンを呼び出します。
閲覧しているページURLの送信機能
この他に、目に見えないけども非常に肝心な機能として、ブラウザで開いているページのアドレスをアレクサに送信する機能がツールバーにはついています。
ツールバーを通して世界中から集められるこの訪問データを集計することで、アレクサの統計データは作成されているのです。
ツールバーのオプション設定
ツールバーの左端、Alexaロゴの右にあるプルダウンの最後の項目"Options"(オプション)から、ツールバーの動作設定をすることができます。
一般設定(General Options)
"Search Box"は、ツールバーの検索ボックスの大きさを、狭くしたり広くしたりするものです。
"Buttons"では、ツールバーのボタンの表示を、「アイコンのみ」「アイコンと、いくつかはテキストも添える」「アイコンとテキスト」から選べます。
その下の"Special Feature"は、ツールバーとアレクサが提供する機能のオン・オフを設定できます。
一つ目の"Enable The Web You Made"は、前述した"The Web You Made"というあなたの最近の閲覧履歴をまとめたページを作らせるかどうかというオプションです。このページを作らせたくない場合はオフにしてください。
二つ目の"Pre-fill search box"オプションについては、Alexa自身のヘルプページにすでに記述がなく、ネット上でも説明を見つけることはできませんでした。ツールバーの検索ボックスが過去の検索キーワードを記録するか、というようにも読めますが、設定を変えても特に動作に変化はありませんでした。Alexa社に問い合わせをしていますのでわかり次第連載の後の回で述べたいと思います。
最後のチェックボックス"Enable Toolbar Hints on Startup"は、ブラウザのデフォルトページに行った時にたまに表示される、アレクサからのツールバーに関するヒントを表示させるかどうかです。
ポップアップ・マネージャー(Popup Manager)
ポップアップ・ブロック機能を使わないときは、"Enable Popup Manager"のチェックをオフにしてください。
その下の"Show Popup Manager Status on Toolbar"のチェックをオフにすると、ポップアップ・ブロック機能のアイコンがツールバーに表示されなくなります。
最後のフォームでは、常にポップアップを許すサイト、常にポップアップを禁止するサイトのリストを管理することができます。
アレクサ・ツールバーは役に立つのか?
今回は、アレクサ・ツールバーの機能を一通り説明しました。元々英語版しか提供されていないこともあり、ネット上の情報と連携する付加機能は日本のユーザに取ってはあまり使えないものも多いかと思います。
以前の回でも説明したように、アレクサ・ツールバーが閲覧したページのURLをアレクサに逐一送ってしまうことから、このツールバーをスパイウェアだとする人もいますし、ウィルス対策ソフトの中にもこのツールバーを排除しようというものは一つならず存在します。
そのような状況で、このツールバーをインストールする理由があるとすれば、アレクサのデータ集計に実際に参加してみるという意味と、自分や自分のまわりの人がツールバーでデータを送ることで、どれぐらいアレクサの統計が変動するのか、というのを確認するための意味ぐらいでしょうか。
次回は、アレクサの公式サイトやツールバーとは無関係に、アレクサに関連したツールやサービスなどの紹介をしようかと思います。
Firefox向け公式ツールバーSparky公開
今回の解説を公開する直前に、Alexaから新しいツールが公開されたのでご紹介いたします。
Firefoxのアドオンとして機能するAlexaツールバーで、Sparkyという名前がついています。
Firefox向けには、勝手に作成された同種のアドオンは既にいくつか存在しています。しかし、Alexa自身が公式なツールバーを出したことで、これまでWindows/Internet Explorerの利用者のアクセス統計しか集めていなかった、というAlexaへの批判に対する一つの回答になるのかなと思います。
FirefoxでAlexaにアクセスすると、Sparkyのダウンロードページへの誘導が出ます。インストールは他のFirefoxアドオンとまったく同じなので、すぐに試して見たい方はFirefoxのアドオンのインストール方法を解説しているページを検索されるといいでしょう。この連載でもいずれ紹介したいと思います。
2007年06月21日
アレクサツールバー(Alexa Toolbar)のインストール — MarkeZine併載コラム
MarkeZine併載コラム 第四回
今回はツールバーのインストール手順の説明。
