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迷惑な電話営業の相手をして、何分も無駄にさせる自動ロボット

ジョリー・ロジャーさん(Jolly Roger)が開発した音声応答ボットは、掛かってきた電話営業の人に対して適当な返事をしつづけることで、迷惑な電話営業者(テレマーケター)の時間を無駄に使わせる、というサービスです。

家やケータイに掛かってくる電話営業にうんざりしてませんか? 残念ながら、彼らがいなくなることは決してありません。「そのリストから削除しろ」とか「その人はここにはいません」とか「決しておまえの製品は買わない」とか言ったところでなくならないんです。

Tired of telemarketers calling your landline or mobile? I’m sorry to say, they will never, ever stop. And no amount of screaming “take me off your list”, or “he doesn’t live here”, or “I will never buy your product” will make these calls go away.

しかし、このJolly Roger Telephoneを使うと、フレンドリーで気のいい、忍耐強いロボットが代わりに電話を引き継ぎ、相手にそれと気づかせないままに数分間の会話を持たせることができるというのです。

サイトはにいくつも実際の利用音声が掲載されています。(1), (2), (3)

ここで機械による自動応答だ、と言われている会話は、驚くほど自然です。

「はい?」
「これ本物の人が喋ってるの?」 (とbotが喋っている!)
「あなた誰? どういう用件?」
「なるほど」
「ちょっとまって… いろいろ忙しくてね… オーケー。」
「であなたどこの誰だっけ?」
「はい」
「ちょっとまってくれるかい? … (ちょっと小声で)『ああハニー。ごめん今電話中なんだ。いつ終わるかはわからない…』 ごめんごめん」
「ハハン」
「ああ、ちょっとまって。腕に蜂が止まってる。いいから君はしゃべり続けてくれ。聞いてるから」
「ちょっと情報量が多すぎるみたいだな。最初からもう一回説明してくれる?」

こういう反応を、相手が喋り終わったところや、時には相手を遮る形で返すことで、延々と会話を引っ張り続けます。

オーストラリアのテレビ番組 Studio 10 の取材を受けた動画では、番組が電話営業の人になりきってこのボットと会話のデモをしています。(動画後半3:10ぐらいから)

営業役の人がどんどん消耗していくのが感じられるでしょうか。営業の話終わりからボットが返事をするまでの時間が不自然にちょっと長いこともありますが、まあそういう人もいるのかな、ぐらいの自然さに収まっていますね。

使い方

マニュアルによれば、会議電話の仕組みを使っているようです。

「迷惑電話キタ!」と思ったら、「ああ、ジョーンズさんですね、ちょっと待ってください…」など相手を待たせつつ、すぐにこのサービスの番号に掛けて、「電話の追加」とか「会議電話」とか、スマートフォンにある3者会話のモードにします。(固定電話の場合は、自分の電話会社の3者通話のサービスに入っている必要があります)

最初の接続にはどうしても時間が掛かってしまうので、営業が諦めないように多少つなぎを入れる必要があるようです。つながったら、自分は抜けるか、自分の方のノイズがbotの誤動作を引き起こさないようにミュートしてスピーカーで営業とボットの無益な会話を楽しむこともできます。

営業者側のオフィスがうるさい場合には、音声認識がうまく動かないこともあるようですが、そのあたりは「釣り」をするような感覚で、うまくはまる営業を待ちましょう、とのこと(なんか目的が違ってきている)

現在提供されている番号は、アメリカとカナダ向け、そして最近イギリスが追加されたそうで、残念ながら日本からは試せません。

Kickstarter

この実験サービスを本サービスとして運用するために、Kickstarter での募金が3月1日期限で開催されています。「電話営業を邪魔しようという自分がこういうお願いをするのは、自分がテレマーケターみたいなものになったような気がしていやなんだけどお金ください」と書かれています。

anti-telemarketers-bot-kickstarter

テレマーケター側では、最近はリストから同時に数千件に電話を掛けて、出てきた相手が人間だと判定したら営業者につなげるとか、機械化・自動化が進んでいるそうです。より効率的に迷惑をかけようとしてきているわけですね。

そんな実情であれば、迷惑電話に困った消費者が同じ自動化で反撃するのもいたしかたないんですかね。もしこんなツールが広く普及したら、電話によるランダムな営業がすごく非効率になってすたれる可能性もあるでしょう。その時にはまた何か別の迷惑な営業手法が編み出されるのかもしれませんけど。

また、「営業電話しないでください(Do-not-call)リスト」に登録していてもおかまいなしの業者や、発信者番号(caller ID)を偽造して掛けてくる業者もいるそうで、彼のbotがデモで相手しているのは、主にこういった行儀の悪い営業業者だということです。このアンダーソンさんも当然リストに登録していますし、さらにプッシュボタンを押して人間かどうかを判定したり、ホワイトリストと照合して電話を取るかどうか決めたりと、いろいろな対策をしているようなのです、それでも掛かってくる時点でかなり怪しいってのもあるでしょうね。

via Hacker News

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“Q”と”Z”がパスワードに使えない! 格安航空会社ジェットブルーの謎

HackerNewsで質問され、話題になっていたトピック

格安チケットで有名なアメリカのJetBlue のサイトのヘルプページで、「パスワードに使えない文字」というリストが載っています。他にもいろいろ突っ込みたい制限はありますが、

jetblue-password-restrictions

一番わからないのが「QとZは使えません」という制限。これはなんでだろう? という疑問への回答が、レガシーなシステムを引きずったシステムのたいへんさを明らかにしています。