このシリーズは、マーケジンの連載との併載になっている。
アレクサにデータを送る側になってみる
第一回、第二回ではアレクサの数値の読み方、第三回ではアレクサの仕組みについて解説してきました。
四回目の今回は、アレクサにデータを送り、そのネットワークに参加するための公式な方法である、アレクサツールバーのインストールについて説明します。
誰でも参加できる
テレビの視聴率の場合、実際の視聴状況を調べられる家庭(調査パネル、モニター家庭)には、なりたいと思ってもなることは困難です。
それどころか、そのようなモニター家庭の情報は厳重に管理されていて、モニター家庭の中の人が表に出てくることはありません。これは、調査対象の数が非常に少ない(関東で数百軒)ことから、不正で視聴率が変わってしまう可能性もあるからでしょう。実際に、テレビ局のプロデューサーがモニター家庭を買収した事件も発生しています。
それに対し、アレクサでは、常に広く調査パネルを募集し続けています。
アレクサは調査パネルの総数を明らかにしていないのですが、一人二人増えたところで大きく統計に影響しない程度の規模はあるようです。ソフトウェアをダウンロードで配ってしまえば、それだけで調査対象が増え、データの取得もネットワークに置いたサーバが勝手にやってくれるわけですから、テレビやラジオの調査とは調査対象を広げる感覚がまったく違うところですね。
ウィルス対策ソフトウェアとの相性
アレクサツールバーは、その仕組み(第三回参照)から、閲覧中のURLをアレクサ社に逐次送信します。ウィルス対策ソフトウェアのベンダーによっては、この挙動を「スパイウェア」とみなしており、そのような会社のウィルス対策ソフトが常駐している場合、インストーラの実行やツールバーの実行をブロックしたり、インストールされたツールバーを削除しようとしたりします。
アレクサツールバーをウィルスと判定した、あるウィルス対策ソフトウェアの警告画面
アレクサツールバーを試してみたい場合は、一時的にウィルス対策ソフトウェアを停止するなどすれば、インストールもでき、使ってみることはできます。または、アレクサをスパイウェアと判定しないように設定できるウィルス対策ソフトウェアもあるかもしれません。
そうでない場合は、無理にアレクサツールバーを使わず、ウィルス対策ソフトウェアを優先させたほうが良いでしょう。
アレクサツールバー
アレクサの配布している公式なツールが、Windowsで動くInternet Explorer用のアレクサツールバーです。今回は、このツールバーのインストール手順を追って解説します。
連載の前回から、またしてもトップページのデザインが変わってしまいました。
アレクサトップページ
トップページの最上段メニューから、"Alexa Toolbar"をクリックすると、ツールバーの配布ページへ行けます。
アレクサツールバー配布ページ
ツールバーのインストール
配布ページの"Install Toolbar"をクリックしてください。アレクサツールバーの対応しているブラウザ(WindowsのInternet Explorer6.0以降)であれば、インストーラのダウンロードが開始しますので、このファイルをどこかへ保存してください。
アレクサツールバーのダウンロード確認
もしここで"Browser Version Not Supported"のページが表示された場合は、お使いのブラウザで使えるアレクサツールバーは無いということになります。
ダウンロードが終了したら、ダウンロードされたファイル AlexaInstaller.exe を実行してください。Windowsのバージョンやセキュリティ関連の設定によって、外部のプログラムをインストールすることについての確認の警告ウィンドウがでるかもしれません。
インストーラを実行することについて、Windows XPの警告
インストーラでは、"Next"、"I Agree"、"Next"、"Install"と進んでいけば、デフォルトのインストールフォルダにAlexaがインストールされます。
もちろん、"I Agree"では表示される利用許諾を読んだ上で同意したことを示すことになるため、アレクサツールバーの利用に関して心配のある方は、英語ですが利用許諾を通読される必要があるでしょう。
アレクサツールバーのインストール途中
インストーラの最後では、アレクサのサイトをブラウザのホームページにするか訊かれます。ブラウザのホームページに指定して便利なウェブサイトは他にたくさんありますし、アレクサをホームページにすることはありえないでしょうから、このチェックはつけないほうがいいでしょう。
アレクサツールバーのインストール完了画面
"Finish"で終了すると、Internet Explorerが再起動し(他の画面も開いている場合は、再起動してよいか確認がされます)、IEの上部のツールバーに、一列分のアレクサツールバーが表示されます。