飛行機やホテルの予約システムSabreの制限だろう」というコメントはすぐにいくつも出ていて、どうやらそれは正しいようなのですが、ではどうしてSabreのパスワードにQとZが使えないのか? 答えは昔の電話にあります。

(photo credit: denisgiles)
(photo credit: denisgiles)
(photo credit: mrbill)
(photo credit: mrbill)

英語圏での電話機は、数字ごとにアルファベットが割り当てられていて、英単語を使って電話番号を覚えたりできるようになっていました。

たとえば、アメリカの無料ダイヤルの1-800で始まる”1-800-PAINTER”という文字がついた数字をダイヤル/タッチしていくと、実際には 1-800-724-6837 に掛かる、というものです。日本では数字の語呂合わせで電話番号を覚えてもらう仕組みができましたが、英語圏では数字ごとにアルファベットを割り当てていたのですね。

# 昔の話かと思いましたが、手元のAndroidでも電話のモードにすると数字の横にアルファベットが表示されますね。こちらは、QやZも4文字目に割り振った国際式のようです。

このアルファベットの割り当てで、(アメリカ式の場合は)QとZはどこにも割り当てられなかった、というのが、JetBlue航空のパスワードでQとZが使えない遠因のようです。0から9までの10個の文字に3個ずつアルファベットを割り当てれば、30個となり、26個しかないアルファベットの全部を使えそうですが、0はオペレーター、1は市外局番用なので、そこにアルファベットを割り当ててしまうと、局番以下で英単語を作る時に使いたい文字が使えなくなることから、0と1以外の8個の数字に3個ずつ→24個、という割り当てとなったそうです。

Sabre での予約などを、電話でアルファベットを伝えることでも行っていたことから、電話で入力できない(電話上に割り振られていない)QやZはパスワードとすることもできなかった、というのが真相のようです。

Sabreシステムの開発開始は1957年、ローンチが1960年ということで、当時の環境から考えられたQとZが使えないという制約が、50年以上たった今のウェブシステムのパスワードの制限にまで続いている、ということなんですね。

だからといって、今までこの制限や他の時代遅れな制限を取り除くチャンスが無かったとは思えないですけど。よく使うパスワードにqやz普通に入ってる人も多いでしょうし。まあ一度動いてしまったシステムの仕様を変えるのがいかにたいへんか、という話の一つなのかもしれません。

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飛行機発明前の紙飛行機の呼び方

こんなツイートがRTで流れてきました。「飛行機が発明される前、紙飛行機は何と呼ばれていたのでしょう?」

考えたこともなかったですが、これ面白い疑問ですね。飛行機がなければ紙飛行機と呼ぶはずもないので、何かしら名前があったはず。

英語でいろいろ検索したのですが、なんとか見つけたのは、比較的質が良いといわれている英語のQアンドAサービスQuora。

# Quoraについては個人ブログの方でこんなことを書いたことがあります。よい回答も多いけども結局「質問分野による」というのが僕の結論 → クオラ(quora.com)ってすごいの? 世界を席捲するの? なんで日本ではスイカは野菜なの? | 秋元

Paper Plane: When were paper planes invented? (紙飛行機はいつ発明されましたか?) – Quora

David Coleさんが回答に辿り着くまでの経緯を詳しく説明してくれています。

Coleさんはまず、ギネス認定紙飛行機飛ばし世界一のKen Blackbumさんのサイトにある、紙飛行機の歴史というページを発見。古代中国の紙凧や18世紀後半フランスの紙気球は(「紙」で「飛ぶ」けれど)違うとして、1930年代に航空機の設計者が紙飛行機をプロトタイピングに使っていたという記録が、この世界チャンピオンの見つけた最も古い「紙飛行機」の記録だということです。

ライト兄弟の1903年の初飛行よりも前の文献を探そうとすると、「飛行機」「航空機」といった単語自体が存在しないことから、そもそも何を探せばわからず困った、ということですが、それでも、19世紀の複数の文献から、それらしい単語”paper dart”を発見します。

たとえば、1803年に発行されたイギリスのエッセイ The Looker-on では、「かつらにたくさんpaper dartを入れて運び、ハリネズミの背中のようになっていた」という一文。

しかし、この”paper dart”が本当に紙飛行機のことを指しているのか、dart(ダーツ)のような形の別のものを指しているのか? さらに探した結果見つけたのは、こちらの図が入った、1896年に発行された、スポーツと時間つぶしの方法を集めた本の一ページ。

paper-dart-1896

確かに、紙飛行機の折り方に、”paper dart”という説明がついています。

ということで、紙を折って飛ばす紙飛行機は、飛行機の発明以前の19世紀から存在し、それは「紙ダーツ」と呼ばれていた、ということがわかりました。

ところで、このあたりの文献、すべてGoogle Booksで探されてますね。Google Booksはすごいですね。たくさんの古い資料を読み取ってデジタル化/テキスト化し、どこからでも検索できるようにしてくれたことで、こういった調べものは飛躍的に楽になったのではと思います。

電話以前の糸電話

もう一つの、

「電話が発明される前の糸電話の呼称も気になります。」

こっちの方も気になったので、多少英語で検索してみたのですが、僕のスキルでは見つかりませんでした。

それでは、と、上と同じQuoraでも質問してみたのですが、まったく答えが集まりません。ポイント使って識者を指名することはできるのですが、候補で出てくる「電話の専門家」とかに聞いても答えがくる気がしないですね。