また、インストール直後は、利用者アンケートのページに飛ぶようになっています。ここで性別・年齢・年収・人種・最終学歴・子供の有無・ツールバーをインストールした場所、などを回答すると、Alexaの統計データに反映されるかもしれません。(実際にこれらを元に分類した統計は、今のところアレクサでは提供されていませんが)
アレクサツールバーのインストール後のアンケートページ
アンケートに回答するのが嫌な場合は、"No Thanks"ボタンをおしてください。インストールの完了と、アレクサツールバーの解説のページに飛びます。
アレクサツールバーのインストール後のアンケートページ
ここでInternet Explorerの再起動が行なわれます。再起動した後、Internet Explorerの上部にアレクサツールバーが表示されます。
使い方と次回予告
インストールの手順だけでかなりの分量になってしまいました。この状態で、あなたがInternet Explorerで閲覧したページのURLがアレクサ社に逐一送信されています。また、ポップアップウィンドウをブロックする機能なども有効になっています。
ツールバーの細かい機能と利用法については次回に説明します。
すべての機能を把握するまではツールバーにデータを収集させたくない、という場合は、メニュー[ツール]-[ツールバー]から[Alexa Toolbar]を非表示にすると、データを送らなくなります。
または、[コントロールパネル]の[プログラムの追加と削除]から"Alexa Toolbar"を一旦削除し、連載の次回をお待ちください。
投稿者 秋元 : 11:00 | コメント (4) | トラックバック
2007年05月08日
アレクサ(Alexa)動作の仕組み — MarkeZine併載コラム
MarkeZine併載コラム 第三回
図表入りの完成版はマーケジンの連載をどうぞ。
アレクサはどうやって動いているか
第一回、第二回と、アレクサ(Alexa)の統計データの読み方について説明をしてきました。
今回は、アレクサがどのようにして統計データを作っているのか、というアレクサの内部の仕組みについて解説します。
アレクサがどのようにしてデータを集めているのかを知らずに、アレクサの統計データを盲信してしまう例がネット上には氾濫しています。データ収集の仕組みを理解していれば、アレクサに何ができて何ができないのか、というのも自然にわかるでしょう。
他人のアクセスを数える仕組み
ワールドワイドウェブ(WWW)上でのネットサービスは、クライアント(ブラウザ)がサービスを受けたいウェブサイトのサーバに一対一で直接アクセスする分散型のサービスです。
どこかに巨大な中央サーバがあり、すべてのアクセスがそこを通っているのであれば、そこで集計をすることで人気の順位はわかります。
しかし、誰もが勝手に好きなサーバにアクセスするウェブの世界では、クライアントのブラウザか、サーバのウェブサイトのどちらかで、アクセスを捕捉しなければこのような統計値は取れません。
クライアントともサーバとも関係の無い、まったくの第三者であるアレクサは、クライアントのブラウザにデータ集計のためのツールを組み込んでもらうことによって、そのユーザのアクセス先情報を収集しているのです。
昔はブラウザに組み込まれていたAlexaの集計ツール
マイクロソフト ウィンドウズに同梱されているブラウザInternet Explorerのかなり昔のバージョンや、一時期のNetscape/Mozillaブラウザには、このアレクサのデータ収集ツールが内蔵されていた時期がありました。
これらのブラウザでは、閲覧中のサイトに似ている関連サイトを教えてくれるという機能をオンにすることができたのですが、実はこれがアレクサの仕組みを使ったものだったのです。アレクサのサーバに対して見ているページのアドレスを流す代わりに、同じページを見ているほかの人達がどんなウェブサイトを見ているのかという情報が得られるという、いわばギブアンドテイクの情報サービスだというわけです。
そのような事情から、2000年頃にはアレクサは非常に多くのウェブユーザのアクセス情報を収集できていました。多くの、さまざまなユーザからのデータを集められたことで、データの信頼度は高かったといえますし、その情報が確からしかったことで、アレクサの情報もウェブサイト運営者のチェックすべき指標の一つとなったのです。
しかし、その後、Internet ExplorerやFirefoxなどの有名なブラウザに最初からこの仕組みが登録されるということはなくなりました。アレクサからみれば、もっとも重要なデータの入手経路が経たれたことになります。
今は希望者がインストールするAlexaツールバーで集計
そこで、アレクサは減少するデータ取得先をカバーするために、アレクサ・ツールバーの配布に力を入れます。Internet Explorer用に作られたこのツールバーをインストールすると、上記の類似サイト情報を表示する機能を付け加えたり、アレクサのページに行かなくても今見ているページのアレクサ・ランキング等をブラウザのメニューに表示させることができます。
アレクサ・ツールバーの配布ページ:
アレクサのランキングやリーチを参考にしていたウェブマスターやマーケッターを中心に、アレクサ・ツールバーはそこそこ広まっていきました。
その他のデータ入手先
Amazonの所有している検索エンジンであるa9.comが提供するA9ツールバーでも、アレクサのデータを集めていました。A9ツールバーは、FirefoxやMozillaブラウザ版も提供されたことから、アレクサに興味のあるFirefox/Mozilla系のユーザにとっての選択肢となりました。
また、A9ツールバーは、アレクサ・ツールバーとはまた異なるオマケ機能(Diary機能など)を付加することで別の対象からもアクセス情報を収集しようとしました。しかしその後、A9.comの開発方針の変更に伴い、A9ツールバーの開発・サポートは中止し、A9ツールバー自体もアンインストールするように呼びかけられています。( http://toolbar.a9.com/ )
A9ツールバー配布終了の告知ページ:
また、それらのツールバーが対応していないOSやブラウザの利用者の中には、アレクサ・ツールバーの動作を解析し、それと同じように振舞うクローンツールを書いた人たちもいます。たとえば、FirefoxブラウザでAlexaのデータを表示するためのアドオンツールなどがそれにあたります。
これらの勝手に作成されたクローンから送られたアクセス情報も、Alexaの集計データに反映されているはずです。
Alexaツールバーが行なっていることを見てみる
では、アレクサ・ツールバーがInternet Explorerにインストールされているときに背後で何が起こっているのか、簡単に見てみましょう。
ブラウザからインターネットへのアクセスを監視するようなプログラム(プロキシ)を設定した上で、Internet Explorerから適当なウェブサイトをアクセスしてみます。
実験では、なるべく読み込むファイルの少ないサイトがわかりやすいので、グーグルのサイトにアクセスしてみました。
その際に、Internet Explorer(の中のアレクサ・ツールバー)から、以下のようなリクエストが、http://data.alexa.com/ というアレクサのサイトに向かって送信されていました。
アレクサ・ツールバーがアレクサに送信していたデータ:GET /data/**************?cli=10&dat=snba&ver=7.2&cdt=********&url=http://www.google.co.jp/ HTTP/1.1
ブラウザの解像度などいろいろな情報が含まれているのですが、私のPCに固有の部分は***で隠してあります。
送られているリクエストの末尾には、IEで開いたグーグルのURLが含まれていますね。これを受け取ることで、アレクサは、あるユーザがこの時刻に、グーグルのトップページに一回アクセスした、ということを知ることができるわけです。
ネットサーフィンでページを切り替えるたびに、新たに表示したページのURLが全部、アレクサに送られます。
あとは、世界中のツールバーユーザから送られてきたこのようなデータを集計し、グラフも作ることで、これまで見てきたような統計情報が提供できている、というわけです。
前述のアレクサ・ツールバー互換ツールも、この同じ情報を自分で組み立てて送ることで、引き換えにオリジナルのツールバーと同様のランキング情報などを得るようにできています。
まとめ
現在のアレクサは、主にアレクサ・ツールバーを配布し、そこから収集したアクセス先やアクセス回数のデータを集計することで、各ドメインへのアクセス数や頻度の統計を作っていることがわかりました。
直感的に、インストールした人だけから集めたデータでどれだけ正確な統計になるのか、という疑問がわいてくるのではないかと思います。
また、見ているページの情報を全部他社(アレクサ)に送ってしまうという仕組みはどうなのか、と感じられた方もいるかもしれません。これについても実際に議論が起こっています。
この連載の次回以降の回で、それらの問題についても説明したいと思います。
2007年03月07日
Alexa(アレクサ)とは何か
MarkeZine併載コラム
ウェブマーケッター向けのオンラインマガジンMarkeZine(マーケジン)より、アレクサの解説をしてほしいという依頼を受けた。アレクサについては面白い情報が取れるものの、情報不足や誤解もいろいろとあるようなので頑張って書いていこうと思う。
当ブログでも同日併載する条件で引き受けたので、元原稿をベースにしたものをこちらでも掲載していく。Markezine側の記事では図表を作っていただいたり、プロの編集の手が入っているので、よりわかりやすいのではと思う。
アレクサ(Alexa)とは何か
アレクサ・インターネット(Alexa Internet, Inc. 以下「アレクサ」)は、オンライン書店世界一のアマゾン・ドットコム(Amazon.com)が1999年に買収した子会社で、ウェブサイトのアクセス数を調査・統計することを事業の一つにしている企業です。
ネット以外の世界で一番コンセプトの近いものをあげるとすれば、テレビの視聴率調査でしょう。アレクサでは、世界中のネットユーザーからサンプルを集めて、それらサンプルユーザのウェブサーフィン情報を解析することで、ウェブサイトのアクセス数を類推しています。
この連載では、アレクサについて、その活用方法、内部的なしくみ、関連ソフトやサービス、統計情報の信頼度や正確さ、といった項目について解説していきます。
連載の前半では、ウェブサイトのアクセス数やその他の統計値の読みかたについて説明します。後半では、アレクサではできないこと、アレクサの出す数字の限界やその問題点についても話すことになるでしょう。
注意: 連載前半だけの情報を基に、アレクサの数値をウェブサイト運営やプロモーションの達成度を測る指標に利用することはお勧めしません。
アレクサには、英語のページしか用意されていません。そのために、日本語ユーザにとっては少しとっつきにくいかもしれません。しかし、変動する部分の数値やグラフの読みかたにさえ慣れてしまえば、英語の文章を読む必要なく使えるようになるでしょう。
今回は、ソーシャルネットワークサービス(SNS)のミクシィ( http://mixi.jp/ )を例に、アレクサの情報を表示してみます。
SNSの多くは、ユーザがログインしないとほとんどのページは見えません。このようなクローズドなネットサービスでは、検索エンジンやソーシャル系サービス(共有ブックマークサービスなど)でサービスの規模や流行の度合いを評価するのが難しくなります。
クライアント側からのアクセス情報を使ったアレクサの情報であれば、ミクシィのようなクローズドなサービスと、ログインが不要な一般のネットサービスを、アクセス数という同じ土俵で比較することができます。
まず、トラフィック検索のページへ行きます。アレクサのトップページ( http://alexa.com/ )の最上部にある"[Search] [Traffic Rankings] [Directory]"の真ん中、[Traffic Rankings]をクリックするか、直接トラフィック検索のURL( http://www.alexa.com/site/ds/top_500 )をブラウザに入力してください。
画面上部中央のテキストボックスに"mixi.jp"とドメイン名を入力し、"Get Traffic Detail"(トラフィックの詳細を取得)ボタンをクリックしてください。
アレクサの情報は、大きく4つのページに分けて表示されます。ページ上部右側にある"EXPLORE THIS SITE"(このサイトを探検しよう)以下にある4つのリンクがそれで、それぞれ、
- Overview(概要)
- Traffic Details(トラフィックの詳細)
- Related Links(関連リンク)
- Sites Linking in(リンクしているサイト)
ドメインを入力してボタンを押したときに出てくるのは、"Traffic Details"ページです。
今回は、この"Traffic Details"ページから、そのドメインのアクセスを表す代表的な情報を二つだけ説明します。
一つは、上部左側、検索したドメインのウェブページの画像が出ているすぐ右に出ている"Traffic Rank"(トラフィック順位)です。ここに出ている数値、mixi.jpの場合筆者が見た時点で「53」ですが、これは、「世界中のウェブサイトの中で、mixi.jpのドメインへのアクセス数が53番目に多い」という意味です。
この数値を見ることで、世界のウェブサイトの中でのそのドメインの人気度がわかります。
もう一つは、ページの中央下にあるグラフです。グラフも3種類ありますが、まず表示されている"Reach"(到達)のグラフは、Daily Reach、毎日どれぐらいの人にそのサイト(ドメイン)はアクセスされているのか、という情報を、過去の一定期間にわたってグラフにしたものです。
このグラフを見ると、そのドメインの人気度が最近どのように変わってきたのかを知ることができます。
それぞれのページに表示されるデータの詳細な読みかたについては、次回以降で説明します。まずは、みなさん自身のウェブサイトのドメインや気になるサイトのドメインを入力し、それらのトラフィック順位を比較してみてください。